エレベーターの中で:博士の普通の愛情
マンションのひとつ上の階に大家さんの息子家族が住んでいる。居住者同士に何の交流もないのは新宿という場所柄のせいもあるだろう。僕が挨拶をするのはその家族の若いお母さんひとりだけだ。30代前半のように見える。もちろん年齢などの個人的な話題に踏み込んだことはなく、エレベーターの中で会ったときに「天気が悪くて嫌ですね」くらいのことをたまに言い合うだけだ。旦那は大家さんの息子で、管理人は管理会社から別の人が来ているので具体的な仕事は何もしていないはず。父親の家賃収入で暮らしているボンボ