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読書まとめ『人生が整うマウンティング大全』→マウント献上技術で自己肯定感ギバーになれ
『人生が整うマウンティング大全』マウンティングポリス
一言で言うと
マウント献上技術で自己肯定感ギバーになれ
概要
note の記事(失念) で見かけて
おもしろそうだったので購入しました。
(図書館になかった)
タイトルがかなりキャッチ―ですね。
敬遠されがちな「マウンティング」に対して、
「人生が整う」とはなんのこっちゃ。
本書は、大きく分けると前半・後半に分けられます。
前半は著者が SNS 上で収集した
マウンティング事例の紹介、
後半は人間関係やビジネスを円滑にする
マウンティングの扱い方の考察が展開されています。
前半を中心に全体の 8割くらいは、
世の中にあふれるマウンティングを
いじり倒した、大げさなおふざけです。
学びというよりは、娯楽として読む、
くらいの気持ちで向き合った方がいいかも。
一方で、残りの 2割くらいは、
現代の真理を突く提言をしていると感じました。
マウンティングが飛び交う現代において、
相手に気持ちよくマウンティングさせてあげたり、
マウンティングの場を提供したりすることの
重要性に気づかされます。
得るばかりでなく与える人(ギバー) であれと言われますが、
相手に自己肯定感を与えられる人は
究極のギバーと言えるのではないでしょうか。
マウンティング欲求を理解し、利用することで、
自己肯定感ギバーになる道が開けそうです。
本稿では、本書からの学びを 3つ紹介します。
① 幸福とは、他者との比較に基づく特別感
「他人と比較しないで自分にとっての幸福を探そう」
みたいなことが叫ばれていますが、
他者との比較なしに幸福はありえません。
幸福とは、何かと比較して、
特別であると感じた時に生まれるものだからです。
例えば、高級レストランに行って得られる幸福感は、
今まで食べた料理よりおいしい、
今まで受けたサービスよりレベルが高い、
といった形で過去の自分の経験との
比較によってもたらされます。
しょっちゅう高級レストランに行くようになると、
今までと同じ=特別感がない、
それほど幸福感を得られない、となります。
比較対象は「過去の自分」と「現在の他者」
に大別できると考えられます。
このうち、過去の自分との比較は、
自分の成長を実感するために必要なものであり、
自己肯定感を得ることにもつながるでしょう。
しかし、過去の自分の総量は限られており、
比較対象としての規模は大きくありません。
過去の自分と比較して得られる幸福感は、
すぐに頭打ちになってしまうのです。
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一方で近年、他者との比較をベースとした
マウンティング欲求を満たすことへのニーズ
が高まっています。
高級レストランに行った自分は、
そこに行っていない多くの他者と比較して
特別である、といった感覚ですかね。
先進国において衣食住が充足し、
SNS が普及して他者との比較が
容易になったことが背景のひとつと考えられます。
本書では、他者と比較して
自分が特別な存在であると認識させてくれる体験を
マウンティング・エクスペリエンス(MX) と呼んでいます。
この欲求を満たす場を提供することで、
ビジネス面で優位に立てるといいます。
MX を活かしたビジネス事例の中で興味深かったのが
Tesla の「環境マウント」です。
自家用車は移動の手段として所有されるものですが、
その中でも「経済的に豊かな自分像」というMX を提供する
高級車市場が存在していました。
そんな高級車市場に、Tesla の電気自動車は
「環境に優しい自分像」という
新しい MX を提供しました。
今までの価値観とは軸をずらした MX を提供することで、
市場で唯一無二の存在になったわけですね。
モノやサービスのユーザーに
どういった MX を提供できるか?という視点は、
SNS を通じた消費が拡大する現代において
ますます重要になってくると感じました。
② 悩みも自虐もマウンティングになる
本書で紹介されているマウンティング事例の中には、
もはや言いがかりでは、と思えるようなものもあります。
時差ボケがしんどい →海外出張してるマウント
服や食事はシンプルでいい →物欲から解放されたマウント
ジャズを聴いてる →ジャズ愛好家マウント
ここからわかることは、
どんな発言であっても、聞き手の状況次第で
マウンティングと捉えられる可能性がある、
ということかなと。
誰かのアウトプットに対して、
人は無意識に自分との比較をしています。
その上で、自分が劣っているように感じれば、
相手のアウトプットをマウンティングとして捉えてしまう。
比較的安全そうな、
悩みの吐露や自虐ネタであっても、
他者目線ではマウンティングになりえます。
先に挙げた「時差ボケがしんどい」は
わかりやすいマウンティングですが、
