
虹を留める
ベランダが補修で使えず、めだかの水槽を部屋の窓辺に招いている。水槽といっても、古道具屋で求めた工業用のガラス瓶。厚めのガラスを通った光がリビングの床に一瞬の虹をつくる。

水温が下がったためだろう。めだかたちは夏の勢いで泳ぎ回らなくなった。その場に留まるため、一秒に二往復くらいの速さで胸鰭をぱたぱたと前後に動かしている。比して光に透ける尾鰭は、ちいさな羽衣のようにゆっくりとゆれる。
秋の終わり。
さまざまが過ぎり、めだかの胸鰭ほどの振動で心がざわつく。その心に一瞬の虹をいかに留めおくのか。
しずかなめだかたちとともに
きょうがはじまった。