
読書まとめ『世界の資源と争奪戦』→隣りの芝生は資源の宝庫
『地図でスッと頭に入る世界の資源と争奪戦』村山 秀太郎 監修
一言で言うと
隣りの芝生は資源の宝庫
概要
地理の勉強をする中で資源の有無の重要性を感じた
ので、読んでみました。
『千葉のトリセツ』とセットで、
昭文社の株主優待で入手した本です。
「はじめに」で書かれているとおり、
ロシアによるウクライナ侵攻の影響が
ところどころで解説されています。
図書館で古い本を借りるのでは得られない、
新しい本を買ってこそ得られる情報ですね。
まあ、この本もすぐに古い本に
なってしまうわけですが。
国際情勢は刻々と変化するので、
日々ニュースを追わないといけないなー
と思った次第です。
本書を読むと、
人々は自然がもたらした資源の恩恵を受ける一方、
資源を奪い合う争いに明け暮れている
ことを痛感させられます。
『サピエンス全史』で見たとおり、
人々は統一された集団を形成するために
帝国・貨幣・宗教という 3つの虚構を作り上げました。
資源は経済のベースとなるものであり、
3つの虚構のうち最も生活に直結していると言えます。
隣りの地域に豊富な資源があったら、
欲しくなるのが人の性。
ゆえに、資源を巡って争うのは
必然的な流れなのかもしれません。
本稿では、資源に関する興味深いトピックと
感じたことを 3点共有します。
① 北極圏開発:地球温暖化の裏の顔
北極圏には、天然ガスや油田、
レアメタルなどが埋蔵されています。
具体的には、世界の未発見の原油の13%、
天然ガスの30%が眠っているんだとか。(USGS)
近年の地球温暖化の影響で北極の氷が溶けて、
北極圏の資源開発が可能になりました。
また、夏の間は船の航行が可能になることで、
ヨーロッパからアメリカまでの航行日数が
短縮されることも期待されています。
これで得をするのは、もちろんロシア。
ロシアは、ヨーロッパに天然ガス輸出規制で
揺さぶりをかけるなど、
すでに資源強国の立ち位置にあります。
ロシアが北極圏開発を進めれば、
アメリカやヨーロッパとの対立が深まる恐れがあります。
地球温暖化には、悪影響だけでなく、
見方によっては好ましい影響もあるわけですね。
物ごとの一面だけを見るのではなく、
その裏も意識しておく必要があります。
そう考えると、国際会議で決まる内容は、
現時点でイニシアチブを取っている国にとって
都合のいいことに過ぎないのかもしれません。
下記の論考では、北極圏開発は
「資源争奪」ではなく「秩序形成」に貢献する、
とされています。
たしかに、資源の供給が増えることで
争奪戦が治まる可能性はあります。
ただ、現状のロシアの動きや各国の反応を見ていると、
秩序形成への貢献は実現可能性の低い理想論にも感じます。
どこかの国が独占するのではなく、
多くの国々が協調して開発を進めてほしいところですね。
② アルテミス計画:争奪戦の舞台は宇宙へ
月には、アルミニウム、チタン、鉄などの
鉱物資源があります。
他にもヘリウムが採取できるなど、
今後の調査でさらなる資源が見つかることも期待できます。
2015年、アメリカで成立した「宇宙法」では、
地球外の資源を民間企業が利用することが認められました。
国家による地球外の領有を禁じる
国連の「宇宙条約」もありますが、
民間企業の利用はOK、という理屈らしいです。
アメリカを中心に進められている
アルテミス計画では、2024年に有人月面着陸、
2028年に月面基地建設を目指しています。
日本からも、トヨタ自動車と ispace が参加しています。
残念ながら2024年の目標は達成できず、
2025年9月に有人の宇宙船を飛ばす予定とのこと。
アルテミス計画には、
中国やロシアは参加していません。
アメリカ主導のアルテミス計画とは別で、
独自の宇宙開発を進めているようです。
資源争奪戦の舞台は、
とうとう地球の外へ飛び出すようです。
国連が宇宙条約を定めているとはいえ、
抜け穴をつく形でアメリカでは宇宙法が成立しています。
就任初日に国際合意であるパリ協定から
脱退する大統領もいるわけで、
国連の取り決めよりも自国の利益を優先する動きが
加速することを想定しておいた方がよさそうです。
③ アチェ紛争:自然がもたらした争いと結末
インドネシアのスマトラ島は、
石油や天然ガスを豊富に埋蔵しています。
1945年のインドネシア独立後、
中央政府はスマトラ島北部のアチェを併合しようとしました。
これに抵抗する形で、
アチェではインドネシアからの独立運動
が続いていました。
1976年には、結成された武装組織・自由アチェ運動(GAM)
が中心となり、武力闘争へと突入。
本書では、スマトラ島の豊富な資源の利権を巡る
「資源紛争」として書かれていました。
それ以外にも、かつてアチェ王国が栄えた歴史を持つことや、
民族(アチェ人、ジャワ人)や宗教観(イスラム法、世俗主義)
の違いが原因になっているようです。
この紛争を終結させたのは、
2004年12月のスマトラ島沖地震でした。
津波による激しい被害を受けた GAM が臨時休戦を宣言、
この休戦をきっかけに、2005年8月に
インドネシア政府との平和合意が成立しました。
29年続いた人間同士の紛争は、
地震という自然の猛威によって終息することになりました。
自然がもたらす資源を巡って争い、
自然の猛威で争いをやめる。
人間同士の関係と、人間と自然の関係について
考えさせられる事例でした。
異なる価値観を持つ人間同士が争いをやめるには、
自然の猛威などの仮想敵が必要なのかと思うと、
なんだか複雑な気持ちになりますね。
たしかに、天災、伝染病、気候変動、宇宙人の侵略(?) など、
人間の力を超越した敵が現れれば、
争いをやめざるをえない状況になります。
とはいえ、平和とは、共通の敵に
目を向けることでしか得られないものなのか、
まだまだ考えてみる余地はありそうです。
Amazon.co.jpアソシエイトに参加しています。
#推薦図書 #読書 #書評 #最近の学び #資源 #争奪戦 #戦争 #紛争 #国際情勢 #北極圏開発 #アルテミス計画 #アチェ紛争 #地図 #地理 #昭文社 #株主優待
いいなと思ったら応援しよう!
