材料力学&連続体力学の入門書 #01 〜連続体の定義について〜
今回のトップ画像はイルミネーションで飾られた柱と西洋風の建物をバックに置いた写真です(特に有名どころの建物ではないです)。イルミネーションが点状に連なる様子がまた綺麗ですね。
さて、材料力学(連続体力学)の話に移りましょう。
材料力学または連続体力学で登場する物体は、一般的には「連続体」と呼ばれています。これは物体の扱い方の話になるのですが、質点・剛体・連続体の3系統が存在しており、そのうちのひとつということです。
今回は、この連続体という用語の意味と考え方について学んでいきます。高校レベルの物理学の話も含まれますので、復習も合わせてお読みください。
物体の扱い方の3系統
そもそも何を指して「力学」と呼ぶのでしょうか。まずはその話から。
ある物体が力を受けると何かしら運動を始めます(静止状態も含みます)。その過程について詳細に考える学問を「力学」と言います。堅苦しく表現するならば「物質の運動およびその運動をひきおこす力を研究する」ということなのです。
そして、力学の世界では、物体の扱い方を下記の3系統に分類しています。
(1)質量だけを持つ仮想的な物体 =【質点】
(2)質量と大きさ(形状)を持つ物体 =【剛体】
(3)質量が連続的に分布する物体 =【連続体】
高校レベルの物理学では、質点と剛体の2系統を主に扱います。まずは質点から見てみましょう。
質点・剛体の力学
高校レベルの物理学の話を例に出してみます。質点が斜面を滑り落ちる場合について。こんな感覚で考えたりしたかと思います。
質点は物体の質量のみを考えます(物体の形状は考えません)。つまり、物体を点として考えるのです。上図では箱状の物体を描いていますが、形は別に箱状でも球状でも構わないということ。そして、形は無視して物体の中心位置(厳密には重心位置)に作用する力を書き記します。
次に剛体について。剛体は物体の質量と形状の2つを考えます。ここで登場するのが「モーメント」という考え方です。質点は並進運動だけでしたが、剛体は並進運動と回転運動のふたつを考えます。
例えば、下図の糸に繋がれた剛体棒について。点Aには反力が生じていますが、その力を求めるときに「力のつり合い」と「モーメントのつり合い」を考えます。登場人物としては、糸の張力、剛体棒の重力、そして点Aの反力ですね。余力のある人は、実際につり合いの方程式を立ててみましょう。
ここまで話した内容が、高校レベルの物理学で学習した範囲になると思います。
連続体の力学
では、本題の連続体について。連続体も物体の質量と形状を考えますが、剛体との決定的な差として「変形」を考慮するという点があります。
つまり、質点・剛体・連続体の3系統を整理すると、下記のようになります。
(1)物体の位置の変化 =【直線】
(2)物体の姿勢の変化 =【回転】
(3)物体の形状の変化 =【変形】
質点は直線運動のみ扱うことができ、剛体は直線運動と回転運動を扱うことができます。そして、連続体はこれらに加えて変形を扱うことになります。
まえがきで書いた通り、材料力学(連続体力学)は物体の変形について論じる学問です。つまり、自ずと物体は連続体であることが前提になります。
逆に言えば、高校レベルで扱う質点や剛体は、物体の変形を無視した理想状態と言えます。ただ、現実ではそう考えても差し支えない場面も多いので、状況に応じてどこまで厳密に考えるかを見極めることが大切です。
連続体のイメージは、質点が隙間無く敷き詰められた状態です。この考え方は高校数学で習う積分の概念と相性が良くて、材料力学(連続体力学)では積分計算が度々登場します。それ故に、大学レベルの教科として位置付けられているのです。
おわりに
今回は材料力学(連続体力学)を学習する上で重要な概念である「連続体」について説明しました。
連続体が相手になると手計算では立ち行かないこともあるので、一般的にはコンピューターシミュレーションに任せることが多いです。まさに私が現在進行形で従事している内容です。
ただ、今回を含めた基本原理を知らないでシミュレーションに任せるか、理解した上で任せるかでは雲泥の差があると思います。今回のマガジンも、まずは基本的な力学の話から始めていこうと思うので、ぜひお付き合い頂けたら幸いです。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。実際は非定期ですが、毎日更新する気持ちで取り組んでいます。あなたの人生の新たな1ページに添えるように頑張ります。何卒よろしくお願いいたします。
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