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今日はふと、浮かんだ詩というか物語というか、自分の中での比喩を綴っていきたい。

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蝉の鳴き声で耳が溶ける、暑苦しい夜
ここ数年この時期になると思うことがある。

「私は蝉みたいだ」

いつ死んでもいい。人生なんて終わってる。
誰も認めてくれない。必要とされてない。

そんなことばかり考えていて、

私は、声を枯らしてなく事もないし、そうしようとも思わない、そうやって土の中で過ごしてきた。

存外、私は愚かで明け方に、土から出たとしても、木には登らず、殻を破ろうともせず、土の中に戻った。

よく晴れた昼下がりに、偶然土から出てしまった。
私は、何を考えたか、若葉色の葉の隙間から差し込む光と、柔らかいがなぜか、はっきりとした太陽の香りに誘われて木を登り、殻を破ろうとした。

長年、土の中で過ごしすぎたせいか、私1人の力で殻を破ることはできなかったが風に吹かれた落ち葉が一枚背中に触れる。

殻から上半身を抜き出し。
小さい乳白色の羽を乾かす。

初めてみた自分の羽は、小さくて醜いと感じた。でも、元から殻を破って何をしようと思っていたわけでもない私には充分すぎる羽だ。

飛んだことはないが少し生暖かい風が飛び方を教えてくれる。

ふらふらと落ちるように入り込んだ森には、今まで1人であった私の存在をかき消すように、鳴き声が響いていた。

そのまま消えてしまってもいいと一瞬考えたが、葉の隙間から差し込む光と太陽の香りが私を呼び戻す。

私という存在を、照らし導いてくれたあの香りを、

小さく醜い羽を、充分だと思わせてくれたあの光を、

今は、誰のためでもなく私のために泣いてみよう。
もう一度あの香りと光に出会えるまで。

そう、私は貴方の嫌いな蝉なのだから。
選べれるために泣きじゃくる。
愚かで醜く、傲慢な蝉なのだから。

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