【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】不妊症と鍼灸(Q&A)
千葉市内、千葉駅すぐ、女性と子ども専門鍼灸院『鍼灸 あやかざり』です。
いつも【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】の記事をお読みいただき、ありがとうございます。
令和4年4月から不妊治療に健康保険が適用となり、不妊治療を受ける人にとって金銭的な負担が大きく軽減されるようになりました。
それとともに、体外受精・人工授精などの不妊治療と鍼灸治療を併用したいと希望をする人も増加する傾向にあります。
実際、筆者の鍼灸院においても、女性患者様の悩みの中で不妊症の割合は増加傾向にあり、不妊症が主訴でなくても、妊活のために身体の不調を治していきたい、という要望も多いように感じます。
今回は、そんな患者様からしばしば受ける、妊娠・不妊と鍼灸に対する質問に対して、なるべくわかりやすく、東洋医学的なメカニズムにもとづき、解説をしてみたいと思います。
なお、現在、鍼灸治療の方法は非常に多岐にわたり、世間にはたくさんの鍼灸治療院が存在しています。
今回ここでとりあげるのは、『東洋医学にもとづいた伝統鍼灸を行う鍼灸院での治療』にもとづいた内容となっていますこと、ご承知おきください。
では、どうぞ最後までよろしくお願いいたします。
1.不妊症と鍼灸について
まずは、これまでのおさらいです。
以前にも、不妊症と鍼灸について、2つの記事をご紹介をしてきました。
それぞれを、まだ読んでいないという方は、ぜひ、一度お読みください。
『【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】不妊症と鍼灸(https://note.com/ayajazari/n/n8ac900a1b5ba)』の記事の中では、
1.不妊症とは
2.東洋医学における不妊症
3.鍼灸治療によるアプローチ
という、不妊症に関しての基礎知識とあわせて、不妊症に対する鍼灸によるアプローチをひとつ取り上げています。
『【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】不妊症と鍼灸(診断と治療)(https://note.com/ayajazari/n/n0da944292653)』の記事の中では、
1.東洋医学的な診断
2.経穴による診断
3.治療方針の決定
4.鍼灸治療の効果
という、不妊症における鍼灸治療について、より専門的に細かくご紹介をするとともに、不妊症に対する鍼灸によるアプローチをさらにひとつ取り上げています。
では、Q&Aにすすみましょう。
2.『月経周期の乱れ』は妊娠しづらい?
回答:月経周期は整っているほうが妊娠しやすいといえます。
妊娠では、子宮および周辺の体内環境を、常に良い状態に保っておくことが重要となります。
子宮環境は、月経周期の1サイクル(約25~38日が標準)でリセットされるように女性の身体はできあがっており、それが上手く行われているかどうか、身体の外から知るための目安のひとつが『月経周期』なのです。
東洋医学的には、月経周期の規則性には、全身の気血のスムーズな流れが関与しており、身体の中で規則的な陰陽の変化が繰り返されることで月経はおこっている、と考えます。
月経周期にバラツキがある場合、鍼灸治療では、この陰陽バランスがどうしてくずれているか、気血の流れがなぜ滞っているのか、その根本原因を追究し、月経周期を整えていくことで、妊娠しやすい身体づくりをしていきます。
3.『基礎体温ガタガタ』は妊娠しづらい?
