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ショートショート

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記事一覧

かけ違ったボタンの世界【ショートショート SF】

かけ違ったボタンの世界【ショートショート SF】

アラームで目が覚める。
ん!?たしかに8時にかけたはずなのに8時15分を指している。これは急がないと間に合わないぞ。
慌てて着替え駅へ走る。
「いたっ 」
歩行者信号が点滅していたので止まったら後ろから押された。みんなどどっと渡っていく。え、誰も止まらないのか。私も訝しみながらも合わせた。
改札が開いたままになっている。壊れているのかと別の所へ行こうとしたらまた押され、そのまま進むと入れた。
いつ

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睡蓮【ショートショート 恋愛】

睡蓮【ショートショート 恋愛】

「花蓮」
池の睡蓮の花を眺めていたら、小さな声で呼ばれた。
「明日菜。早いのね」
振り返るとプリーツスカートが翻るのにまだ慣れない。
私たちは全寮制の女子校へ入ってまだ半年もたたない。夏休みで帰省している子が多いが、私は家庭環境が複雑なので帰れない。明日菜がなぜ帰らなかったのかは知らない。
池は校舎の裏手にあって、朝の日差しの下静まり返っている。
「花蓮、ちょうちょが」
明日菜が手を伸ばす。私は身

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雨の日とウイスキー【ショートショート】

雨の日とウイスキー【ショートショート】

ごうっと風の吹き付けるような音がした。最近大風が多いから、それが耳に残っていただけかと思った。そのうち土の匂いが運ばれてきて雨なのに気づき、窓を閉めてエアコンをつけた。こんな雨の日はスムースジャズを聴くと、心が穏やかになる気がする。

梅雨明けはしたんだっけ。ぼんやりとニュースで聞いた気がする。昨年もこんなことを言っていた気がすると思い出して、ひとり苦笑いする。
昼から外出しようかと思っていたがど

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大樹【ショートショート 恋愛】

大樹【ショートショート 恋愛】

アールグレイの香りで、自分の調子が分かるようになった。軽ければ快調、重ければ不調。
今朝は重いなと感じながら支度をし家を出た。
その判断はすぐに後悔することになる。

会社はフレックスなので、ラッシュアワーを避けて遅めに出勤している。ラッシュ時なら混雑するホームも、人はまばらだ。そこにぼんやりと立ち、きれいだなと雲を眺めていた後の記憶がない。

目を覚ますと、そこには太った男が汗をふきふき座ってい

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死ぬなって言える?【ショートショート】

死ぬなって言える?【ショートショート】

わかった時には私の腎機能は5割になっていた。
健康診断で、血圧が高いと言われたのがきっかけでわかった。
この病気は家族性のものらしいけど、私の場合突発性だったから、診断がつくのに時間がかかった。
正直、自覚症状なんてないような気がする。言われてみれば疲れやすいような気もするけど。けどもともとの貧血もあるし。あ、貧血も腎臓のせいなのか。

ひとりカウンターバーで飲んでいた。ふらふらと歩いてたどり着い

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夢【ショートショート】

いつものようになんとなく仕事をして帰る。
もうアジサイが開き始めている。まだ今年になったばかりだと思っていたのに。もう少しで今年も半分終わる。

結婚はとうに諦めた。10年前、同期たちの結婚ラッシュのさなか、彼と出会った。私もなんとか20代で結婚できる、と胸を撫で下ろしたものだった。それから3年経ち結婚の2文字を出したが彼はお茶を濁し、更に2年経ち婚活を始めたいと言ったら、転職したいんだ、来年には

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春の雨【ショートショート ファンタジー】

春の雨【ショートショート ファンタジー】

春の雨はさらさらと降る。小雨だから20分傘を差さずにいても、そんなに濡れない。それでも、仕事帰りに濡れながらみみを探すのはまいる。
最近私は目が見えづらく、動くものくらいしか見えなかった。帰宅するともうすでに暗かった。しかし玄関のドアをするっとみみが通り抜けるのは、うっすらと見えた。あれは本気で外へ出たかったのだ。おむかえなんかの時は、玄関でちょこんと待っている。
「みみちゃん、ぬれるから帰ってお

