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最新の人事トレンドワード『BANI』って何?(前編)/「ヤフーの1on1」本間浩輔が解説します

こんにちは、bizlogueです。

今回は2024年の人事トレンドワードとして注目を集めている『BANI』について、bizlogueのメンバーであり『ヤフーの1on1』『1on1ミーティング』の著者でもある本間浩輔が解説します。

現在の世の中、社会を表す4つの言葉の頭文字をとって『BANI』。では、「B」「A」「N」「I」は何を意味し、今、世界はどのような動きを見せているのでしょうか? そしてそこからつながる企業や人事のあり方とは?


VUCAワールドがBANIに変わる?

吉澤 今回は本間さんから『BANI』について、お話ししていただきます。「B」「A」「N」「I」でBANI(バニ)。最近、キーワードとして出てきたということですが、これはいったい何のことなんでしょうか?

本間 僕がちょっとお手伝いしているパーソル総合研究所というところが、2024年の人事に関わるトレンドワードとして出しました。6月に発表したのですが、なかなかの反響がありまして、考えれば考えるほど良いテーマだなと思いましたので今回はBANIの話をしたいと思います。

吉澤 はい、お願いします。

本間 BANIという言葉自体はですね、アメリカのシリコンバレーの近くにある未来研究所というところから出てきたものなのですが、まずBANIの前にあった概念として『VUCA(ヴーカ)』というものがありましたよね。

吉澤 VUCA、ありましたね。Vのヴですね(笑)。

本間 ええ(笑)、よく僕たちは世の中が変わってきていることを示すために「VUCAワールド」なんてことを言ったりしてきました。でも、それがBANIに変わるのではないかと言われているんです。

吉澤 要するに「B」「A」「N」「I」の頭文字が表す言葉があるということですね。

本間 はい。それでまず、BANIの「B」はBrittle。「脆弱」という意味があります。

吉澤 「もろい」という意味もあるみたいですね。

本間 「もろい」、そちらの方が分かりやすいかもしれないですね。次に「A」はAnxious。これは「不安」という意味を持っています。そして「N」はNon-Linear。「線形ではない」という意味ですね。

吉澤 非線形ということですね。

本間 最後の「I」はIncomprehensible。「不可解」という意味です。

吉澤 理解不能、理解できないということでしょうか。

世の中はとても便利になったけど、「もろい」

本間 そう。この4つのキーワードの頭文字からBANIとなります。では、この頭文字を一つずつ追いかけていきましょう。まずはBrittle、「もろい」というところから行きましょうか。

吉澤 もろい……これはどういうことでしょうか?

本間 バタフライエフェクトなんてこともよく言いますけど、リーマンショックが起きたときにまさか僕たちの生活まで変わってくるなんて思わなかったじゃないですか。

吉澤 なるほど、そういう方向の話ですか。

本間 ええ。リーマンショックがありつつ、決定的となったのはコロナであり、ロシアのウクライナ侵攻だと思っているんです。

吉澤 はいはい、そうですね。

本間 それらのことが起きたときに、まさかPASMOすら買えなくなるとは思ってもみなかったし、自動車を買うときに半年とか1年も待たなきゃいけなくなるなんて誰も思っていなかったと思います。食料危機やエネルギーの問題が起きるかなというのはありましたが……

吉澤 ええ、食料やエネルギーの問題は思いつきましたよね。

本間 これはどうしてかと言いますと、世界中のネットワークはある意味ではとても複雑で完ぺきだけど、「もろい」。ある一点をポツっと突くと、バラバラっと壊れてしまう。

吉澤 そういう意味での「もろい」なんですね。

本間 僕ね、これを痛感したのは7月半ばのことだったんです。あるアンチウイルスの会社がシステムアップデートをしましたと。そうしたらそれが上手く行かなくて、飛行機が飛ばなくなるんですよ。

