【人生ノート286】
他にゆるく吾に厳しく
物質はこれ魂の具体化といふ道理をば知らぬなりけり
それぞれの人それぞれの異なれる世界に住めるものにてありけり
われを他におし及ぼしてかれこれといふは通らぬ理屈なりけり
くそ壷でなければ住めぬ虫もありてで食う虫もすきずきの世ぞ
時々によりて変るぞかほ形みな守護神のわざにこそあれ
たましひの世界のことは魂の世界を見たる人に頼れよ
何ごとも枝葉のことにとらはれでよく大局を見定むるべし
よきは採り悪しきは捨てよそれぞれに養ひとなるものは異なる
言葉じり言ひまはしなどに捉はれでその精神を汲むが第一
何につけ一々他人と比較してよくよく吾を省みるべし
若き時の未熟の思想をいま悔ゆるごとくに後も悔ゆるなるべし
何事も上には上があるものぞいや慎みにわれを慎しめ
うつし世のことをなべてと思ふ故とはの栄えに背くなりけり
思ふことの直ちに人に伝はるは電気のごとき理屈なりけり
何事も順序を経つつ進なり時々刻々と悟りゆくべし
玉も石もめったやたらに置かれしもやみ夜の故にぜひなかりけり
こころよく犠牲になりて恨みざる人こそ神の生まれ代りぞ
他人にゆるく吾にきびしくあるなればこの世の中は平和なるべし
吾をえらく見せむと思ふより心にもなきうそをするかな
『信仰覚書』第二巻 出口日出麿著