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「初歩的な疑問」の受け取り方

安倍前総理が「私なら1月解散」みたいなことを言ったとか。当選同期の仲間内の会食におけるオフレコ発言ですが、長島議員の政治資金パーティーでも同趣旨の発言をされたようです。

菅総理の考えは知りませんが、現時点で近い将来の解散を匂わせる発言はしていません。二階氏も早期解散に否定的。この状況で前総理という微妙な立場にいる、しかも任期途中で辞任した人が軽々しく触れていい話題ではないと思います。

そもそも不信任案決議以外の理由で内閣が衆議院を解散できるという憲法解釈(いわゆる「7条解散」)に私は疑問を抱いています。より社会の実情やニーズに沿った形で法を運用していくための知恵として解釈や判例が必要なのは確か。でも日本国憲法7条を読んでみてください。内閣や首相に衆議院の解散権を認めるとは書かれていません。天皇の国事行為に関する記載のみ。

7条を根拠に内閣に衆議院解散権を認めるロジックはこうです。

①「天皇は内閣の助言と承認によって国事行為を行う」と7条に明記されている→②同条に記されている国事行為の中に「衆議院を解散すること」が含まれている→③でも天皇は国政に関する権能を持たないし、3条に「天皇の国事行為は全て内閣の助言と承認を必要とする」とある→④ならば解散を決められるのは内閣で、天皇はそれを外部へ公示するだけ。

不自然な流れではありません。でもこの条文を憲法に入れた際の意図はどうだったのか。9条と同じく趣旨と現状が著しく乖離していると感じます。内閣の裁量による「解散権」を認めることは、権力の暴走から国民の権利を守るという憲法の目的にそぐわないのでは、と。

私も一応法学部を出た人間です。でも法律を専門的に学んだ人にこういう話をすると、決まって「そんな初歩的な」という顔をされます。初めて見た人が「普通に読んだら、そうは受け取れないよね」と首を捻る態度を無知不勉強と見下さず、そこに改良の余地が潜んでいると受け取って欲しい。

村上春樹は完成させた長編小説をまず奥さんに読んでもらうそうです。そして「これはどういうこと?」と指摘された箇所を必ず直すとか。編集者という専門家の前に一読者である奥さんから感想をもらう。もちろん「信用できる一読者」だからこそですが、この聴く耳を持つ姿勢が大切だと思うのです。





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