マガジンのカバー画像

#シロクマ文芸部

60
小牧幸助様が企画されている「シロクマ文芸部」への参加作品を纏めます。 お題によってエッセイ、ショートショートなど。
運営しているクリエイター

#短編小説

掌編小説|アムール・デュ・ショコラ|シロクマ文芸部

 甘いものが流れてきたら、それ食べて帰ろうな。それで、いいよな。  返事はない。今日はず…

青豆ノノ
5日前
124

掌編小説|アングラ歌謡祭|シロクマ文芸部

 母親の遺品から古いカセットテープを見つけた。 「これ、どっちが曲名?」  手書きで書かれ…

青豆ノノ
13日前
128

掌編小説|投げ星|シロクマ文芸部

 星が降る先はきまってぼくんちの庭だった。  チエ姉ちゃんとあの海の家で過ごした夏、ぼく…

青豆ノノ
3週間前
153

中年ラブ・ストーリー

「冬の夜、寒空の下で団子なんて、と思ったでしょう」  学者の城田さんは人差し指で鼻の下を…

青豆ノノ
2か月前
121

掌編小説|サンプル4|シロクマ文芸部

 マフラーに顔を埋めた。ぎゅうっと圧をかけ、呼吸する。そうしてまた場所を変えては顔を押し…

青豆ノノ
2か月前
119

掌編小説|北風と月|シロクマ文芸部

 北風と北風が交差する、そんな不思議な街の一角にミチルは立っていた。  北風が吹くと、ミ…

青豆ノノ
2か月前
140

掌編小説|聖人のこと|シロクマ文芸部

 十二月になると聖人が来る。馬小屋を持つ裕福な家を狙ってやってくる小汚い中年だ。  聖人は今でこそ貧しい身なりをしているけれど昔は画商の真似事なんかしていたらしい。真似事だから、もちろん本物ではない。  だけど聖人は絵が上手い。  毎年馬小屋にやってきて絵を見せてくれる。  見せてくれるというか、本人としては買ってもらいたいみたいだけど、あまり欲しがる人はいない。だけど聖人の絵は下手というわけでもなくそれなりだから、一応、家のものは馬小屋に集まって聖人の絵を鑑賞する。 「

掌編小説|マニア|シロクマ文芸部

「霧の朝」を買い物かごに詰めていく。陳列されている八本すべてを買い込んでも罪悪感はない。…

青豆ノノ
3か月前
131

掌編小説|たちのぼる紅|シロクマ文芸部

 紅葉から愛してみようと思いました。  分厚いカーテンに手を伸ばし、中央でぴたりと重なる…

青豆ノノ
3か月前
113

掌編小説|魅惑のマリアージュ |シロクマ文芸部

 秋と本妻が膝を突合せている。二人が正座で向かい合う十畳の客間は替えたばかりの畳が青々と…

青豆ノノ
3か月前
113

掌編小説|天国|シロクマ文芸部

「秋と本田美奈子が重なる時があるんだよ」  あーまたそれ、と秋が言う。うんざりしながら寂…

青豆ノノ
3か月前
115

掌編小説|ジェラシー|シロクマ文芸部

 月の色っぽい声が聞こえてくる。夜の十一時を過ぎた頃から、もう三十分も続いている。 「匕…

青豆ノノ
5か月前
108

掌編小説|アバンギャルド・ネ申|シロクマ文芸部

 懐かしいね、くらいは言われると思ってた。  示された位置に両足を置く。 「立てないかも」…

青豆ノノ
5か月前
102

掌編小説|流れ星|シロクマ文芸部

 流れ星の夜には百発百中なのだと、俯いていた妻が更に頭を垂れ、真剣に訴える。和室の中は、和モダンな間接照明がぼんやり灯っているのみで薄暗い。  目の前には布団の上で正座をして身を縮めている妻の姿がある。彼女を傷つけないよう、俺は音を立てずに息を吐いた。 「今夜がそうだって? 例の占い師が?」 「あ、うん。そう、設楽さん。こないだ予約したの。そしたら、今日のこと告げられて……」 「告げられてって」  どこまでプライベートなことを話してるんだ。  女ってのは、付き合いが深くなると