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エアレーションの視えない効果?気にするべきは魚の密度!

育てるを育てる。AQSimです。

水棲生物を飼育するときのおとも、エアレーション。

水槽内にブクブク泡を吹かせるエアレーションの目的が何かと聞かれたら、「魚に酸素を供給するため」と誰でも答えられるはず。

しかし皆さん、視えてますか?
酸素がどうやって供給されているか。エアレーションが他にも果たしている役割とは何か。さらには、適切なエアレーションの量について。

本記事では、実は視えていなかったかもしれないエアレーションのアレコレをお伝えしましょう。


密度を大きくするならエアレーションが必要

「エアレーション:aeration」について。
デジタル大辞泉では以下のように定義されています。

空気にさらすこと。空気を通すこと。特に、を飼う池や水槽などで、水中空気を溶かしこむこと。下水処理場合曝気(ばっき)ともいう。気曝(きばく)。

デジタル大辞泉

つまり水中に空気を溶かしこむこと自体をエアレーションと言います。ただ、それを行うための機器類などについても慣例的にエアレーションと呼んだり、ブクブクと呼ぶことがありますね。

陸上養殖やアクアリウムで閉鎖的に飼育環境を作る場合には、エアレーションが必須といってよいでしょう。なぜならば、魚の酸欠を防ぎたいから。弱い魚やケガをした魚が少しずつ落ちていくことと比べて、酸欠は水槽内の魚すべてが死亡してしまう恐れのある大きな問題なのです。

魚は水中に溶け込んだ酸素をエラから吸収する形で呼吸をしています。
酸素が足りなくなれば窒息してしまうのは人間と同じ。

水槽の大きさに対して少ない数の魚しか飼育しないのであれば、酸欠は起こりにくい。けれども、とくに陸上養殖では生産量を上げるために魚の密度を大きくするのが普通です。そうなるとエアレーションが無いと酸素供給が追い付かなくなるのです。

これが閉鎖的な環境ではエアレーションを切らしてはいけないと言われる主な理由です。
重要なのは、環境が閉鎖的か否かではなく、魚の密度に対して酸素供給が追い付くかどうかということです。

というのも、人工的にエアレーションをしなくても、酸素は水に取込まれています。水面で空気中の酸素が溶け込むためです(自然のガス交換)。自然界の魚はエアレーション無しでも呼吸できていますよね。海や川では広大な面積でガス交換が行われるので、基本的にエアレーション無しでも酸欠にならないのです。

*基本的に、と述べたのは自然界でも酸欠が起こり得るから。最近は魚の大量へい死のニュースが珍しいものでは無くなってきました。その原因は酸欠による窒息だとするケースも多いです。急激な水温上昇によって溶存酸素が減ってしまうとか、微生物の急増により酸素を奪われてしまうことで自然界でも酸欠に至ることがあります。
魚の大量死が世界の川や海で頻発 なぜ窒息してしまうのか? | ナショナル ジオグラフィック日本版サイト (nikkeibp.co.jp)

ブクブクが酸素を溶かす仕組み

ここまで繰り返してきた通り、魚が利用できるのは水中に「溶け込んだ」酸素。魚はエアレーションでブクブク出ている泡自体を利用しているわけではないということです。

では、なぜ気泡をつくるのでしょうか?

気泡の方が酸素供給に良い理由は、3つのメカニズムで説明できます。

1.     気泡を通じた酸素の溶解:もっともシンプルなのが、気泡自体が水中に酸素を直接供給するということ。気泡が水中を浮上するときに、空気中の酸素が水中に溶け込みます。水面での自然なガス交換よりも、泡の表面積が広いため酸素供給を効率的に行えるのです。

2.     表面積の増加による効率的な酸素吸収: 気泡の発生で、水と空気が接触する総表面積が増えます。またエアレーションにより水面が揺らされることも自然のガス交換量を増やす役割を果たしているのです。

3.     水の攪拌効果: 自然のガス交換だけではどうしても水中の酸素濃度は水面近くが濃く、底面近くは薄くなってしまいます。気泡の浮上によって水中に流れを起すことで、水槽内の酸素濃度を均一化するという役割も担っているのです。

気泡をつくることで「溶け込む」酸素が増える、というのがエアレーションの仕組みです。最近は、さらなる酸素供給の効率化を目指してマイクロバブル、ナノバブルといった、より粒の小さな気泡をつくる技術開発が進んでいます。

自分の飼育魚に必要な酸素供給量を調べよう

ではエアレーションの量を増やしまくれば際限なく魚の密度を高められるのか?

それはNOです。魚が取込むのは水に溶けている酸素です。水に溶け込ませることができる酸素濃度には限界があります。そして魚の密度を極端に高めることは酸欠以外にも有害物質やストレスの増加により病気の発生リスクを高めてしまいます。

だから魚を健康に大きく育てること、魚の数を確保すること、そのバランスが取れるラインを設計しなければなりません。必要な酸素供給の目安はどうやって調べるのでしょうか?どうやって判断すればいいのでしょうか?

例のごとく、必要な酸素濃度は魚種によっても異なりますし、成長段階によっても適切な量が変わってくると言います。したがって詳細な情報をさがすのであれば、その魚種・成長段階について述べた情報源を調べなければなりません。

Elicit: The AI Research Assistantという論文検索サイトがきっかけになるでしょう。

英語で知りたい情報を質問することで、その質問の回答になるような論文をピックアップしてくれるとともに、おおまかな要約を示してくれます。

『「魚の名前×成長段階」における必要な酸素濃度』
➡"The oxygen concentration required for [growth stage][fish name]" で入力してみます。

例えば、ニジマスの成魚で調べてみました。画像のように重要な酸素濃度が7mg/Lということ見えてきます。それがどんな研究で述べられたことなのか?といったことも併せて示してくれます。

ただし、あくまでもAIが見つけてきた情報ですので、より厳密で正確な情報が必要な場合は情報源の論文をあたってみてください。自分が扱う魚にも適用して問題無いかどうかは熟慮することをオススメします。

こうして必要な酸素濃度を理解することで、エアレーション装置のカタログスペックをもとに必要数を決めていくことができます。

エアレーションを止めるな!

もう一つ、抑えておくべきポイントがあります。
それは、水中の酸素を利用しているのは魚だけではないということ。

魚がいないときでも酸素供給を止めるべきではないのです。

水中には様々な微生物が存在しているからです。

とくに濾過槽には生物ろ過をしてくれる有益な微生物を住まわせることがあります。魚がいなくなった水槽だからと言って、酸素供給を停止してしまうと、濾過槽の微生物が死んでしまいます。ろ過能力の育った濾過槽の機能が失われてしまうため、短期間であれば魚が入っていなくてもエアレーションは続けておく方が良いです。間接的ですが、これも魚を生かすための酸素供給なのです。

まとめ

本記事で再確認してほしいこと
①エアレーションを切らさないように注意!
②魚種や成長段階により適切なエアレーション量を!
③濾過槽の微生物にも酸素が必要!

でした。このほかにも、エアレーションにまつわる話は様々あるかと思います。よければ本記事のコメント欄で教えてください!

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