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水温を下げるクーラーの仕組み~冷媒ガスは旅をする

育てるを育てる。AQSimです。

暑い季節。

クーラーが効いた部屋に入ると生き返る心地がします。

魚だって同じです。

気温が高くなれば水槽内の水温も上がっていってしまいます。水温の解説記事で説明したように、魚にとって水温がよき範囲で保たれることは超重要。だからこそ、アクアリウムや陸上養殖では大きな電気代を費やしてヒーターやクーラーで水温を維持する必要があるのでした。

では、ここでみなさんに伺いたい。

電気を使って、なぜ水温を下げることができるのか説明できますか?
魚種によっては必須といってもよい機材なのに、ブラックボックス化していませんか?

中身を見てすべての仕掛けを説明できるとまではいかずとも、なんとなく箱の中で何が起こっているかくらいは知っておきたいところ。

本記事では、実は知らなかった水温クーラーの仕組みをザックリと、一緒に覗いていきましょう。


今回扱うクーラーのタイプ


前提として、水温クーラーには大きく2つのタイプがあります。

・ペルチェ式
かなり小型の水槽に使えるコスパの良いクーラー

・チラー式
高値だが大型の水槽にも使うことができるクーラー

本記事では陸上養殖や大型のアクアリウムのように大きなサイズの水槽を使う場合を想定しようと思いますので、「チラー式」の仕組みについて解説します。こちらの仕組みはエアコンのクーラーにも通じるようです!

水温を下げているのは冷媒ガス

クーラーの中で水温を下げている主役は「冷媒ガス」と呼ばれるものです。

「冷媒ガス」といっても、その物質名はクロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン…と様々。
いわゆるフロンガスと呼ばれる物質群が冷蔵庫などに使われていたので有名ですね。

近年ではフロンガスがオゾン層の破壊につながってしまうということで、オゾン層への影響が少ない物質を「冷媒ガス」として用いることが増えています。

色々な物質を「冷媒ガス」と呼ぶのであれば、
一体「冷媒ガス」の特徴とは何でしょう?

その代表的な特性は熱交換能力が高いことです。
言い換えれば、周りのものを冷やしたり温めたりする力が強いのです。
そんな特性は液体⇄気体の状態変化が起こりやすいことに起因します。

液体が蒸発して気体になるとき、
周りから熱を奪う=周りを冷やします。

逆に、気体が凝縮して液体になるとき、
周りに熱を放出=周りを温めます。

液体⇄気体の状態変化が起こりやすければ…?
周りを冷やす時に水槽の水から熱を奪い、奪った熱を水槽の外に放出させるというサイクルを起こしやすいのです。これが水温クーラーの仕組みに大きく関わってきます…。

冷媒ガスが旅をする

では水温クーラーの中で、どんなことが行われているのか?
簡単に言えば、「冷媒ガス」を気体から液体に、液体から気体にするサイクルを、電気を使ってぐるぐるぐるぐる繰り返しているのです。

とりあえずサイクルが回っているんだなぁ~という理解をしてもらえば大丈夫です。ここから、サイクルを大雑把に4つに分けて1つずつ追っていきましょう。

①冷媒ガスを圧縮

冷媒ガスは、コンプレッサーと呼ばれる装置によって、ぎゅ~っと圧縮されます。圧縮されることでガスは高温高圧な状態に。この圧縮が、次の過程で効率的に熱を放出する準備になります。

②気体→液体に凝縮

コンデンサーと呼ばれる装置により、圧力を維持しながら外に熱エネルギーを放出します。熱の放出には、ファンを回して空気に熱をのせて逃がすタイプ(エアコンはこっち)と、冷却水によって熱を逃がすタイプ(大規模な冷却システムはこっち)があります。
この過程で冷媒ガスが気体から液体に状態変化。熱エネルギーを効果的に放出します。

こうして冷媒ガスから熱を奪っておくことで、水槽の水を冷ますエネルギーの余白を作っていると理解できます。

③冷媒の膨張

コンデンサーによって液体にされた冷媒は、膨張弁という装置を通されます。通り道をせばめて、ひろげると、冷媒の圧力が急激に低下することで液体は一部が気化、温度も下がります。これでいよいよ水を冷やす準備が整います。

④水槽の水から熱を吸収!

低温・低圧のガスと液体が混在した状態になった冷媒は、エバポレーターという装置に入ります。エバポレーター内では冷媒が周囲から熱を吸収し、低圧な冷媒ガスの状態に完全に移行します。残っていた液体を蒸発させることでたくさんの熱を吸収できます。

熱を吸収する相手というのが、そう。水槽の水ですね。

冷媒ガスの旅路

改めてサイクルを見てみましょう。

冷媒ガスの熱交換能力の高さが水槽の水を冷やし続けるサイクルを可能にしていることがわかりましたね。コンプレッサーなどの装置を駆動したり、水槽の水をポンプで吸い上げたりするために電気が使われているのです。

こうしてみると、1台のクーラーが冷やすことのできる水温に限界があることもわかりますね。冷媒ガスが液体から気体に変わる温度よりも低くは下げられない。冷媒ガスが冷やすよりも多く外気などから熱を吸収してしまえば水温が下がりにくい。だからこそ、クーラーのカタログスペックを見て必要な分の設備を整えることが重要なのでした。

まとめ

本記事では水温クーラーの仕組みをザックリと覗いてみました。
①水を冷やしているのは「冷媒ガス」
②冷媒ガスを状態変化させる装置を電気で駆動している

このほかにも、水温クーラーにまつわる話は様々あるかと思います。
よければ本記事のコメント欄で教えてください!

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