“どの感情も経験も、今しかできないことだから、全部楽しいんだなって。そう思うようになったね”
34. 清水良一&千花 / エコビレッジオーナー、シーカヤック・ヨガインストラクター
小笠原村父島の山奥で『エコビレッジプーラン』という宿を営む良一さんと千花さん。
コンポストトイレや太陽光のお風呂、電子レンジのない生活など、環境に負担の少ない持続的な仕組みをゲストは体験できるが、実生活としてこの暮らしをしている彼らの思想根源とは何なのか、深掘りしたくお話を伺ってきました💡
■清水良一(シミズ リョウイチ)
「エコビレッジプーラン」のオーナー。小笠原村の村議会議員でもある。
サーフィンが人生の中心に来たことをきっかけに、父島へ移住。宿を始めた30年前はエコロジカルな場所にすることを想定していなかったが、徐々に自然との調和を目指したライフスタイルに移行していった。
プーランの建物はすべて良さんの設計で自身や友人の手を借りて建設。
シーカヤックツアーのインストラクティングも行う。
■清水千花(シミズ チカ)
良さんのパートナー。養護施設で子供の心を自然環境で癒す仕事に長年従事していた。
父島の無認可幼稚園「ちびっこクラブ」での勤務が決まり、移住。結婚後は良さんと共にプーラン村を運営している。
ヨガインストラクターでもあり、ドネーション制で『チカヨガ』を島内各地で週に複数回主催。
オフラインのみならず、定期的に配信されるオンラインメッセージは心身を共に整えるヒントを人々に与えている。
_失敗から学んだことが成功に結びついたことは?
千花(以下C): 大体がそうだよね(笑)
ここ(エコビレッジプーラン)の物は、ほとんどが自分たちで作ったオリジナルだから。試してみて、「あ〜、失敗だったか〜…」ってやっと分かる。
そこから大変ことは全部手放して、楽で、お金もかかんないことを今もやってるね。
自分たちだけじゃなくて、誰でもできるようなことをしてると、やっぱりシェアもしやすいし、長く続くから…。
良一(以下R): うちのトイレとかはその代表だな。最初は普通の水洗トイレだったんだけど、あれは一回の洗浄で飲める水を30リットルも流してしまうわけだ。それだったら、使った水をもう一度使えるようにしたらいいんじゃないのってことでパイプを地面の中に入れて、循環式水洗トイレを作ったんだ。
だけど、これがある時つまるんだよな…(笑)いくら丈夫な管を繋げても、地面は少しずつ動いてるからだんだん割れちゃって。割れると、そこに植物がものすごい勢いで根っこを生やすから、管を全部外さなきゃいけない。これってエネルギーの無駄使いだって気づいて、じゃあ止めようかと。
代わりに自分たちの大便、小便を肥料にできたらいいんじゃない?って始めたのが今のコンポストトイレで。集めた枯葉と灰とバケツがあれば消臭もできて、3、4か月したらものすごく栄養価の高い土になる。
そんなふうに、失敗を重ねに重ねて、だんだん今のスタイルになってきた感じなんだよね。これからも変えていく部分はたくさんあると思うんだけど…楽しくできればそれでいいかなって思ってる。
_発想やクリエイティビティの源泉は?
C: わたしはね、ビジョンが出てくる。バンって画が出てきちゃうから、それに向かってやる感じ。
R: 千花はクリエイティブな人だから。
俺はね、なんか違うんだよね。自然環境とか土地とか、手元にあるものが合わさって出来てくる…みたいな。デザインありきじゃない。
例えば、家を建てたときは、太陽の日の差し方とかさ…夏だとこっちからで、冬だとずれるから…とか。風向きはこの時期はこっちから吹くからあっちはやめた方がいいな…いや、窓を多くすればいいか…とか。強度のことを考えながら、なんとなく形ができていく。
でも自然知とか建築技術が完璧にあって作るわけじゃないから、あとから「いやぁもうちょっとこうしたかったなぁ」とかいう箇所も出てきたりもするんだけど…あるもので楽して生活できてるし、まぁこれでいいか!って(笑)
C: 「あるもので」っていうの、あるね(笑)
たぶん2人とも、既存のものがそんなに好きじゃないんだよね。今は何でも手に入るけど、出来れば下手くそでも手作りで、自分のエッセンスが入っていて使いやすいものが愛おしいと思うから…作りたいなっていう気持ちがまずはある。
窓なんかも、道に落ちてる瓶を拾ってきて、ここに突っ込んだらいいな、とか。あ、ステンドグラスみたいになっていいじゃん!これで行こ!って(笑)
あとはやっぱり、日々の観察も大きいね。
結局システムとかアートは自然界の中にすべてあると思うのね。だからそれをたくさん吸収すると自分の中から湧いてくる。
_今日までに学ぶのに最も時間がかかったことや教訓を教えてください
R: コミュニケーションだな…。
昔はさ、お客さんが来たら、まず初めに人生の目的と目標を話して、こうやって変えていったらいいと思うんだ!ってレクチャーしてたの。1時間近く。そしたらさ、やっぱお腹いっぱいになっちゃうんだよね(笑)
だんだん、インプットするよりもアウトプットする側が元気になるってことが分かってきた。逆にもらいすぎると、元気がなくなっていく。
だから、あげすぎないように(笑)もらいすぎないように。そのバランスが重要だなって。それは自然にも言えることなんだよね。そういう大いなる仕組みがあるんだと思う。
C: コミュニケーションは本当に難しいよね…。
最初の頃は若かったし、すごく…「自然を守りましょう!」って結構ストイックになっちゃってた。プラスチックを全く買わないとか、ずーっと玄米菜食とか。
でも子供もさ、大きくなるとそういう生活に反発してくるし…なんか、行き尽くしたところがあったんだよね。
「あっちはダメで、こっちはいい」みたいな考え方は、たぶんうまくいかなくて。みんな違う人間だからさ。「違うからこそいい」って相手を尊重する気持ちは、大事だよね。
_お2人で仕事されるようになって変わったことは?
C: できることがだいぶ増えたかな。1人のできる範囲が大体あるじゃん?この範囲が2人になった時に、2倍じゃなくて10倍ぐらいになるの。
たぶん、2人でひとつの丸を作ろうとすると、相手がいないと不安だし、しんどいの。でも、それぞれが自立して、1人でも丸を作れていたら、分子みたいにくっついたり離れたりして、すごくいい化学反応を起こせる。その自由さが、できることを多くするなぁと思ってる。
R: それからバランスが取れるよな。
例えばさ、「シャンプーなんてやめちまおうぜ!もっと手放そう!」って俺が突っ走っていったら、千花は「いいね!でも匂いが気にならないように、お酢を使ったらいいんじゃない?」「こうしたらもっと良くなるんじゃない?」って一筋縄で通さない。
それがお互いを成長させてるし、この場所を良くしていけてる理由なんじゃないかなぁって、思うね。
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