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フロア29(その2):博士の普通の愛情

ユウの彼氏であるシンジはボート部の先輩である栗崎と会い、ユウが勤めている会社の社長のことを知ったが、ユウから日々話を聞いているうちに「社長は油断ならない人物かもしれない」と感じるようになっていった。

土曜の朝。スマホを見ながらソファに寝ているユウが面倒くさそうに言う。

「昨日のこの写真は、同じ部署のみんなで食事に行っただけよ」

「それはわかるけどさ、ああいう高級な店に行った写真をインスタにアップするとね」

「シンジはそういうのを載せないほうがいいと思うんだね」

「だって、俺がユウを連れて行くのは安い居酒屋ばかりだろう」

「ああ、そういう意味か。だから仕事だってば」

「どっちが女か、わからないな」

「その発言って、今の時代はジェンダー的にアウトですからね」

「私と仕事とどっちが大事なの。答えなさいよ」

シンジは女性の言葉でふざけてユウに抱きついたが、目の前にある彼女の耳には、今まで見たことがない高級そうなピアスがあった。

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恋愛に関する、ごく普通の読み物です。

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多分、俺の方がお金は持っていると思うんだけど、どうしてもと言うならありがたくいただきます。