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#小説
小牧幸助文学賞 応募作品
①funeral
母の遺体を生前好きだった鉢植えで囲んだ。
②題名:burial
母を炭焼きし、庭の桜の樹のもとに埋めた。
本当はもう少し連作で書くつもりでしたが、仕事が決まったため応募期間に間に合わなくなる可能性を考え、応募させていただきました。
たそがれのお菓子やさん【ファンタジー ショートショート】
そのお菓子屋さんは、ときどきやってくる。
ふかふかした三毛猫さんが、お菓子のワゴンを押してくる。三毛猫さんは手足がちっちゃくかわいらしくて、てちてちと歩いてくる。
ワゴンは薄いピンク色で、前面にはステンシルで白い文字がtwilightと書いてある。白いスカラップのお屋根が付いていて、パンチングされてレースみたいになっている。夕日を浴びながら三毛猫さんはてちてちと歩く。
公園に着くと三毛猫さんは
冬の薔薇園にて【ショートショート】
バラ園を歩く。
ここはいつでも開放されているわけでなく、バラの時期だけだ。
何気なく外の空気を吸いたくなって来てみたら、開いていた。ラッキーだ。
しかし、僕以外の見物客は他に一人しかいない。
二十代くらいの女性が一人、こんな寒い中、微動だにせずピンクの薔薇を眺めていた。
余程好きなんだろうな。
僕のお目当ての薔薇も咲いていてラッキーだった。何枚も丁寧に丁寧に写真を撮った。
「ヘリオトロープ、
正義の果て【ショートショート】
正義の味方は、便利なものをもらった。
切り替えスイッチのようなものだ。
気に入らない‥おっと、悪事を働くものは、消すなりミュートするなりしてしまえばいい。
む!タバコのポイ捨てか!こいつは即消しだな!私がボタンを押すと、その男は一瞬にして消えた。
電車に乗った。女子高生たちが同級生の悪口を大声で話しているのが耳障りだ。よし、ミュートしてやる。これで彼女たちは私の視界には入ってこない。
電車の
真冬の薔薇【ショートショート】
真冬の薔薇。
彼女を初めて見たときそう思った。
凛として、力強く、彼女はステージに立っていた。
地元の小さなライブハウスで、彼女だけがひときわ輝いていた。
やがて彼女はスターダムをかけ上がった。
彼女がそんな脆さを抱えているなんて、誰も知らなかった。
人気絶頂の時、彼女は命を絶った。
彼女の支えがたった一人の男性だったなんて、誰も知らなかった。それすらも噂レベルに等しい。
彼女は幼馴染に認
ゴーストタウン【ショートショート】
ゴーストタウンって静寂に満ちてると思ってた。こんなにわいわいガヤガヤしてるなんて。
訳あって突然打ち捨てられた商店街。
「今日はキンメダイがいいの入ってるよ」
「大根一つちょうだい」
「おじさん、豚こまと、あとコロッケもあげてくれる?」
頭の中に声がこだまする。何これ?生霊?思念?
この商店街、ほんとに訳あってある日打ち捨てられたから、余計に思いが残ってるんだろうか。
カウンターを持って、
二重人格ごっこ ♯毎週ショートショートnote
月曜日。
「お母様、ご飯美味しゅうございましたですわ」
「うふふ。ゆきさん、あら、お口にクリームがついてございましてよ」
「あら、わたくしったらいけないでございますわ」
火曜日。
「ゆき!てめえ、おら、ざけんじゃねえよ、こんな点数取ってきやがって」
「んだとババア!おめえの脳みそ受け継いでんだから仕方ねえだろ」
「んだとこらあ」
水曜日。
「お母様、今日のお茶も美味しゅうございましたですわね」
マヨねーこ「ショートショート」
「まりちゃん、ご飯、たべないの?」
うちの猫が突然、ご飯を食べなくなった。昨日までは食べていたのに。
「ねえ、まり、ご飯食べないんだけど」
両親に聞いてもわからないという。
母が、
「昨日はサーモンにマヨネーズかけたのガツガツ食べてたのにねえ」
と言った。
それだ!と思った。
試しに私は指にマヨネーズをつけ、まりにひと舐めさせてみた。
美味しそうに舐めた。
ドライフードにマヨネーズを少しだけつけ
アマゾン「ショートショート」
「あらぁやだあ、血圧計壊れちゃった」
母が朝から騒いでいる。
「お母さん、電池替えた?」
「替えたわよお。もう、今日電気屋さんいかなきゃ」
「あ、お母さん、電気屋さんよりアマゾンのが安いかもよ。見てみたら?」
「へ?アマ‥‥ゾン?」
「うん、わ、もうこんな時間!いってきまーす」
「アマゾン‥ね」
母はつぶやくとチラシをおいた。
夕方帰宅すると、家は真っ暗だった。
母のケータイに電話をする。
「
押し売り「ショートショート」
「押し売り〜、押し売りだよ〜」
昼ご飯を食べて片付けていたら、外からこんな声が聞こえてきた。
押し売り?ああ、なんか押してお菓子とか売ってるやつかしら。若いから押し売りっていう言葉、勘違いしてるのね。
ピンポーン。
あら?声が止まってる。さっきの押し売りさん、うちに来たのかしら。
「はいはーい」
インターフォンに出る。
「あ、お忙しいところ申し訳ございません!僕、お菓子をこのあたり売らせてもら
召喚したから密入国(ショートショート ファンタジー)
自転車修理に苦戦していた。
寝転がって地団駄踏んでいた。
「ああー!もう!こんな時、自転車に詳しい弟がそばにいれば!えーい、召喚するぞー!しょう、かん!」
もちろん、私にはそんな特殊能力は‥なかったはずだった。
ところがなぜか召喚できてしまった。
「う‥‥ぐ‥‥」
気づいたら私の上に弟が立っていた。
「おねえちゃん!え?なんで?」
「と、とりあえず降りて救急車呼んで‥」
寝転がったまま召喚