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生産性を上げるダイバーシティ
多様性の推進は多くの企業が経営課題として取り組まれていますが、もし「何でダイバーシティって必要なんですか?」と聞かれたら「いや、多様な意見が必要ですし…」と明確に答えられないと感じていた中、さまざまなヒントをくれる本でした。
組織から多様性が失われるといかに破滅的なリスクにつながるか、逆にダイバーシティはいかにイノベーションを爆発的に高めるかが語られていますが、「へー、そうなんだ!」と思ったエピソードを1点ご紹介したいと思います。
ある労働経済学者が5万人の従業員の「生産性」「離職率」の要因を調査していた時、最初は「転職回数の多い従業員ほど早く離職する」と考えていたそうです。
転職活動でも、履歴書を見て回数が多かったり、期間が短いと必ず面接で聞かれますよね。
しかし、前年までの転職回数が5回であろうと1回であろうと、離職率との相関性は見られなかったといいます。
明らかになった因果関係とは、「Firefox」「Chrome」を使ってオンラインフォームに入力した人は、「Safari」「Internet Explorer」を使った人より勤続期間が15%多く、欠勤日数が19%少なく、生産性・売上・顧客満足度のすべてが圧倒的に高いということ。
これはFirefoxとChromeが優れたブラウザというより、ポイントはSafariとIEがパソコンの「初期設定」として入っていること。前者はどのブラウザがいいか自分で探して選び、ダウンロードしてインストールしないと使えません。(ちなみに2010年の調査です)
そこに見られる心理傾向のちがいは、「世界は変えられるものだと考え、もっと良い方法はないか常に探し、あれば実践する」というマインドであり、このマインドを持つためには「ダイバーシティ」が必要になる。
個人が「初期設定」に疑問を呈する力、組織がその疑問を聞き入れる風土・カルチャーが、生産性を高めるには大事だと言えます。