ベランダが補修で使えず、めだかの水槽を部屋の窓辺に招いている。水槽といっても、古道具屋で求めた工業用のガラス瓶。厚めのガラスを通った光がリビングの床に一瞬の虹をつくる。 水温が下がったためだろう。めだかたちは夏の勢いで泳ぎ回らなくなった。その場に留まるため、一秒に二往復くらいの速さで胸鰭をぱたぱたと前後に動かしている。比して光に透ける尾鰭は、ちいさな羽衣のようにゆっくりとゆれる。 秋の終わり。 さまざまが過ぎり、めだかの胸鰭ほどの振動で心がざわつく。その心に一瞬の虹をいか
たくさんの声、こえ、こえ? がしていると そっとじっとだまるのです いいたいかきたい ぼくがわたしがは みぞおちをへんにざわつかせ そこにいつもはしずかに 凪いである水面が かきまぜられ くるしかったりするのです 月のうらっかわほどのところまで にげて にがして あたりがしんとしずかになったころ もどりましょうか ぼくがわたしがの そんなざわざわから とおいとおい森の中に ぽつんとうちすてられている 椅子のうえに ちょこんともどって 森に落ちた小枝など削ってこしらえ
時がゆがむ どこからを吹く風か どれほどを降りしきる雨か 身を刺すことばか ただ現実、であるというそのことか もどれもどれ うばわれてしまわぬ速さで こわされてしまわぬやわらかさで くるしいを溜める瓶など どんがらひっくり返し 消えるは儚き夢 宇宙はそのどこまでも ならば わたしというわたしを わたしというかたちなき たしかなありようへと 一刻を争って もどしゆけ
雲へと放った わたしのカケラたち、たち、たち 戻しくる雨よ わたしのつくり方を ふたたび教えてはくれまいか もうすこしやはらかで さらさらで 見えずともあるのだとわかる そのかたちへと さすれば放ち、放ち、放ち また、放ち、放ち やがての霧散へと 夢叶う #
夜が霞んでゆく きょうのすべては わたしから距離があって ほんとうをほんとうだと 呑み込めずに過ぎた 眠れないままという bouryokuに似た keibatsuのような 夜の静寂よ わたしがとけてゆく そのことを ゆるさずとも やすらかなる夜の王に どうかこのわたしを さしだしてください
無神論 月より砂を持ち帰る ことのはの泉 月影躙る風 セイレンの岩礁砕き月あかり 崩壊のお城に刺した青い月 置き去りの杏の宿す種。血。核。 月面に刻まれた文字掌に写す 白桃の天より降りそそぐ粛夜 シャーマンの佇つ月桃の木陰 嘿 月虹下ころびまろびてヒトと霊止 結界に三日月並べ波や波 月桃の花かげ揺れて神の声 柘榴石握って月の森に棲む 霊力を恃む綺羅綺羅桃の白 白桃の鱗粉蝶の鱗粉 火 月琴のその音ことのは天へ向く 立神へ真っ直ぐ走る月の道 アカシ
滝壺や山頭火忌の降り月 千年の落つ瀑布なり桃青忌 昇天の山頭火忌の空の青 宿命や山頭火忌の雲結ぶ 輪廻して滝の上なる星月夜 まり #俳句 #月音花声
永遠の内へ外へと萩こぼる 永遠の外から蟋蟀のりりり 一瞬を永遠として白き虹 狂いなど入るクラインの壺木っ端 永遠の未完のずるく美しき #川柳 #Senryu #月音花声
崖の淵に突っ佇って 覗き込む 未来などあるのかと 問うでもなく問うて 問うからあやうく遠くなる その視線の先 崖の肌に白い菫が摑まっている ないをないとして あるものはささやかすぎて 声などあげること叶わず だれに見られることなく それを嘆くでなく しずかにそっと 菫の白に吹き上げたのは 菫を生かそうとする 未来からのその風 #詩 #月音花声
つつつつつ 信号が歌う 星は届かず 月も去った そのあとの世界で ほしいものはすべて なくした つつつつつ 消滅のここからが ほんたうを詰め込んでゆく その時間 #詩 #月音花声
げんじつがげんじつとして 歩いている ごつごついがいがわしわしと 真ん中を歩いている ついていけないついていかない 一歩はなれる 二歩とびのく 三歩こわして 時計を取り戻す 時間の魔法が戻り 大丈夫のベールとなって わたしを包む ほんとうとほんとうと ほんとうとほんとう それと それらとだけ #詩 #月音花声
noteの使い方がいまだよくわからないため、会場の写真は別の記事にあげてしまっています。 尼信会館で展示をしませんか?とご推挙いただいてから、身に余る広さの会場を埋めるべく試行錯誤、なんとか会場を埋めることができ、10/5、無事に開幕いたしました。 「会場の中の一句をカードにお書きします」と受付に書いていましたらはじめてお会いする方々から もう一度生まれるための海を抱く 銅鏡の獣引き連れわが戦 闇ならば裂けよ雨なら降りしきれ 生きて去るさわぐことでもない櫻 源流
「genjitsu」に時限爆弾仕掛け秋 わたくしを数から外し曼珠沙華 片隅のそこだけ光る湖に棲む 潮風に菫張り付く崖の肌 まっ白な日々にしてゆくすてにゆく すてられぬ愚かさ虹はまた消えて 遠吠えを聴きつつ三日月は眠る #川柳 #Senryu #月音花声
バタフライピーの茶葉をいただいたので 窓辺で水出しをはじめました。 ゆっくりと色をましてゆく ちいさな海がそこにあります。 きょうはこの海に 支えられよう。 結んで結んでこぼれぬように運ぶ海 #川柳 #Senryu #月音花声 #バタフライピー #海
いつも迷宮なのだ ただ足を前にすすめようと する。と足踏みとなって 沈んでゆく どこなのだ こことそことあそこと みなが 混沌と溢れ続ける 目指すところと 目指してはならない先と 目を閉じ護る核心と 目にして言祝ぐ彼方の天体らと そのすべてを孕んだ 空が 祝福の迷宮で わたしを転がし続けている #詩 #ポエム #月音花声