吉澤 あ……、例のあの事故ですね。

本間 一般的に僕の聞いた範囲ではマイクロソフトの製品が打撃を受けて、その製品を使って動いているものが軒並みシステム障害になってしまったわけですけど、例えばそうしたシステム自体が落ちてしまったとか、マイクロソフトに不具合があったというわけではなく、マイクロソフトとは全然違う会社――もっと言いますと、マイクロソフトが使っていた一部のシステムのアップデートをミスっただけで世界中の飛行機が飛ばなくなり、移動できなくなる。また、この件とは全く関係のないところですが、日本でもその後に新幹線がストップする事故が起きて大混乱になりましたよね。

吉澤 はい、マイクロソフトの件とは全く別のことでしたが、ありましたね。

本間 便利な世の中ではあるけれど、とても「もろい」。

吉澤 それがBANIの「B」というわけですね。

「もろさ」から来る「不安」、それは会社でも同じこと

本間 そうなるとAnxious、「人々は不安になる」ですよね。先ほどの例で言いますと、飛行機が飛ばないことによって空港でどうすればいいんだろうと不安になる人はたくさん出てくると思いますし、新幹線の事故があった日に僕はたまたま仕事で軽井沢に行かなければいけなくて東京駅に向かったのですが、特に外国人の方の不安そうな顔を見ると、世界が脆弱になっているからこそ人々は不安になっているんだろうなと、こう思うわけです。

吉澤 うん、そうですねぇ。

本間 そしてこれは何も世界の話だけではなくて、会社も同じことですし、自分も家族も影響を受けているわけですよね。人はこんな不安には耐えられないと思うんですよ。だって200年、300年前の江戸時代のようなのんびりと生きていた時代から比べれば、DNAや脳細胞の進化のスピードはそこまで速くないのに時代の変化はどんどん速くなっているわけですから、それは人にとってストレスフルになっていますよね。

吉澤 ちょっとしたことでまず自分の身にピーンと反応しちゃうくらいのつながりと言いますか、もちろん便利につながっている部分はいいんですけど、その反対のことまで起きてしまう……そこからの「もろさ」と「不安」ですか。

本間 そう。言い方としてはちょっと難しいのですが、例えばメンタル疾患は増えていると思います。これまでは人数も少なかったから、メンタルの不調を患ってしまった人たちをちゃんと支援しようという動きがありましたが、現在のようなこういう状況になってしまうとメンタルの好・不調ではなく、表面的には出なくてもストレスを感じ、またそれ以上に不安になりウェルビーイングを保てなくなる人が増えてきますよね。

吉澤 そういうことになりますね。

本間 そうなるとやっぱり社内においても、社外においてもちゃんと誰かの話を聞いてあげなければいけないですし、社内においては上長が部下の話をちゃんと聞いてあげる。それは仕事に直接関係ないにしても、です。もちろん仕事に関しても、ロシア・ウクライナの紛争は会社に全然影響がないと思っていても、それが直撃してしまう時代ですからね。

そうした意味でも会社と社員、それから上長と部下とのコミュニケーションは重要で、1on1のようなものが必要になってくると思うんです。それは不安を取り除くという目的もありますし、会社や組織の戦略が変わっていく、あるいは戦略自体は変わらないけど今は緊急事態としてこうしなきゃいけない、そのためにあなたはこの仕事をしてくださいとか、そういうことが今後すごく増えていくはず。

そういう意味では、bizlogueにゲストとして来ていただいた熊澤真さんの言葉を借りれば、上長と部下のパイプをちゃんと通して、そこに常に水が流れている状況を作っておく。“その時”のために準備しておくことがすごく重要だなと思っています。

吉澤 すごく大きなシステムを綿密にメンテナンスしていくことがますます求められているということですね。

本間 そう。それでシステムやハードの部分はそうやって作り上げられると思いますが、人のソフトの部分は作り上げられないわけですから、システムも重要だけど心のつながりも重要になりますよ、ということですね。

吉澤 そうか、なるほど。今回はBANIの「B」「A」まで本間さんに解説していただきましたが、残りの「N」「I」に関してはまた後編で、ということでいいでしょうか。

本間 はい、そうですね。後編も引き続きよろしくお願いします。


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■ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法
(著・本間浩輔)

■1on1ミーティング―――「対話の質」が組織の強さを決める
(著・本間浩輔、吉澤幸太)

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