ADHDやASD、特性が愛される時代にしたい。
素晴らしい本を読みました!
「死にたかった発達障がい児の僕が自己変革できた理由」西川幹之佑著/時事通信社
これ、タイトルが重いですけども、発達障害に関心のある方ならぜひ手に取ってほしい!
内容はたいへん読みやすく、特性を持つお子さんへのフォローにつながるアイディアに富んでいます。
公立学校の教育改革を猛烈な勢いと熱情とで推進され、現在は横浜創英中学・高校の校長先生でいらっしゃる工藤勇一先生が、
東京都の麹町中学校に校長として赴任していらしたときの生徒である西川さん。
東大入学が是とされるエリート家系に生まれながら、ASD+ADHDを持つゆえにどこにいってもうまく馴染めず、能力を過小評価され、疎外感と劣等感ではち切れそうになっていた彼が、中学校の入学式で出会ったのが工藤先生のプレゼンテーションでした。
「君たちは僕が3年間を一緒に過ごす最初の生徒だ!一緒に学校を変えていこう!」
ズガーン!と痺れるほどの感銘を受けた西川さん。
「自律した生徒を育てる」ことをつねに最上位目標として、対話を大切にしながら生徒にはたらきかける工藤先生の姿に影響を受けていきます。
自分にとっての最上位目標は「多様性を認める社会にすること」と定め、
そのための自分の自律とは?と思考し、感情のコントロールができるようなるために、自分なりの手立てを工夫していきます。
LDも併せ持つために苦手だった勉強も、イメージの力を駆使して長期記憶に結びつけたり、
使いやすい文房具にこだわったり(消しやすい消しゴムや書きやすい鉛筆、シャーペンの使用により、ノートやプリントの破れを予防するため)
効率の良い学習方法を分析して、学習効果を上げていきます。
この辺りの工夫が見事なので、LDの子を支援している方にぜひ読んでもらいたい!
西川さんの自律への工夫は、砂糖を控えるなどの生活習慣の見直しにまで。(砂糖のとりすぎによる血糖値の乱高下が情緒の不安定につながると発見したからです。とくにASDの方に〝砂糖依存〟が多いのは近年知られています。)
ほんの一部しか紹介しませんが(とにかく読んでほしいので)このような多岐にわたる自己変革のアイディアは、西川さんの発想の豊かさと、常識にとらわれず、思考の段階を踏まずに一足飛びに正解に辿り着けるADHDならではの天才性の現れだなぁと感じます。
あと、自律という目標を決めたらまっしぐらに進めるのも、過集中の強みですね。
私はこの本に感動して何回も涙しました。
ひとつには、西川さんにとっての工藤先生のように、人生を根底から変え、支えてくれるような人との出会いがあるものなのだということ。
工藤先生の子どもたちへの働きかけはほんとに素晴らしいです。全校朝会では、退屈なものは一回もなかったというパワーポイントによるプレゼンテーションを常とし、自律について、目標達成のプロセスについて、挫折しても大丈夫なんだということについて…語りかけます。(ちなみにパワーポイントは視覚優位のお子さんに伝えるのにたいへん有効です。)
ひとつには、英検二級に合格する!と決意した時に、西川さんが作成したマインドマップの写真に
「目標=工藤先生の本を英訳できる」
と記入されていたその気持ち。
この純粋すぎる気持ち!大好きで尊敬する人のために役立ちたい!と強く願う気持ち。
こういうところこそが、特性のある子が持っている魅力だよなー、とあらためて思いました。
元教師としては、ひとりの教師からの働きかけが、これほどにも子どもを奮い立たせることができるものなのだということにも感銘を受けました。
しかも、たとえばそれが、情緒の安定した、変化に対して余地のある子どもではなく、もうほんとうに追い詰められ「死にたい」と自暴自棄になっていた子どもへ届いたこと。
ほんとうに素晴らしい本です。
タイトルが重いと書きましたが、特性のある子をよく知る私としては、この表現こそが実感そのものであり、100%過不足なく自分の気持ちを表すタイトルなんだろうな、と推察します。
「麹町中学校工藤校長から学んだ 発達障害の僕が自己変革できたワケ」
などのよくあるタイトルに変えなかった、出版を支えた大人の方も素晴らしいです。(そんないきさつはなかったかも知れませんが。)
私はADHD、ASD特性を持つ子どもさんが大好きで、その強力なサポートとなろう!と決意しています。
その一環として古民家コミュニティハウス兼カフェを創っている最中。(くわしくはこちらを参照)
私のどうしても達成したい最上位目標は、
「子どもたちの個性をありのまま尊重し、育てていく社会に変えること。」
そのために必要なのは「子どもができないことではなく、子どもの得意なこと、好きなことに着目して伸ばしていくことを子育ての常識にすること」だと確信しています。
特性がある子(大人も)が凸面を生かして周りの人や社会の中で役立てたときの輝きは、想像をはるかに超えるものがあります。
キラキラッとかじゃなくて、ぴっかーん!と圧倒的に光りますから。
特性のある子どもはほんとに可愛いよ。
西川さんが、本の中で繰り返し「発達障害の僕はスクールカーストの最下層」「エリート一家に生まれた駄馬」と明るく語るのが切なかったです。
特性が強い子は既存の学校システムには合わないのは確かです。
でも、そんな西川さんに「君、最高だね!面白い、天才だよ!」と声を掛けてくれた澤円さんのような方が増えていくことで、きっと世の中の常識も変わる。そんな大人を増やしていこう。
これも私にとっては現実可能な目標。
この本との出会いで、ますますその目標をクリアにしているところです!