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春疾風(はるはやて)

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受験に失敗して文学部に入った女の子と、本が好きだけど将来の夢がなくて仕方なく文学部に入学した男の子のお話。
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#小説

その後②

桜叶くんが作品を出品してから数ヶ月後のある日だった。いつもならトントンと一定のリズムで聞こえてくる足音が、今日はなんか違かった。

「深咲!深咲っ!」

リビングのドアを思い切り開けたかと思えば、息を切らした桜叶くんの声が部屋中に響いた。ただ事ではない雰囲気が部屋の中を取り囲む。何があったのか分からなくて、私はとても不安な気持ちに包まれて、無意識に眉をひそめていた。

「深咲。聞いてくれ。俺、やっ

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その後①

大学で私は、絵の上手い文学生として人気者になり、友達が徐々に出来始め、一人では行かないような店に友達と放課後に行ったり、新しい服を買ってみたり、色々なことをして、充実した学生生活を送った。相変わらずサークルには入らなかったけれど、絵だけは描き続けた。
文化祭の時は、実行委員の人からポスター制作や内装のデザイン案を任されたり、文芸サークルが毎年出している文集の表紙を描かせてもらったり、色々絵を描く機

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サー。という継続的な音と共に目が覚めた。カーテンを開けると、いつものような真っ白な光線が瞳孔に差し込んでくることはなく、重苦しい灰色の景色が上空にあった。久しぶりの雨だった。
何となくテレビをつけると、たまたま気象予報士の落ち着いた機械的な声がした。今日の担当は男か。
「この地方では、現在弱い雨が降っている模様ですが、雨雲は今後東へと抜け、昼頃には晴れるでしょう。雨上がりは気温湿度ともに非常に高く

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大学の窓口でコンクールのことを聞いて、その場で勢いで書類を書いて、速攻で応募した。大学側が絵を出品してくれるそうだから、少し助かった。

無事に絵を提出して、少し一息つきたくなって、私は、学生の共同スペースに来た。いつもは素通りしているところだけれど、よくよく見ると、席が沢山あるし、色んなサークルのポスターが掲示板にびっしり貼ってあるし、英検とか漢検とかTOEICとかの応募用紙などもちゃんと置いて

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息を切らしながら玄関のドアを勢いよく閉める。郵便物がなにか入っていたみたいだったけど、今すぐじゃなくていいやって、放っておいた。

リュックサックを投げ捨て、腕をまくって、遅刻ギリギリで着席する生徒のような勢いで、サッと椅子を引いてドスッと腰を下ろした。緑色のダッカールで、少し伸びてきて鬱陶しい前髪を、頭のてっぺんで留めた。
鉛筆、鉛筆…。消しゴム、練り消しゴム…。しばらく触っていなかったから、ど

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つまらない講義を聴きながら、講義中に落書きをしながら、なんとなく過ごす毎日。いつの間にか桜は散って、キャンパス内は新緑の柔らかな葉で包まれていた。あの日以来、あの子のことはあまり見かけなくなっていた。席については落書きし、落書きしては授業が終わり、みんなが騒ぎだしたのを合図に講堂を出る。特別なことが何も無い毎日を繰り返していた。
家に帰れば、作成途中の絵が、机の上に放り出されている。構図が決まって

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3

あの日から、私は毎日、画用紙とにらめっこして、鉛筆で線を加えては消して、消しては加えてを繰り返していた。大学の授業も本格的に始まり、毎日朝から桜のトンネルをくぐるようになった。
初めてトンネルをくぐった日に出会ったあのひとには、もう会えていなかった。毎日校舎に入る前に、あの桜の木の下を確認するのだけれど、誰もいない。正直、髪の毛と日陰で顔がよく見えなくて、顔がわからなかったから、探そうにも探せない

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〜♪♪
ギターとベースが効いた着信音で目が覚める。朝か。そして電話か。寝ぼけたまま目を擦り、電話の向こうが誰なのか確認しないまま、無意識に緑の着信ボタンを押す。

「もしもしー。あんた昨日どうだったー?初めての大学。やっぱり私大は綺麗なの?広いの?」

こっちは寝起きだと言うのに、電話の向こうは容赦なくハイテンションな声で質問してきた。高校の時仲が良かった友達の紗月だった。

「あー。おはよ。さつ

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「残念ながら、不合格です。」
これで4度目だった。絵を描きたくて、私だけの絵を作りたくて、美大を目指して、必死に絵を描いてきたのに。美術部の活動時間の他にも、朝学校が開く時間と同じ時刻に登校し、ホームルームが始まるギリギリまで美術室に立てこもって、キャンバスにむかっていた。各休み時間に早弁までして、昼休みもずっと絵を描いた。美術部の活動が終わったら、入試の時に持っていって試験官に見せるためのスケッ

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