ロシアからの日記。 第3話。 ロシアへの経済制裁は私の家計や生活にどんな影響を与えますか
ロシアのウクライナ侵攻の始まりから3ヶ月も経ちました。戦争の初期は、合衆国、欧州連合とその味方国は前代未聞の経済制裁を科して、多くの国際会社は相次いで自分の営業活動の中止を発表しました。それに従って、これからロシアでの経済状態はどうなるかについて色々なパニック的な世論が広がっていました。
それに比べて、私が常に消費するマスコミでの専門家達の推測や予想はもっとドライでした。それによると、ロシアの経済はすぐ倒れるはずがなくて、こんな非常状況の中でも、何とか操業を続くだろうが、全体的に深い悪化は必然で、経済の未来は前途多難だ、と言う結論が出ました。つまり経済制裁の影響が出るまで、時間がかかって、その時間の長さは経済のセクターによって異なるが、一般人の多くはその影響を数ヶ月(3~6ヶ月ぐらい)後、体験し始めるだろう、と多くの専門家達が言いました。
そして3ヶ月も経ちました。。。一般人の立場から見られる経済状態はどうですか? 又、私の一般人としての家計や生活は制裁によってどうやって変わりましたか?
この質問に答える前に、思い出させたいことがあります。この日記を書く時、私が沿っている原理は「自分と自分に近い周囲の実験だけからすれば、書くこと」です (なぜかと言うと、私なしでも、総合して結論を出すいい専門家達が十分あるからです)。私はモスクワに住んでいる中所得者の代表で、私の周囲の人達の多くも同じです。なので私が描写している個人的な経験はロシアでの総合的な状態からある程度違うでしょう。それを覚えておいて、読んでください。
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では、戦争が始まったすぐ後、ドルの急激な上がりに伴って、全ての値段もすごく上がりました (特に車、家電製品と紙の値上がりが目立って、50~100%の上がりを達しました)。私が常に買う日常商品の中に価格が一番上がったものは、主に外国から輸入されている衛生用品、化粧品と家庭用化学製品です (例えば、Pampersのようなおむつと洗濯洗剤の全種類は約50%ぐらい値上がりしました)。それに比べて、国産の肉、パスタ、穀物食品、乳製品などの日用食品は約10~20%ぐらい値上がりしました。しばらく経ってから、値上がりの影響を緩和するため、多くのスーパーは低所得者向けに国産食品の割引プロモーションを行い続けました (戦争の初期はそのようなプロモーションが大分縮小されました)。例えば、私の家に一番近い 「Дикси (ディクシー)」というコンビニでは、そんなプロモーションが沢山あって、値引きされた食品だけ買う場合は、消費は戦前のレベルに近づきす。
上記はルーブルが暴落した頃の状態です。今、ルーブルが非常に強化した後、どうやって状況が変わりましたか?私がよく買っているBelle Vueと言うクリーク•ランビックは家の近くのコンビニに戦前109ルーブルかかりましたが、経済制裁が科された後、その値段は159ルーブルまで上がって、先週また109ルーブルの価格に戻りました 。でもそれは例外です。概ねは、輸入された商品の値段はちょっと下がったが、戦前のレベルに達しませんでした。国産の商品の値段に関する状態もそれに似ています。大まかに言えば、現在、小売店が設定した値段は直戦前と今年3月のレベルの平均だ、と気がします。
そしてルーブルの強化に関係なく、喫茶店、タクシー、医療サービスと美容サービスでの値段は、自分の家族の実験からすれば、2月の終わりから約20~30%に上昇して、そのレベルで保たれています。売り場から消えたブランドも沢山あります。
