掌編小説|怪物|シロクマ文芸部
風鈴と我が子を交互に見比べた。まん丸い様子が似ている。
風鈴をぽんと放れば割れてしまうのと同じように、今胸に抱く我が子をぽんと放ってみたらどうなるのだろうかとしばし考えてしまう。
真夜中。
ベランダから近隣の家々のあかりを眺める。まだ起きている人間が私以外にいることに安堵する。
二階建ての家が多い地域で、ボロ屋でも三階まである集合住宅の最上部に住む私は、こうして時々ベランダに立ち、赤の他人の暮らしを眺めている。
時折なまぬるい風が吹いて、娘の頼りなく細い髪を揺らした。風鈴