【書評】『アジア新聞屋台村』 高野秀行
こういう本が読みたかった! この猥雑で、エネルギッシュな世界。僕がちょうど欲していたものだ。この作家の別の本も買うぞ!
本書冒頭。
ビンボーフリーライターの家に一本の電話がかかってくる。
「エイリアンのレックといいますが、原稿を書いてください」
「え、え!? エイリアン?」
びびるよね?
もうのっけから笑い満載。
それが笑えるのは、本人たち外国人が真剣に大真面目だからだけど。
リュウさんのつくったハチャメチャなアジア新聞社に
ふりまわされるにぎやかな日々に乾杯。
できる女、朴さんとの恋愛未満の、あの感じがダントツにいい!
結局、やめて転向しちゃんだけど、ひきとめるチャンスあったのに、
進展するチャンスあったのに、何もできず、
タイミング逃しちゃう馬鹿な男…。
自分の青春時代の思い出で似たようなことがあって、
あのとき、何もできなかったなぁと思わず思い出してしまった…。
はぁ~せつねぇ~。
高野さん、わかるよ、オレは分かる!
しかしだ、それにしてもアジアの人って、ずぶといし、したたかねぇ。
ナンシーなんか、あっという間に独立しちゃうしさ。
働きながら、別の副業やるのはあたりまえだし。
まぁ、だからこそ、会社が詐欺にひっかかって傾いたときも
生き残っていられたんだろうけど。
主人公が味わう外国人の“ずれ”を追体験して笑ったり、
驚いたり、関心したり、なんだか自分まで
豊かに視野がひろがっていきそう。
感情移入できるのは、この主人公がマンネリを嫌う性質で
会社人間なんて!っ ていうのが根本にある人――(というか誰もやったことにないことを純粋に追いかけていたいパイオニアマン)なのに、
いざアジア屋台村に入ってみると、周りがあまんりにもデタラメすぎて、「編集会議ぐらいやろうよ!」っていう、
まともな方の人間にならざるをえなかったとこね(苦笑
ま、思い直して、ここはそうじゃないからいんだよな、
って教えられるのはあるんだけど、
源泉徴収くらいはやったほうがいいよね(笑
あー、笑ったし、ほっとしたし、
せつなさかったし、エネルギーもらった。
おれ、椎名誠さんのこういうのとか、目黒さんの出版の話とか
とにかくこういうの大好き。
熱がある。夢がアル!
型破りなエネルギーに脱帽!
※大昔に読んだけど、また読みたくなる。このエネルギーに触れたくなる