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最新の人事トレンドワード『BANI』って何?(後編)/「ヤフーの1on1」本間浩輔が解説します

こんにちは、bizlogueです。

2024年の人事トレンドワードとして注目を集めている『BANI(バニ)』前回は「B」「A」の頭文字が意味する言葉をbizlogueメンバーであり『ヤフーの1on1』『1on1ミーティング』の著者でもある本間浩輔が解説しました。

後編の今回は「N」「I」について、引き続き本間が解説します。「BANI」から見えてくる現在の世の中の動き、そして会社や組織が対処していくために必要なこととは?

前編と合わせて参考にしていただければと思います。


これからは先が読めない世の中に

吉澤 前回は2024年の人事トレンドワードとして注目を集めている『BANI(バニ)』について、「B」「A」に関する解説を本間さんにしていただきました。今回は「N」と「I」を解説していただきたいなと思います。「N」はNon-Linearで非線形、「I」はIncomprehensibleで不可解という意味ですが、これはどういうことなんでしょうか?

本間 これまでは『VUCA(ヴーカ)ワールド』という言葉で世の中の変動が大きいと言われていたわけですが、線形というのは先が読めるわけですよね。

吉澤 そうですね。線形だと上がるなら上がる、下がるなら下がるで分かりやすいですよね。

本間 そう、その線形に合わせて行けばいいわけですからね。もちろん、それでも難しいですよ。でも、むちゃくちゃ難しいのだけど、右肩上がりだろうと右肩下がりだろうとそれに合わせて行けばいい。ところが、線形ではない非線形の場合だと経営はより難しくなりますよね。

吉澤 ガーン!と上がったり、下がったり……これに対処するにはどうしたらいいんだ、となりますよね。

本間 だって、これは儲かるぞと思って美味しいパンを一生懸命作ったけど、テレビか何かで急に「パン食は危ない!」なんて言われたら需要がガクンと減ったりするわけですよね。パンをたくさん作るために工場のラインを作って、小麦を買う長期契約を結んで、人をたくさん雇ったりしたのに……

吉澤 急に「いらない!」って言われた日には……

本間 ええ、そうなると計画が立たない。だから経営としてはとても大変ですし、もう一つあるのが「人はもっと不安」です。

吉澤 そうか。

本間 リスキリングのスピードがどんどん速くなっているとも言えますし、僕たちがよく使ってきた言葉でもあるラーニングアジリティが求められるということでもありますが、でも、同時に人々はとても不安になる。前回解説したBANIの「A」、Anxious=人々が不安になることと等しいですよね。

それでこれが会社の中の話になると、やっぱり上長が部下の思っているその不安を聞いてあげなければいけないですし、部下も上長に対して質問ができるような信頼関係やパイプが必要になってきますよね。

吉澤 常々状況が変わるところで声を掛け合いながらなんとかしのいでいくと言いますか、何かスポーツをやっているみたいですよ(苦笑)。

複雑化するスピードに心がついていけない

本間 リスキリングもそうですよね。自分はこれがいいと思っても、それはあなたに向いていないよ、Aさんだったらこっちの方がいいよとか。たとえ線形ではなくても世の中はこっちの方向に向かっていくのだから、というね。これはやっぱり自分のことをよく知っている上長とか担当との関係図が重要というわけで、その意味でも1on1は重要になってくるなと思っているわけです。

吉澤 そうですね。あらゆる意味での情報ということなのかもしれないですが、世の中がどうなっているのかもそうですし、相手がどうなっているのか、自分がどういうふうに映っているのか。それらを常に見ていかないと、もう気がついたら「えー!?」というところに行ってしまうから、それらの情報に常に触れているという意味では、1on1は会社経営の中では必要なのだなと思いますね。

本間 それはVUCAで言っていた「複雑性」を超えていることになっていると思うんです。

吉澤 複雑性をもっと超えているんですね。

本間 これは前回も話したことですが、僕たちの論点としては「経営やビジネスがどんどん複雑になっていくスピードに人々の心はついていけない」ということです。

吉澤 そうか、心がスピードについていけない……

本間 だから、ますますストレスはかかるし、前回メンタル疾患になる人の話をしましたが、多くの人は表向きは分からないけど心の中ではストレスフルな状況になっている。たとえばプライベートでもちょっとイライラしたり、眠れなくなる状況というのはこれから起きてくると思うんです。そうすると会社と社員との良い関係、上長と部下との関係性、コミュニケーションというのがすごく重要になってくると思うんです。もちろん、すべてを1on1で解決しようとは言いませんが……。

世の中が「分からない」からこそ「話す」

吉澤 では、最後の「I」。不可解という意味のIncomprehensibleの頭文字ですが、これの解説をお願いしてもいいですか?

本間 もうこれは世の中が理解不可能ということですよ(笑)。

吉澤 それを言っちゃうと身も蓋もないですよ(笑)。

本間 だって、分からないですもんね。だからこそ話さなきゃいけないですし、これは僕、部下側の人にもある種の勇気が必要だと思っています。

吉澤 部下側の勇気?

本間 やっぱり自分が不安だと思っていることを上長に話さなければいけない。

吉澤 あぁ、そういうことですね。

本間 すべて自己解決すればいいという問題でもないですよね。そして、ある意味、自分の弱みを言わなければいけない。これまでは自分の弱みを上長に言ったら悪い評価を付けられるんじゃないかとか、そういうことがあったかもしれません。だけど、そういうことを超えて今の難しい世界を生き抜いていくためには……もちろん、仕事より大切なことはたくさんあります。でも、人生の多くを費やす仕事や会社の中で無駄なストレスを感じてほしくないなと思うので、キーワードであるBANIから1on1関連の大切さを感じ取っていただければと思っています。

吉澤 なるほど。BANIで検索すればいろいろなことが出てくると思いますので、興味を持たれた方には一度見ていただきたいなと思いますね。そして1on1に限らず普段の職場でどういうふうにやっていこうかというヒントになれば幸いです。

本間 これは全く宣伝ではないのですが、「パーソル総合研究所 BANI」で検索していただければ、ちゃんとアカデミックに、エビデンスをもとに研究員たちが議論して記事を書いています。広告も入っておりませんので(笑)、ぜひ正しい参考文献として見ていただければと思います。

吉澤 今後BANIに関してまたいろいろと議論できればと思っています。ありがとうございました。

本間 ありがとうございました。


bizlogueではYouTubeでも情報発信を行なっています。

■ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法
(著・本間浩輔)

■1on1ミーティング―――「対話の質」が組織の強さを決める
(著・本間浩輔、吉澤幸太)

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