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[絵本のレビュー] 絵本『わすれていいから』大森裕子 絵本満足度 (4/5)★★★★☆/★★★★★
-惜しむべし、得がたきは時、逢いがたきは友-能楽『西行桜』より一部抜粋
🔼筆者意訳
(略)本当に惜しむべきものなのだ。真に得がたいものは時間、逢いがたいものは友。
絵本の表紙
画像引用元:amazon.co.jp
🔼 サイズに注意。
こんな人におすすめ
大人でも楽しめる
人におすすめしたい
文章は短いほうがいい
あらすじ
赤ちゃんのときから男の子と一緒にいる猫。二人はいつも一緒。でも時
間の流れは男の子より猫の方が速くて。
🔼これまでbeanjoが読んだ絵本の記事一連。
よかった点:『春宵一刻値千金。花に清香 月に陰』 -能楽『西行桜』より-
🔼筆者意訳
それはあの春の宵の値千金ともいえるひととき。どこからか花の香りがして月に影がさすあのひとときだ。
この絵本は能『西行桜』の詞章(能のテキスト)を読んでいる気にさせ
る。最も価値があるものの一つ。それは時間。
うーんな点:絵本という、メディア
くやしいのはこれが絵本ということ。絵本というイメージというものが
この絵本の価値を邪魔してくる。もったいない。
絵本満足度
子供向け ★★★☆☆ よみやすい ★★★★☆
大人向け ★★★★★ 絵のしかけ ★★☆☆☆
総合 ★★★★☆
<参考文献>
『わすれていいから』大森裕子 KADOKAWA 2024
『謡曲百番』 西野春雄 校注 新日本古典大系57 岩波書店 1998
🔼beanjoがこれまで紹介した、能楽関係の記事
あとがきにかえて:能楽『西行桜』(読まなくてもかまいません)
『西行桜』。室町時代の世阿弥作ともいわれる古典芸能『能』の作品のひ
とつ。あらすじは次の通り。(筆者によるまとめ。原典は自分自身の目で要
確認)
能『西行桜』あらすじ
春、京都の山奥に庵をかまえる西行法師のところに今年も花見客たちが訪
れる。思案していた西行は来客お断りと自分の庵に住むひとに言っておく
が、そのひとは山中をこえてわざわざたずねてきたのだからと西行にとりな
す。不満をもちつつも西行は花見客を庵の中に招くも、心中穏やかではな
く、思案を邪魔された西行は、注目を集めてしまうのが桜の罪である、とい
う意味の和歌を一人うたう。
夜、花見の中でまどろむ西行の夢の中に老人が現れる。老人は昼間に西行
がうたった和歌の意味を問う。西行は、格別の意味はない。ただ注目を集め
てしまう桜をわずらわしいと思った、と答えたのに対して、老人は、どう感
じるかその人次第、桜に罪などない、と答える。その答えに西行も思うとこ
ろがあったのかすぐに納得する。その後西行と老人は話し合う。老人は自身
が西行の庵にある桜の老木の精霊であり、西行にめぐりあえたことを喜び、
舞を舞う。しかし空が白み始め、老桜の精霊の願いも空しく、夜が明けたこ
とで西行法師が夢から覚め、老桜の精霊も消えてしまう。