my select50 vol.22「Flower Viewing」
my select50 の第22回目は「Flower Viewing」
今回は花見。この投稿が4月の中旬。まさに桜がちょうど終わった季節。
四季が豊かな日本は、その季節に応じた草花が鑑賞ができます。
特に、寒い冬を越え、徐々に暖かくなり、日照時間が長くなっていく春
一斉に、花が咲き始めます。
花見といえば、3月から4月。梅や桃なども最高ですが、日本人が愛してやまないのが「桜」ではないでしょうか。
桜をここでオススメするのも変ですが、春の季節を「桜」を中心に据えて楽しむのも乙なもの。
オススメスポットなども含めて紹介していきます。
日本人はいつから桜を好きになったのでしょうか。文学の視点からでもかなり古くから和歌で桜が試まれています。
代表的なのを三首ほど。
「見渡せば 春日の野辺に 霞たち 咲きにほへるは 桜花かも」
万葉集/詠み人知らず
この歌は万葉集らしく写実的で素朴でまっすぐ。いい歌です。
万葉集は7世紀後半くらいからの編纂とされているので、奈良時代には桜がすでに愛され、歌に詠まれていたことになります。
「世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし」
在原業平
有名な一首ですね。貴公子で元祖シティボーイの業平。プレイボーイでもあるかな。9世紀の公家です。個人的にも大好きな人物
歌の意味は、「世の中に桜がな加ったら、春を過ごす人の心はどれだけのどかなだろうか。」というもの。
桜があるが故に、桜に思い煩うことの億劫さを歌っています。発想が天才ですよね。業平の歌は、いい意味での「不安定で繊細な情緒」があります。
「春風の 花を散らすと 見る夢は さめても胸の さわぐなりけり」
山家集/西行。
桜と月の歌人とも言われる西行の作です。日本人が桜好きになった遠因の一つではないかと言われるほど桜を愛し、たくさんの歌に想いを託した天才歌人の西行
西行が詠んだ有名な桜の歌はもっとありますが、私はこの一首を選びます。これは、危ない恋の歌でもあるんですね。
歌の意味は、正直に見ると「春風が、命の短い桜の花を散らすさまを思い浮かべると胸がさわぐ・・・」というような感じです。
しかし、この「花を散らす」と「胸騒ぎ」には、西行の出家を決意した原因の一つと言われる「先恋」に通じるといった解釈があるとされています。
花が散るは「失恋」を意味する時もあります。
失恋を夢で見て想い出し、胸騒ぎする。よほど悔しい恋だったのでしょう笑
西行の恋。これが普通の恋愛ではない。
自分ではどうしようもない存在の女性に横恋慕をする「命がけの恋」とも言えるものでした。
西行は、本当に趣深い人物です。ただの歌人だと思ったら大間違い。
大悪党です。
これとは別の回で「西行」をテーマにご紹介しようと思います。
これから、画像を中心に桜のお気にいりスポットをご紹介
横浜だと大岡川沿いや根岸森林公園の桜などが有名です。
今住んでいる大磯は、山もあるので、高麗山の桜などでしょうか
大磯に住んだので小田原が近くなりました。そこで気づいたのが、小田原の桜が凄いということ。いくつも桜の名所があります。
まず、その筆頭格が「小田原城址公園」の桜ではないでしょうか。お堀沿いに並ぶ桜が圧巻です。
お城に咲く桜なので、桜見学以外にも歴史探訪や、海産物の美味しい小田原観光がてら見れるのも嬉しい。
小田原城は、今やっている大河ドラマ「どうする家康」でも出てくるであろう北条氏の5代にわたる居城です。
その後、豊臣秀吉の討伐により北条氏は関東の覇者の地位を追われ、その後は、大久保氏や稲葉氏など江戸時代の小田原藩の城として幕末まで続きます。
北条氏の時代は石垣づくりではなく土塁だったので、今の姿は江戸時代のお城の名残です。
小田原の旧武家屋敷通り「西海子小路」の桜です。まさに桜並木ですね。
この通りは小田原藩時代は上級武士の屋敷町で、その後の明治から昭和にかけて北原白秋に谷崎潤一郎、北村透谷、川崎長太郎に尾崎一雄といった文学者達が住んでいた由緒あるエリアらしい。
今でも立派な御屋敷町の風格があります。
小田原駅から歩くと15分くらいかかりますが、途中に小田原城もあるので、桜見学の人で賑わっていました。
小田原といえば明治から昭和の実業家達が暮らした土地としても有名。
ここは、松永安左エ門の邸宅跡「松永記念館」です。様々な事業を手掛けましたが特に電力事業で名を上げ「電力の鬼」の異名を持っていました。
晩年は茶の湯に精通し「耳庵」の号で、小田原に拠点を構え、美術品の蒐集などにも力を入れました。この邸宅も数寄屋造の建物に茶室をそなえた立派なものです。
桜も良いですが、秋の紅葉も素晴らしいので、秋にも訪れてみてください。
松永耳庵など多くの実業家茶人が住んでいた小田原
茶人の町らしく桜の季節に合わせていたるところで呈茶会が開催されていました。
私は松永記念館と、西海子小路にある明治の政治家・松本剛吉の邸宅跡でお菓子とお抹茶をいただきました。
桜にお抹茶もある小田原
良いですねぇ
この桜、すごくないですか。長興山紹太寺のしだれ桜です。
江戸時代の藩主、稲葉正則が植えたといわれる、樹齢約350年、高さ約13m、株元周囲約4.7mの大木
心霊かもののけが出てきそうです笑
しだれ桜は、小田原市の入生田にあります。小田原市の郊外で、箱根湯本と小田原の境の場所にある。
この桜を見に行く時は、小田原観光より箱根での湯治を兼ねて行ってもいいかもしれません。
長興山紹太寺は関東では珍しい黄檗宗の寺院
黄檗宗は、いわゆる禅宗です。禅宗だと臨済宗や曹洞宗が有名ですが、中国僧「隠元隆琦(いんげんりゅうき)禅師」によって開創された黄檗宗も加えて禅宗は日本に三宗あります。
紹太寺の開山は、京都宇治の黄檗宗総本山萬福寺で隠元禅師のもと修行に励んでいた名僧「鉄牛和尚」
当時の堂塔はしだれ桜の近くにあったらしいのですが、火事で焼失し、山から下った今の麓に移ったそう。
しだれ桜までは、紹太寺から石畳のある坂を少し登ります。
是非一度見ていただきたいしだれ桜です。
以上、桜づくしの記事でした。
読み返すと小田原の観光大使のようですが、あくまで「春の桜」をオススメするのが本旨です笑
桜の季節は、私はとにかく落ち着がありません。
時には、一度見に行っても、「明日の方が良いかも。」などと気になり、何度も行ってしまうこともある。
桜がなければ、もう少しじっとしていられる。
まさに、冒頭の在原業平の歌「世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし」と同じ心境です。
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※松永記念館に行った日は晴天で、シャツ一枚でも大丈夫な陽気でした。ニット帽に太いデニムのストリートファションです。
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