回答:基礎体温は規則正しいほうが妊娠しやすいといえます。
東洋医学的には、正常な基礎体温の推移と全身の気血のスムーズな流れは関係していると考えられます。
身体の中で、規則的な陰陽の変化が繰り返されることで、高温期と低温期の二層、および高温期から低温期へ、低温期から高温期へ、というように、基礎体温は毎月のサイクルを繰り返されます。
基礎体温の乱れがある場合、鍼灸治療では、身体の陰陽バランスがどうしてくずれているか、気血の流れがなぜ滞っているのか、その根本原因を追究し、基礎体温を整えていくことで、妊娠しやすい身体づくりをしていきます。
毎日、基礎体温を計測するのは少し面倒ではありますが、身体の外からは知りえない、月経周期と子宮環境の状態を自分自身で把握することができるのです。
妊娠可能な状態にあるかどうか、子宮環境は健康であるかどうか、病院に行かずにセルフチェックできることから、まずは毎朝の起床時の習慣として計測をしてみることをお勧めします。
ただし、不妊治療を開始して病院に受診しはじめると、血液検査により基礎体温に変わる情報を得ることができることから測定は不要とされることもあるようですので、その場合には、医師の指示に従いましょう。
では、次に、これまで説明をしてきた、月経周期と基礎体温の関係について東洋医学的観点をふまえてまとめてみましょう。
4.月経周期と基礎体温について
【月経期】
東洋医学的には、身体の中が陽から陰へ転化(=移行)する時期。
高温期から低温期への下降性移行する時期。
月経により、不要な子宮内膜と月経血を排出し、子宮環境をリセットする。
月経で不要なものを身体の外にスムーズに完全に排出させることが大切。
西洋医学的には、黄体ホルモン(プロゲステロン)の減少。
血流を良くして、無理なくスムーズに月経血を排出させ、子宮内を綺麗にするために、鍼灸治療においては、理気行滞、活血化瘀作用などがポイントとなります。
【卵胞期】
東洋医学的には、身体の中で陰が盛んな時期。
低温期。
子宮内膜を再生・増殖し、卵巣内で卵胞を成熟させていく。
子宮内膜を厚くして、受精卵が着床しやすい環境を準備する。
西洋医学的には、卵胞ホルモン(エストラジオール, E2)の分泌。
卵胞の成熟に必要な血を補うために、鍼灸治療においては、滋陰養血作用、補腎、補衝任作用などがポイントとなります。
【排卵期】
東洋医学的には、身体の中が陰から陽に転化(=移行)する時期。
低温期から高温期への上昇性移行する時期。
卵巣から排卵が行われて、黄体期に移行する。
西洋医学的には、黄体化ホルモン(LH)の急激な分泌。
排卵がスムーズに行われるように、鍼灸治療においては、活血化瘀、滋陰寧神、補腎活血、温陽などがポイントとなります。
【黄体期】
東洋医学的には、身体の中で陽が盛んな時期。
高温期。
子宮内膜をふかふかに充実させて、受精卵の着床・発育を促す時期であるとともに、次の月経をむかえるための準備段階でもある。
西洋医学的には、黄体ホルモン(プロゲステロン, P4)の分泌。
気血を巡らせて、子宮内膜を充実させるよう、鍼灸治療においては、助陽のための温補腎陽、補血補陽、脾腎双補、及び理気などがポイントとなります。
5.鍼灸で子宮内膜を厚くできる?
回答:その可能性はありますが、子宮内膜を厚くすることだけを目的にした鍼灸治療はおすすめできません。
西洋医学では、検査により子宮内膜の厚さやホルモン値を測って、着床、妊娠しやすい身体かどうかを判定します。
一方、東洋医学では、これまでにご紹介してきたように、月経の状態と基礎体温、および体質・体調をもとにして、妊娠しやすさの目安とします。
鍼灸治療では、ホルモン剤のように、一気に子宮内膜を厚さを増すことはできません。
なぜなら、これまで説明してきたとおり、子宮内膜は月経周期に伴い変化を繰り返すものであり、そのサイクルの中で内膜が十分な厚さにならないのには、体質的な問題・生活習慣による問題などが背後にあると考えられるからです。
その根本的な原因を改善しない限りは、子宮内膜の厚さを十分にすることは難しく、また一時的にその厚さに達することができたとしても、その後の妊娠を維持することは難しくなってきてします。
子宮内膜がなかなか厚くならない場合には、定期的な鍼灸治療を重ねていくことが望ましく、それにより月経の状態が整い、基礎体温が安定してくるようになると、結果的に子宮内膜の厚さが充分な状態になってきます。
6.鍼灸はいつ受けるのがよい?
