ヤフー卒業から3カ月、本間浩輔が最近ちょっと気になっていること
こんにちは、bizlogueです。
bizlogueメンバーであり『ヤフーの1on1』、『1on1ミーティング』の著者でもある本間浩輔が長らく勤めてきたヤフーを卒業してから3カ月余り。外部の会社の人たちと話をする機会が増えてきたことで最近、特に思っていることの一つが「1on1の前提」に関して。
ヤフーでは「社員の才能と情熱を解き放つ」をキーワードに、社員の成長を前提に1on1を実施してきました。しかし、多様性の時代を迎えた今、どうやらこの前提は必ずしも世の中の社員全てに当てはまるものではないのかも……?
そこで今回は「1on1の前提」に関して、同じくbizlogueメンバーで『1on1ミーテイング』の共著者でもある吉澤幸太と一緒に考えてみました。
「全ての社員は成長したい」という前提から1on1は始まったが……
吉澤 本間さんはとうとうと言いますか、今年の3月でヤフーを卒業ということになりました。晴れて次のステージに行っていますが、最近はどうですか? ヤフー卒業後、何か思うところなどはありますか。
本間 そうですね(笑)。一応の区切りがつきましたので、外部の色々な方たちと話をする時間も増え、場合によっては「ちょっとウチの会社で話をしてよ」というご依頼をいただくこともあるのですが、そこで一つ思ったことがありました。それは1on1の大前提なんですけど……
吉澤 1on1の大前提?
本間 ええ。僕たちはヤフーで「社員の才能と情熱を解き放つ」というものをキーワードにし、そのための一つの方法として、吉澤さんや仲間たちみんなと一緒に1on1をやってきましたよね。
吉澤 はい、その通りです。
本間 そのベースにはやはり「すべての社員は成長したいのである」という、この前提から始まったと思うんですよ。そして、これはこれで間違いではないことだと思います。でも、世の中には一時的でさえ「成長なんかしたくねぇよ」と……
吉澤 あぁ、「僕、成長とかいいですから」みたいな?
本間 ええ、「お金をもらえればいいんです」とか。場合によっては若干ズルなことをしてでもお金をもらって、休みを取って、最後は辞めて次に行けばいいと思っている人もいると思います。まあ、そこまで極端じゃないにしても、人の考え方には何か色々なグラデーションみたいな差があると思うんですね。
吉澤 そうですね、白黒どっちかじゃないみたいなものがあるかもしれないですね。
本間 最近では退職代行も流行っていますし、それ自体の良い・悪いに関して僕自身は分からないですが、色々な考えを持っている人が増えているわけです。そんな時代に僕たちは「全ての社員は常に成長したいんだ」という、もしかすると“やりがい搾取”に近いような感覚だったのかもと今振り返ると思ってしまうんです。
吉澤 大前提がそれだとすると、そうなるかもしれないですよねぇ。
本間 そして、色々な場所でお話をさせていただく中で、「あれ? 何か話が合わないぞ」と思う時の一つの理由は、この大前提がちょっと違うのかもしれない。
吉澤 なるほど……
「成長」がピンと来なくても、やっぱりコミュニケーションは必要
本間 でもね、1on1には他の効果もあるわけでして、例えば上司と部下の信頼。まあ、もしかしたら信頼を感じてもらうこと自体が難しいかもしれません。でも、人間は一人では生きていけないという言葉もよく聞きますよね。だから、何か「成長」を前提としなくても、一緒に働くんだという「組織と人との関係」とか「管理職と人との関係」というものがあってもいいのではないかなと思っています。
吉澤 ええ、それはその通りだと思います。
本間 これまでヤフーが続けてきたのは“マッチョ”と言いますかね……(笑)
吉澤 まあ、“マッチョ”でしたよね。人材開発企業みたいな、とにかく伸びていくことが確かに前提でした。
本間 あの当時は社員数が4500とか5000人ぐらいでしたし、まあ、僕ら中途組はいい加減なヤツがたくさんいましたけど、新卒を含めて本当に選りすぐりの「成長したい」という人たちが入って来て、それを前提に見ていましたよね。でも、やっぱりそうじゃない組織もたくさんある。ただ、何度も言いますけど、「成長したい」という言葉には当てはまらなかったり、「成長」という言葉自体にピンと来なくても、やっぱり仕事をちょっと頑張りたいとか、そこで仕事をするということに意味付けしたい人もいると思います。
吉澤 そう。
本間 また、何か違う意味で組織に属されている人もたくさんいると思います。そして、組織が大きくなればなるほど、やっぱり管理職が必要になってくる。とすると、管理職とフォロワーとの関係性というものはやっぱり重要で、“信頼”とまではいかなくても“信用”できるような管理職と仲間、管理職と部下との関係性が必要になり、そしてそこにはコミュニケーションとか1on1というものが必要なのではないかと、そんな思いに至っています。
「誰かと少し話が通じ合ったらいいかな」くらいの感覚で
吉澤 「成長」と言っても、何か思い浮かべるものが人によって少しずつ違うのかもしれないですよね。さっき本間さんがグラデーションと言いましたが、本当にグングンと育っていくマッチョ的なイメージで言われちゃうと「いやいや、ちょっと……」みたいに引かれてしまう感じはあります。でも、まあ、今の話にあった信頼関係も一人の上司かもしれないし、もしかしたらプロジェクトのチームメイトかもしれないけれど、その人たちとの関係性自体が良くなっていくというのはある意味「育っていく」話だと思うんですよね。ですから、何らかの変化を起こすという意味では、やっぱり人が近づいてナンボだと思いますし、あんまりマッチョに考えなくてもいいのかな。それでも1on1はちゃんと機能するんじゃないのかなと思いますけどね。
本間 「ちゃんとコミュニケーションしていこうぜ、お互いに全然違う人たちが一緒に仕事しているわけだから」というね。1on1は何かこれくらいのスタートでもいいんじゃないかなと、最近考えるようになりました。
吉澤 そうですね。あまり気負わずにね、「誰かと少し話が通じ合ったらいいかな」くらいでいいのかもしれないですね。そんな感じで1on1を始めていただいて、ますます進めていいただけるといいかなと思います。
本間 はい。
吉澤 今回の話で少し肩の力が抜けた方もいらっしゃるんじゃないかと期待したいですね。
本間 そうですね。また、この1on1の前提に関してご意見いただければと思います。
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■ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法
(著・本間浩輔)
■1on1ミーティング―――「対話の質」が組織の強さを決める
(著・本間浩輔、吉澤幸太)
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