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映画感想|ルックバック

先日、神奈川県某所に出かけた帰り、通過駅の川崎で『ルックバック』を観てきました。


私が映画館で観賞したアニメといえば最近では『鬼滅の刃』です。その前が『スチームボーイ』『もののけ姫』なので、アニメーションの流行りには恐ろしく疎い。

『ルックバック』に関しては、あまり内容も知らないままに、「なにか描いている人の話」ということで興味を持ちました。

上映時間が普通の映画の半分くらい(58分)なので、じっと座っていることが苦手な私にぴったり、と思ったこともきっかけの一つです。

加えてネットの口コミを読むと非常に評価が高く『全てのクリエーターに※ 刺さる』と書かれていて、昔からものづくりが好きな者としてはこの誘い文句が決め手となりました。


※刺さるとは……肯定的な意味で「感動する」「共感できる」の意。


来場者特典。
A4の原画シート二枚。
切るとポストカードになる。


6月末に公開された映画ですが、小さめのシアターとはいえ、席はほぼ埋まっている盛況ぶりで、私は二人組の若い男性の隣に座りました。
すると隣の男性が本編に入る直前、「俺、泣くかも」と言い出します。私は前情報なしに観に来たので

「この映画って、そういう感じなん?」

と彼の上着の裾を軽く引っ張り、上目遣いで訊ねました。(妄想・可愛い彼女ごっこです)

そうして慌てて手元にタオルハンカチを準備したのでした。
最近、どうにも涙脆いのです。



『ルックバック』

あらすじは以下です。

学年新聞で4コマ漫画を連載している小学4年生の藤野。
クラスメートから絶賛され、自分の画力に絶対の自信を持つ藤野だったが、ある日の学年新聞に初めて掲載された不登校の同級生・京本の4コマ漫画を目にし、その画力の高さに驚愕する。
以来、脇目も振らず、ひたすら漫画を描き続けた藤野だったが、一向に縮まらない京本との画力差に打ちひしがれ、漫画を描くことを諦めてしまう。

しかし、小学校卒業の日、教師に頼まれて京本に卒業証書を届けに行った藤野は、そこで初めて対面した京本から「ずっとファンだった」と告げられる。

漫画を描くことを諦めるきっかけとなった京本と、今度は一緒に漫画を描き始めた藤野。
二人の少女をつないだのは、漫画へのひたむきな思いだった。
しかしある日、すべてを打ち砕く事件が起きる…。

ルックバック公式ホームページ、
STORYより引用。


ここからは映画観賞後に私が感じたことを書きます。一点集中形の感想です。
(ほぼネタバレなしです)

まずは口コミにあったように、この映画が「刺さったか」と問われれば「しっかり刺さりました!」と答えます。

「クリエーター」という肩書きがなくても、趣味で好きなものを追いかける人、そういう身近な人をただ見つめている人にも刺さる映画ではないかなと思います。

劇中、
『ひたむきに描くことに向き合う背中』
『ひたすら好きなことに打ち込む背中』
が何度も描かれます。

夢中になって過ぎていく時間は楽しくて嬉しくて、そして苦しくて……。



この映画を見終わって、私はどの立場の人物に自分を重ねて観たのだろうと考えました。

少なくとも、ひたすら高い目標に向かって漫画だけに何年も費やす主人公の藤野や京本ではなかったように思います。
こんなに突き抜けて何かに取り組んだことはないし、寝る間も惜しんでときに苦しみもがいて何かを生み出した経験がないからです。

だからといって、この二人のやることを否定的な目で見る人物でもない。それならば一体誰なのか。具体的に思いつかないのに、この映画が私に刺さった理由はなんだろう。


私はこの映画を観ている間、最初から最後まで目を潤ませていました。(最後は堪えきれず涙……でしたが)
終始胸を熱くするものがあり、その感覚には覚えがありました。



作品を生み出す喜びと苦しみが交差する地点にいて、遠巻きに見ている者すら苦しくさせるのに、その情熱を纏った姿が何にも変え難く美しい……。そんな人を私は知っているのです。


『生みの苦しみ』


ルックバックは、このことが描かれている映画でした。
「生みの苦しみ」とはまさに、命をかけてものを生み出す人だけが知る苦しみであり、輝きです。

そこで私が思い出したのは〝推し〟の存在と、学生時代に抱いていた自分自身の感情でした。


憧れのアーティストがアルバム一枚を作るのに、ときに地獄の苦しみを味わい、仲間内で衝突し合いながら命を削って作品を世に放つ。
そんな背景が語られるインタビュー記事を前のめりで読み漁った中高生時代を思い出しました。

苦しみもがいて生まれた作品(アルバム)を、作った本人たちは自画自賛するどころか当分聞ける心境にないと言う。
「遺書のつもりで書いた」曲がのちのち彼らの代名詞のような曲に昇華していく。

このような情熱を持って生きている人、『生みの苦しみ』を味わうことのできる人達に、強烈に憧れを抱きながら私は大人になったのです。


成功者に見える人達が、神経を研ぎ澄ませ、はたまた感情を昂らせながら、だけどそれはそれは地道に、人目につかないところで努力を重ねている、そんな一端がこの映画には言葉少なに描かれていました。



理解も経験も及ばないけれど、一心不乱に漫画の道を極めようとする藤野と京本のひたむきさに、私は心の底から羨まさと眩しさを感じました。

この映画にはわかりやすいテーマ(メッセージ)がいくつかあり、それぞれ独立して見どころになっていたと思います。

だけどやっぱり、何と言っても最後がいい。

どんな運命にあっても「このことを突き詰めていく」「これしか道はなかった」という覚悟が全身に染み渡ったような背中が描かれたラストがなんとも良かったのです。

好きで好きで、苦しいのにそれでもやめられなくて。そこに理由を求めても明確な解はなくて。そのことがまた自分を苦しめることもあるけれど、結局は……そうまでしても……

そうなんだよなあ~~

というラストです。


感じてください。


もう一度観たいです。

その前にno+e内の『ルックバック』感想記事を読み漁ります。





#映画感想
#ルックバック


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