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#シロクマ文芸部

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小牧幸助様が企画されている「シロクマ文芸部」への参加作品を纏めます。 お題によってエッセイ、ショートショートなど。
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記事一覧

掌編小説|モスコミュールの怪|シロクマ文芸部

働いていた頃は、よくモスコミュールを飲んだのよ、と言う元同僚に、それなら仕事を辞めた今は…

青豆ノノ
11時間前
74

掌編小説|マニア|シロクマ文芸部

「霧の朝」を買い物かごに詰めていく。陳列されている八本すべてを買い込んでも罪悪感はない。…

青豆ノノ
7日前
132

掌編小説|たちのぼる紅|シロクマ文芸部

 紅葉から愛してみようと思いました。  分厚いカーテンに手を伸ばし、中央でぴたりと重なる…

青豆ノノ
2週間前
113

掌編小説|魅惑のマリアージュ |シロクマ文芸部

 秋と本妻が膝を突合せている。二人が正座で向かい合う十畳の客間は替えたばかりの畳が青々と…

青豆ノノ
2週間前
112

掌編小説|天国|シロクマ文芸部

「秋と本田美奈子が重なる時があるんだよ」  あーまたそれ、と秋が言う。うんざりしながら寂…

青豆ノノ
3週間前
115

掌編小説|S.S.S.新橋|シロクマ文芸部

「風の色……白い……」  講堂の中を吹き抜ける風さえも白い、そう錯覚してしまうくらい、こ…

青豆ノノ
1か月前
116

掌編小説|ジェラシー|シロクマ文芸部

 月の色っぽい声が聞こえてくる。夜の十一時を過ぎた頃から、もう三十分も続いている。 「匕ェエーーイ」  意外なことに、こういうときに出す月の声はとても甲高く、独特だっだ。  後ろめたさはあったが興味が勝り、窓に近づくと、カーテンをほんの少し開けた。外を覗き、ついで空を見上げる。 「匕ェ、ヒェエーーイ」  そこに、眩しすぎるほどに輝く月がある。一糸纏わぬその姿に思わず顔をそむけた。  記憶をたどれば、今夜のように月が淫靡な輝きを放ったのは半年ぶりだ。前回の月もすごかった

掌編小説|アバンギャルド・ネ申|シロクマ文芸部

 懐かしいね、くらいは言われると思ってた。  示された位置に両足を置く。 「立てないかも」…

青豆ノノ
2か月前
102

ショートストーリー|あなたのレモンを聞きたいの。|シロクマ文芸部

 レモンから何を得ようとしたのだろう。 「レモンはきっかけに過ぎない」と一人は言う。 「レ…

青豆ノノ
2か月前
135

掌編小説|流れ星|シロクマ文芸部

 流れ星の夜には百発百中なのだと、俯いていた妻が更に頭を垂れ、真剣に訴える。和室の中は、…

青豆ノノ
2か月前
104

掌編小説|この町の星|シロクマ文芸部

 花火と、手持ち無沙汰でしきりに指の関節を鳴らしている康太を交互に眺めていた。打ち上がる…

青豆ノノ
3か月前
145

掌編小説|怪物|シロクマ文芸部

風鈴と我が子を交互に見比べた。まん丸い様子が似ている。 風鈴をぽんと放れば割れてしまうの…

青豆ノノ
3か月前
129

掌編小説|透明ドロップ|シロクマ文芸部

 夏は夜のうちに済ませたいことが多いのだと、本田は申し訳無さそうな、だけど見ようによって…

青豆ノノ
4か月前
86

掌編小説 | 手紙というもの | シロクマ文芸部

 手紙には重さが無かった。  しっかりと封をして、裏面にシールを一枚貼った。それから、今月発売されたばかりの風鈴の絵柄の切手も貼った。それでも、やはり重さはない。きちんと二十五グラム以内に収まっていて、厚みも規定内だった。  わたしはがっくりと肩を落とした。  落とした肩は〝ゴトッ〟という音を立てて地面に転がった。 「無様だなあ」  わたしは角張ったその肩のことを、もともとあまり好いていなかったが、改めてこうして真上から見下ろすと、ますます嫌になった。  嫌だと言ってもわたし