マガジンのカバー画像

学術系

3
運営しているクリエイター

記事一覧

〈写実画モデル〉と〈不気味の谷〉-「べてるの家」の当事者研究を手がかりとして-

〈写実画モデル〉と〈不気味の谷〉-「べてるの家」の当事者研究を手がかりとして-

 写実画の価値について5年くらい考えている。
 写真と見分けがつかないような写実画はその点だけで評価に値するのだが、それが写真と一致した瞬間にその価値がほぼ0になる、という性質も併せもっている。簡単にコピーできる写真にはほとんど価値が認められないが、それが少し不完全に寄って「限りなく写真に近い」になると価値が釣り上がる。

 こういうモデル、つまり、現実との類似性が高まれば高まるほどにその価値が上

もっとみる
もし世界が偶然に過ぎないのだとしたら-神の存在と自然法則-

もし世界が偶然に過ぎないのだとしたら-神の存在と自然法則-

「神は存在する。なぜならば、この世界は単なる偶然で成立するにはあまりにも出来すぎているからだ」

 という主張は、キリスト教神学の内部だけでなく、我々一般人にとっても自然な感覚で理解できる神についての論証の一つである(キリスト教神学内部の存在論的論証については、たとえばバートランド・ラッセルの『WHY I AM NOT A CHRISTIAN』や上枝美典の『「神」という謎』等に詳しい)。誰しもが子

もっとみる
挙証責任と〈方法論的デフレ主義〉

挙証責任と〈方法論的デフレ主義〉

空き時間に、新しく届いた『真理の本性』を読み進めている。大変面白いし、なにより、参照されている論文が真理論の著作として過去例を見ないほど新しい。日本語で書かれた多くの真理論の研究書は、歴史的背景を一次文献まで遡って概観して、そこから問題を抽出する(『論理学 モデル理論と歴史的背景』『現代真理論の系譜』等が私の知る事例)。本書は最新の博士論文の書籍化ということもあって、いい意味で遡りすぎずに焦点を絞

もっとみる