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観光記(第三章)

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今、今は今でいいのだと頷く

今、今は今でいいのだと頷く

 出かける予定がぽぽぽと灯り、この道は確かに春へとつながっているのだと思える。術後3ヶ月になるが経過は良好で身体が癒えてゆく力を日々感じる。体勢によって自分の鼓動にふいに気づくあの瞬間だけ身体は生きているわけじゃない。どんなときも絶え間なく古くなり、新しくなってゆくこと、そのことへの惑いはちっともないのだ。身体はそんな感じ。私は、うーん、最近はねむるときが一番好き。でもいつか、眠れない夜のためにも

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ふるえが伝うこと(平和のつくりかた)

ふるえが伝うこと(平和のつくりかた)

どんなに砕いても、裏返しても、伸び縮みさせても、「言葉」は硬質なものに変わりはない。言葉にした途端に遠くなり、引き返せない気がして後ろめたくなる。言葉に耐えかねてまた言葉を探すこと、あるいは黙ること。
言葉にできないことがある。言葉にはできないことがある。言葉が言葉であるがゆえに、言葉にできないものに言葉はふれることができない。
言葉ひとつにも確かに息づくふるえやひびきについて、どんな分野の専門用

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わたしたちは夢を見ながら、夢に生きて

わたしたちは夢を見ながら、夢に生きて

変わってゆくことは自然なことで、変わらないことを誓うことも、変わらないでいてほしいと願うことも不健康だと思っていた。人の体も、精神も、愛情も、水のように、草花のように、朽ちてゆく土壁のように変わってゆく。人間は変わらないものを作ることが誠実だと思っているけれど、そんなのわたしたちにできるわけがないし、するべきことはもっとある。生きているあいだに生きているひとのことを見向きもしないあなたはいつまで生

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言葉は、言葉に非ず

言葉は、言葉に非ず

いろんな名前で呼ばれているのね。
あなたは、わたしにとって言葉のいらない相手だから名前を気にしたことがなかった。
呼ばれるときあなたはその名の元に在り、呼ぶ者に異なる名を明かしたりはしない。
共に在るって、きっとそういうことなのだろう。

本の中で「言葉は宇宙の隅々まで届くからね」と書かれていてそれはおもしろいことだなあと思ったけれど、たとえば虫に伝えたいなら虫に語る言葉を探すことが「伝える」とい

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誰もが自分のためのあわいに生きられるように

誰もが自分のためのあわいに生きられるように

見たことのないものを、信じることは難しい。わたしたちは未だ見たことのないものを希求する方法を一体いつ手に入れたのだろう。命は守られて然るべき。愛は自由で然るべき。ほんとうに守られているってどういうこと?ほんとうの自由ってどんなもの?あなたが未だ見たことのないものの前で立ち止まり、他の人みたく大きな声で「欲しい」と言えないときも、大丈夫だよ。わたしが生きてきた中で知った大丈夫を、あげる。

目が開か

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体という器に満ちゆく祝福のこと

体という器に満ちゆく祝福のこと

夏至一日前、ゆわいのヨーガの時間を受け取りました。

体から詩が生まれること、愛も祝いも体があってこそ届けられることを深く理解しながらも、大事にする方法がわからないでいるところがありました。どうすれば体に届くのか。どうすればこの体と仲よくできるのか。ゆうりさんにお誘いいただいたとき、これまでずっと蔑ろにしてきた体とようやっと向き合えるのではないかと思いうれしくお受けしました。わたしは空間である祝の

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充たされた道具で在りなさい

充たされた道具で在りなさい

これ以上わたしたちを隔てるものがないように。
そう願い「ひとり」という言葉も「ふたり」という言葉も、両掌で力いっぱい捻じ曲げてきた。生きたくて、死にたくて、この星に絶えず生まれる隔たりに首を縦に振れない。持っている持っていない、知っている知らない、そんなことを言っている場合じゃない。わたしには人が必要だ。そのこと以外に、必要な持ち物なんてほんとうは何ひとつないはずじゃないか。何を得ても失っても、あ

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2022.04.17

2022.04.17

手当てに使うと決めた10年間の内、丸2年が過ぎた。
30の年は愛について気づきを得て、怪我も病も得た。居る場所を求め京都に戻り、10年ぶりに接客業を始めた。31の年は暮らしが気づきと実践の場となった。愛を手渡すことと言祝ぎが仕事となり、身体の風通しが随分良くなった。自分を使うこと、あるいは何らかのお使いを託され、用いられることのよろこびを知った。

言祝ぎとは別に、書きたいものがある。
光のこと。

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よろこびをひらいてゆくこと

よろこびをひらいてゆくこと

わたしのよろこびをひらいてゆくこと
祝うことが祝われることでもあること
あなたがうれしいとわたしもうれしい
巡りゆくものの中でどこまでも惚けながら
この星にてよろこびをひらいてゆくこと

何か大事なことに立ち会っているのだと、わかりはじめてきたこの感覚を心に延ばしてゆくよう散歩した。
あなたを見つけた。
知らなかったわたしが見つかって、この世はすこし違う横顔を見せ始めた。それは時に今まで見てきたも

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3月の上澄み(甘じょっぱい)

3月の上澄み(甘じょっぱい)

人生がひとつの本だとして、自分のそれが何のジャンルに分類されるかがうっすらわかってきたような気がしながら歩いていたら、いつのまにか春のあかるみに辿り着いていた。
わかりたいのに読めない。明かしたいのに書けない。ここに来て一層この世が観光地然として瞬いてみせる。ようやく住み慣れてきた地でもう一度、言葉を失うということ。割り切れなさからはじまるものでしか越えられないものがあると信じている。

空を振り

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うれしいって言っていい

うれしいって言っていい

今日はじめて、職場で「戦争」という言葉を聞いた。
絞られた声に言葉にならないものまでも聞いてしまったような気がして、エプロンをつけた自分のまま僅かに狼狽えた。
同じ不安をマスク越しに吸い込んでいる。その瞳でその指で同じかなしみにふれている。
本を読む、花に見惚れる、手紙を書く、歩いて出かける、人とぶつかり謝りあう、手紙を受け取る、あたたかいふとんの中で泣く、すきなひとに会いにゆく、かなしみをすこし

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明滅への応答、安寧の水辺、手を握ること

明滅への応答、安寧の水辺、手を握ること

ゆっくり明滅しているものが見える。
「見える?」そう尋ねられているような気がして「見えます」と言う代わりにしっかり頷く。そうするとまた同じようにほの明るく灯り、しずかに消えてゆく。見えますってもっと伝えるためにはどうしたらいいんだろう。見えていることをわかってもらいたいと思うのはどうしてだろう。きっと、消えないでほしいからだ。見えます。見えているから、消えないで。目をひらいて、そこまで向かうからも

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宇宙における窓際の席より

宇宙における窓際の席より

わたしはずっと朝を待っていた。
あなたの姿、あなたの肌の色が鮮やかに見えるこのときを。
その目に映るものとして、待っていた。
朝陽を見ていると、眠っていたときのことを思い出せそうな気がする。見たくて仕方ない景色のことは、たとえこの目で見たことがなくても憶えているものだ。

そうしたいひとと出逢ってしまったらそうすればいいと思います。
どんなものであれ生きている他者がもたらすものを一番重んじるべきだ

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