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本の感想『発達性トラウマ』みきいちたろう/著

発達性トラウマ障害という言葉は、トラウマ治療で名高いベッセル・ヴァン・デア・コーク氏が提唱した概念なのだそうです。

表紙に書かれている通り、内容は発達障害とは関係なく、ストレスとトラウマを結びつけ、ストレス障害として扱うというものでした。

上記のようなトラウマは、私達がトラウマという言葉を聞いて、まず思い浮かべるような短期的な激しい出来事と区別するようです。
成長していく上で受けた日常的な、単一ではない複数がからみあった、地味でジワジワと与えられる、長期的ダメージが発達性トラウマと名付けられていました。
トラウマとストレスの研究は心理学全体の歴史から見るとまだ浅いのだそうです。

実は第三章から読み始めたのですが、第三章の日常的なストレス要因を抱えて出てくる身体的、心理的問題、症状1〜23がわかりやすく書かれていて、当てはまる心身障害に悩んでいる方なら全ての項目に頷くのではないかと思いました。

本来生物の持っているストレス対処は短期のストレスに対するものであるということ。
長期間のストレスは一つ一つが些細なものであっても長く続くことで疲弊してしまうということ。
人は一貫性や秩序から長い期間外れていることでも疲弊してしまうと書かれていました。
加えて、持続的な長期のストレスにも、短期の対処を繰り返してしまう以外知らないから、大変非効率になって疲弊してしまうという話に納得しました。

もちろんこれぞという秘策が書いてあるわけではなく、多くの人が書いているのと同じ様に回復は日常の積み重ねであり、人としての基本を取り戻すという内容でしたが、多くの本が問題をツラツラと書き連ねることで終わる中、どう改善していくか?に一つの章をあてて回復への基本を教えてくれたことが参考になりました。

読んでいて、ストレスの消失を目指すことが逆にストレスに脆弱になるのかなという気がしてきました。
また、人間関係に幻想を抱きすぎ過大評価していたのかなという気もしてきました。
家族との再建などは、偉大なファンタジーのように、フィクションの映画やテレビにも度々登場しているため毒されている気もします。
実際に実行できている人がどれだけいるのでしょうか?

サクサクッと読むのではなくじっくりと考えながら読む良著と言えるのではないかなと思いました。

最後に一番印象に残った部分を抜粋します。
『トラウマを負った人は自分をうまく”閉じる“ことができないままに、“開こう“として敗北を繰り返しています。』
家の鍵をかけて安心して外出しよう、という考え方が参考になりました。

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