回答:特定の時期に限定した鍼灸治療を受けるのではなく、常日頃から、ある程度定期的に鍼灸治療を受けていくことをおすすめします。
定期的に鍼灸治療を受けることで、月経周期や基礎体温を整えることができ、妊娠しやすい、よりよい体調づくりを目指すことができます。
妊娠や不妊治療は、受精・着床したらゴールではありません。
十月十日という長い期間、母体を通してお腹の中の赤ちゃんに栄養を送り続けることで赤ちゃんは成長することができます。
また、母子ともに健康な状態で赤ちゃんが誕生して、出産後も体調が安定してこそ育児に取り組めることができます。
その段階まできて、ようやくゴールできたといえるのではないでしょうか。
そんなトータル的な観点で身体を整えていく、鍼灸治療はそれをサポートすることができます。
たくさんある鍼灸院の中には、採卵・移植・着床・受精というそれぞれのタイミングに限定して施術を何度も重ねる、といった方式を取り入れているところがあるようです。
確かに、『月経周期と基礎体温』のところでご説明をしたように、それぞれの時期での鍼灸治療のポイントを踏まえた治療は大切ではありますが、それだけを行うだけでは十分とはいえません。
前提として、その人の体質を踏まえることが必要であり、身体の慢性的な不調(冷え、頭痛、便秘、下痢、腰痛、貧血 等々)がある場合には、それらの不調がおこっている根本原因を正して、体質自体を整えていくことが必要なのです。
7.自宅でセルフ灸はしたほうがよい?
回答:鍼灸師からの指示なく、独自の判断でお灸をすることはおすすめできません。
ネット上には、信頼性のあるもの・そうでないもの、いろいろな情報が溢れかえっていまので、安易にそれらのツボに対してお灸をしていくことはおすすめしていません。
一般的に妊娠に関係するとされているツボの中には、血液の滞りを取り除く作用をもつものもあり、そういったツボに対して安易にお灸をし続けることで、妊娠に対して不利に働き流産の危険性が高まる、といったリスクも考えられます。
そんなツボの代表としては、みなさんもよくしっている「三陰交」というツボがあります。
また、お灸は、鍼と比較して身体を温める効果が強いことから、身体の中に余分な熱をため込んでしまっているような体質の人(咽が渇きやすい、暑がり、身体がほてりやすい 等々)には向きません。
ネット上の情報をみてお灸に興味をもった場合には、鍼灸師に一度相談をしてみるとよいでしょう。
また、通っている鍼灸院の先生から指示がある場合には、指示通りにお灸をするようにしてくださいね。
8.不妊治療と鍼灸は併用できる?
回答:はい、併用することが可能です。
不妊治療専門クリニック、産婦人科で行われている、西洋医学的な治療(体外受精、人工授精、顕微授精)と鍼灸治療は併用することができます。
鍼灸治療は、それらの治療による身体の副作用的な反応をおさえることにも役立ちます。
最近は、医師の勧めから鍼灸治療の併用を希望される患者さんも増えてきています。
ただし、不妊治療に対する保険はききませんので、自費治療となります。
9.生殖器疾患に対しても鍼灸は適応可?
回答:はい、鍼灸治療で対応することが可能です。
子宮内膜症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、卵巣不全による無月経、無排卵などの生殖機能に関する疾患があることで妊娠しづらい場合、不妊治療をしている場合にも、鍼灸治療により疾患の改善および妊娠できる身体づくりを目指していくことができます。
その場合、西洋医学的な治療と鍼灸治療を併用することが多く、月経の周期、状態が安定するまでに相当の期間を要することも少なくありませんので、長期戦で根気よく鍼灸治療を続けることをお勧めしています。
10.まとめ
いかがでしたか?
今回は『不妊症と鍼灸(Q&A)』と題して、患者様からしばしば受ける質問に対して、なるべくわかりやすく、東洋医学的なメカニズムにもとづき、解説をしてきました。
妊娠、妊活、不妊症、不育症などで、鍼灸を受けてみたいと思っている方々の鍼灸院選びの参考となりましたら、幸いです。
今回はここまでとなります。最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!
鍼灸 あやかざり
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