一方で「仕事で失敗して大変」みたいなアウトプットは、
一見それ自体で他者を傷つけるようなものでは
ないように見えます。
しかし、仕事に張り合いを感じていない人や
仕事が見つかっていない人にとっては、
マウンティングされている感覚を受けるかもしれません。
マウンティングするつもりが当人になくても、
相手の状況次第ではマウンティングになりえます。
また、相手がそういった状況になかったとしても、
「恵まれない仮想の第三者」を持ち出した
「世の中には仕事が見つからない人もいるんですよ」
というマウンティング指摘を受ける可能性も。
言いがかりをつけよう・揚げ足を取ろうと思えば、
どうとでもできるんです。
もちろん、様々な文脈に対しての配慮は必要ですが、
すべてのパターンに配慮し尽くすことは到底不可能。
近年、多様な性自認への配慮として「男・女・無回答」
という選択肢が一般的になってきました。
そのうち「自分の姓名に抵抗がある人」への配慮として、
名前も公にされなくなって、
人間が ID で呼ばれるようになるんじゃないですかね。
悩み・自虐でさえマウンティング扱いされる現状には、
SNS の普及の影響を感じています。
今までの人々のコミュニケーションは、
職場や学校などのある程度均質化された集団内で
行われてきました。
SNS の普及によって、それまでは接触がなかったような、
自分とは文脈の異なる他者の状況に
いとも簡単にアクセスできるようになりました。
自分との比較対象が広がったことで、
マウンティングにさらされる機会は
大きく増加したと考えられます。
対策としては、最低限の配慮をした上で、
完璧は追い求めず、適度に諦める・気にしない、
これに尽きるのではと思います。
もちろん、「最低限の配慮」の基準は、
主体や状況によって、一定ではありません。
匿名の個人アカウントでなら許されるけど
企業の公式アカウントが出すには NG な発言とか、
平時なら OK だけど災害の発生や政治情勢によって
「今その発言はダメだろ」とかがあります。
線引きは難しく、指摘があれば適宜修正は必要です。
その修正がうまい人が「世渡り上手」であり、
あえて修正しない人が「突き抜けた人」なのかな。
③ 相手の強みを探して、メンツの設計図を推測
マウンティングが人間の根源的な欲求であるならば、
相手に心地よくマウンティングさせてあげる技術は
人間関係を円滑にしてくれるはずです。
本書を通じて根源的なマウンティング欲求を理解すると、
他者からのマウンティングや指摘に対して
「ああ、マウンティング欲求を満たしたいんだな」
と感じるようになります。
ムッとしたりやり返したりするのではなく、
うなずいたり持ち上げたり、相手の欲求を満たすように
冷静に対処できるようになるでしょう。
本書ではこのスキルを
「相手のメンツを適切に設計する」と表現していました。
そのためには、相手が何によって
マウンティングしたいかを理解することが重要です。
相手が心に抱いているメンツの設計図を推測し、
その設計どおりに動いてあげることで、
相手に安らぎや自己肯定感を与えることができます。
相手の弱み・痛いところではなく、
相手の強み・特別性に着目する、とも言えそうです。
「相手のメンツを適切に設計する」だと
(パンチ効いてて好きですが)いやらしい感じがありますが、
「相手のすごいところを探す」なら
ポジティブな感じですよね。
相手に気持ちよくマウントさせてあげるためには、
共感、尊敬、謙遜がキーワードになります。
本書の中から、特に使えると感じた
フレーズをいくつか紹介します。
なお、「~ですが」と逆接で終わっている
フレーズが多かったのですが、
どうしても言い訳がましくなる上、
順接の「~ですが」と紛らわしいと感じました。
いったん前置きだけで区切って、逆接でつなげたい場合は
「一方で」などを使った方がスムーズかなと。
以下でも言い切りの形で紹介していきます。
「その点については私も同感です」
相手の意見に対して、
まずは共感を示して尊重しています。
このあとに「一方で、」と
自分の意見を述べる形で使います。
「いただいたご指摘を踏まえ、
改めて考え直してみました」
これも、相手の意見を採り入れていることを表明し、
その上で自論を述べる形のフレーズ。
「この点については、○○の専門家である
○○さんに伺いたいです」
相手を専門家として認めた上で、
意見を求めるフレーズ。
相手の役割を定めて発言を促すという意味では、
「新入社員にしかわからない視点がある」
「ベテランとしての視点を伺いたい」
などに応用できそうです。
「うまくお伝えできておらず恐縮です」
コミュニケーションの行き違いがあったときの前置き。
「先日お伝えしたとおり、」だと
ちょっと嫌味っぽさがあると述べられています。
(私、これ使いがちでした)
自分に伝え方に責任があるとへりくだって
相手のメンツをつぶさないようにしています。
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