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私は今、育児休暇中で、家計は夫の収入に依存しています。多くのロシア住民と同じく、夫の名目所得は2014年から変わりませんでしたが、実質所得はインフレの故にどんどん減ってきました。それはクリミアの併合に従った経済制裁の直接影響に違いありません。だからこの戦争が始まって、ロシアに対して強い制裁が科されて、その所得は更に減るでしょう、と私が思いました。でも今のところ、それはまだ起こっていません。私の親戚、友達と中のいい知り合いの間に誰も仕事を失わなくて、収入も主に戦前のままです (逆に収入がちょっと増えたIT専門家がいます)。勿論、欧米からのテクノロジーと部品に依存する分野で働いている知り合いの間にある程度の不安があるが、今のところ、彼方が働いている会社は何とか操業しています。
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そこでモスクワに住んでいる中所得者の一般人が見ている経済景色は何ですか? ルーブルが強化しました。 戦争の初期はインフレが非常に増したが、今はほとんどの値上がりが一応止まって、あるカテゴリーの商品はちょっと値下がりしました。全面失業は見られていません。そして国の経済がまだ暴落しませんでした。プロパガンダも経済状況が良くなっていくと言う印象を作っています。
そんな背景で人達は戦争に経済的に慣れていくような気がします。2014年からは、制裁と経済危機に従ったインフレに対抗するため、節約癖を付けた人達の数がどんどん増えてきて (私もその人達の一人です)、今の危機にもその癖に頼って、何とか耐えると思う人達の割合は大きいでしょう。少なくとも、その結論は中所得者層に妥当だ、と思っています。
貧困層についてあらゆる意見があります。一方では、どんな経済危機であっても、その影響を一番感じるのは低所得者層だ、と言う見地は合理的です。他の一方では、近年ロシアの政府は低所得者 (特に子供を育てている低所得家族) を支援するため、色々な措置を講じて (その措置は貧困そのものの問題を解決しなかったが、低所得者の家計を随分助けています)、そのグループは支持を受けるようになりました。例えば、2020年から3〜7歳の子供を育てている低所得家族は毎月子供一人当たり子供の生活賃金の50~100%を取得できるようになって、今年4月は8~17歳の子供を育てている低所得家族も同じ補助金を受けられるようになりました。又、低所得者の多くは戦争の前にも旅行するのができなくて、欧米ブランド品を買うこともできなくて、今の状況でそのグループの生活は大きく変わりませんでした。だから低所得者の一部は他の人達も同じ状況に陥ったのは公平だと思って、経済制裁を歓迎している、と言うシニカルな意見もあります (でも、そのような考え方の人達はいても、沢山じゃないと思っています)。
とにかく、今のところ経済制裁はロシアで集団抗議を起こすはずがないでしょう。主戦論者の一部は「正義は我にあり、経済制裁はこの正義を守るためのコストだ。戦争に勝って、危機をきっと乗り越える。制裁を切っ掛けにして、ロシアは自分の経済を強化させる。又、欧米の住民は制裁の被害を私達より深く受けている」、と言う意見を持っています。反戦論者の間に「経済制裁の直接被害者は普通の一般人であっても、他の国々は制裁を科していることは正しい。戦争を終わらせる他の方法がなくて、私達が我慢しなければならない」、と思っている人が沢山います。そのグループに入る人はよく経済制裁について「Чем хуже, тем лучше (チェム•フージェ•テム•ルーチシェ/ 悪ければ悪いほどいい)」、と思っています。簡潔に言えば、主戦論者も、反戦論者も経済制裁を正義を守るためのコストとして見ています。戦争について明確な意見を持っていない人達は経済制裁の故に不安と不満を感じているでしょうが、きっと何の抗議をしないでしょう。
でもロシア対しての経済制裁の目的は、ロシアで抗議を起こすことじゃなくて、戦争に費やされるリソースの流れを遮断することです。その目的が果たされるまで時間がかかります。時間の流れに止むを得ず経済状態が変わって、ロシア人の意見も変わる可能性があります。
P.S. 経済制裁の本当のインパクトをロシア住民は今年の秋に実感するだろう、と言う意見が最近広がっています。その意見が正しいかどうか、諺にもある通り「Поживём ー увидим (ポジヴョーム•ウヴーディム/ 暮らせば分かります)」 (その諺はロシアにすごく人気です)。