8冊目『dele2』/本多孝好
前作『dele』の続編。
祐太郎の妹・鈴の死と圭司の車椅子、そしてドラマ版には登場しない人物・夏目の謎が(ちょっぴり)明らかになる三篇が収録されている。
鈴の死後、真柴家に圭司の父親が病院側の弁護士として訪れて──云々などの流れは、ドラマ版と変わらない。しかし、本書の方が、もっとずっと闇が深かった。
これまで祐太郎が「データ消す前に開いてみようよ」と提案しても必ずNOを示していた圭司。珍しく積極的にデータを開けた時点で「こりゃあ何かあるな」と予期していたけれど……まさか、本人が抱えている持病に関係してくるとは。全くの予想外だった。
「ドラマ版、そこまで詳しく描いてたっけ?」と、首を傾げてしまったじゃないか。ここに来てドラマ原作本の魅力を発揮するなんて狡い。好き。
お陰で、真柴祐太郎のブラック化が激しい。ドラマでもブラックに変貌したが、それ以上だった。車椅子を乱暴に蹴飛ばし、蹴り付け踏み付けながら床に転がる圭司に詰問するシーン。素晴らしい。山田孝之&菅田将暉で想像すると、滅茶苦茶エモい。ゾクゾクする。
当方、格好良くアクションをキメる菅田将暉が好きだけれど、狂気じみたり感情を爆発させて悲痛な面持ちで叫ぶ菅田将暉も大好物なので、映像で観たかった感がある。当て書き効果で脳内再生は相変わらず余裕なのだが、それはそれ。これはこれ。
映像化したら絶対、泣く程良い出来栄えだったに違いない。観たかったな……。
上記以外にも、本書はドラマと同じ様で違う道を辿っている。
例えば『dele.LIFE』の行方。
ドラマでは、鈴の死の真相を暴く途中に襲撃を受け、仕事道具であるパソコン等が破損。ある意味因縁の相手であった圭司に祐太郎は辞表を出し、去って行く……──と思いきや、差し入れのドーナツ(だったよね?)片手に出社して、
「一回、事務所立て直そ? 給料は立て直してからで良いからさ」
的な可愛い台詞で、ほっこり大団円だった。
なのに、本書では『dele.LIFE』襲撃は無く。真柴鈴の死の真相を暴いて決着を付けた後は、祐太郎が“事実上の辞職”という形を取って二人別々の道を歩んで行く切ない終演となっている。
「また連絡する」なんて、別れの言葉に見せかけた『再会の約束(無期限)』が、一層切なさを濃くさせる。命の期限=データ削除という明確な『終わり』と縁切り出来ない職業の、彼ららしいラストだなと感じた。どこをどう切り取っても寂しくて、胸が絞られる様に強く締め付けられる。
前作から張り巡らされた伏線の回収率にもゾッとするが、何よりも「こっわ!」という気分になるのが、夏目の存在だ。
ドラマ未登場の、圭司の師匠ポジションなハッカー。凡ゆる面で謎に包まれている夏目が、祐太郎を『dele.LIFE』に導いていたって設定が普通に恐ろしい。
深掘りすればする程、沼に嵌る気配しかしない。
小説版『dele』闇深すぎ問題。続編が出れば出るほど「う"ぉ"ぉ"お"ん"」と呻きそうだ。
(了)