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あの世もこの世も【ショートショート SF】

あの世もこの世も【ショートショート SF】

ある朝出勤すると、私のデスクの上に花の鉢が置いてあった。ピンクの石楠花だった。見事な大輪である。きれいだなあとしばらく眺めた。ところで、それはいいのだが普段私の使っている仕事道具が何もない。パソコンも、資料もない。これはどういうことだろう。
仕事柄出勤時間がまちまちで、朝は人が少ない。しかし同じ課の者は出勤しているはずなので、しばらく待てば誰か来るだろう。椅子に腰をおろしてぼんやりと待つ。
やがて

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はつ恋【ショートショート】

はつ恋【ショートショート】

予報では雨だったのに、きれいに晴れた。さすが
誠也だ。

「皆川さん」
ごみ捨てに行く途中、後ろから声をかけられ振り返った。
「おう、どうした、幸成」
クラスの男子だった。なんだか震えている。
「寒いんじゃない?」
声をかけながら近寄った私の手を取って幸成は言った。
「…あのさ、俺と付き合って」
…え?
「俺、前から皆川さんのこと好きで」
私、幸成のこと好きなのかな?そう問いかけると心臓がとくんと

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逃避行【ショートショート】

逃避行【ショートショート】

来ないで。
そう思いながら駅のベンチで待っていた。
春は来た。けれど風は冷たい。マフラーをきゅっと巻き直す。

今夜十時に、とあなたは言った。
二人で遠い街へ行こうと。
私は静かに頷き、互いに少しだけの荷物を取りに家に戻った。

もうすぐ十時。
来ないで、と祈るような気持ちで時計を見る。

「ごめん遅くなって」
息を弾ませて、いつもの笑顔で来たあなた。
二人の未来を疑わぬあなた。
私も笑顔で応じる

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悔いて【ショートショート】

悔いて【ショートショート】

高校生の頃、仲の良かった友達と口を聞かなくなった。
私は幼稚園に通う頃から「お心が強い」と言われており、自分で言うのもなんだが、我慢強いほうだった。
その子が何をしたのか、何がきっかけで口を聞かなくなったのかは、思い出せない。
そんな些細なことだったが、多分積み重なって嫌になってしまったのだ。
その子はそれからも何度も私に話しかけてきた。
けれど私がそれに応じることはなく、そのまま卒業して、それか

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小牧幸助文学賞 応募作品

①funeral
母の遺体を生前好きだった鉢植えで囲んだ。

②題名:burial
母を炭焼きし、庭の桜の樹のもとに埋めた。

本当はもう少し連作で書くつもりでしたが、仕事が決まったため応募期間に間に合わなくなる可能性を考え、応募させていただきました。

夢の話

夢の話

気づいたら私は囚人になっていた。おかしな房だ。囚人全員が同じ部屋に閉じ込められていた。それぞれに1つずつベッドがあてがわれていた。老若男女、囚人服でなく様々な格好をしていた。食べ物に事欠くことはなかったが、不衛生極まりない部屋だった。
赤いセーターの老女が特に新入りである私の世話を焼いてくれた。食事を運んでくれたり薄汚れたカトラリーをくれたり。
中には少女もいた。名前はメモだった。

その後突然の

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たそがれのお菓子やさん【ファンタジー ショートショート】

たそがれのお菓子やさん【ファンタジー ショートショート】

そのお菓子屋さんは、ときどきやってくる。
ふかふかした三毛猫さんが、お菓子のワゴンを押してくる。三毛猫さんは手足がちっちゃくかわいらしくて、てちてちと歩いてくる。

ワゴンは薄いピンク色で、前面にはステンシルで白い文字がtwilightと書いてある。白いスカラップのお屋根が付いていて、パンチングされてレースみたいになっている。夕日を浴びながら三毛猫さんはてちてちと歩く。

公園に着くと三毛猫さんは

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