「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり 現実の光と闇を行き来しながらも お互いの存在を意識しながら 共に生きていく。 《依存》〜side Y〜 これまでの「頑張り」とは 別の種類の頑張りが必要な気がしていた。 (根を詰めてスケジュールをこなすのは肉体的にきつかったけれど、 多分、もうそうじゃないんだ。。。) 求められればどこへでも行くし、 そこで自分を発揮することに悦びもある。 ……けれど。 (それじゃ、今までの俺と何ら変わらない) (早絵に繋がれた人生を生
「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり 現実の光と闇を行き来しながらも お互いの存在を意識しながら 共に生きていく。 《依存》〜side O〜 新居での生活は薫にとってはすべてが新鮮だった。 コンビニに行くにも歩いて10分はかかるし、通勤も一時間半はかかる。 お世辞にも「便利」とは言えない環境が 薫にとっては好影響を与えていた。 ★ 引っ越してから、 生活時間が大きく変わりつつあった。 薫の1日は 毎朝、海に散歩に行くことから始まる。 まだ寒さは残ってはいた
「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり 現実の光と闇を行き来しながらも お互いの存在を意識しながら 共に生きていく。 《和解》〜SideY〜EX 「ねー! レコ大見て!! にーちゃんいるよ!!」 裕太からの電話で、 慌ててテレビのチャンネルを変えた。 年の瀬 子供たちも家を出てしまって 今年もまた二人きりの正月を迎えるのだ、、と 正子は思っていた。 「まったく。。。 あの子は連絡もくれないんだから。。」 正子は慣れない手つきで録画ボタンを押した。 「お
「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり 現実の光と闇を行き来しながらも お互いの存在を意識しながら 共に生きていく。 《不調和の調和》〜side Y 〜 「この間に一個なんか欲しいんだよ、、、 なんかねぇ、、、 今のもいいんだけど、 ちょい弱い感じがしていて。 山さん、アイディアない?」 「、、、、こういうこと?」 颯太は一音を鳴らして確認した。 「あぁー! 次それでお願い!」 現場ではよくあることだ。 あの楽器のあの音が欲しい、とオーダーされることもあ
「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり 現実の光と闇を行き来しながらも お互いの存在を意識しながら 共に生きていく。 《不調和の調和》〜side O〜 (人ってほんと自由な生き物だわ、、、) 混雑するサロンで ノンストップで動き回りながら マスクの中で薫は呟いていた。 こんな時に限って 必ず、イレギュラーが多発するものだ。 一人の30分遅れがあると、 すべて雪崩れのようにおしていく。 そういう仕事だ、と言われればそれまでだが。。。 (一人の事情は 他のお客様に
「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり 現実の光と闇を行き来しながらも お互いの存在を意識しながら 共に生きていく。 《吾輩は犬である》〜side J〜 颯太は朝から玉ねぎを刻んでいる。 、、、どうやら、 要人が来るようだ。 颯太は決まって、 誰かを招く時、お手製のカレーを仕込むんだ。 オイラは玉ねぎは食べられないから、 林檎のお裾分けを頂戴するのを待っているしかない。 「ジャコ!!林檎だぞ〜」 (きたーー!!!) 近頃は滅法カラダが重くなった。 歳のせ
「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり 現実の光と闇を行き来しながらも お互いの存在を意識しながら 共に生きていく。 《吾輩は犬である》〜side G〜 相方のぐらは、いつもボクを下にみてる。 オンナはいちいち細かくて 面倒くさい生き物だと思う。 (こんなこと、ぐらには言えないけど!) おんなじパパとママから生まれたけど、 カラダのサイズも色も違うから 兄妹には見えないらしい。 ボクらは長野から薫と一緒に東京に来た。 何にも知らないボクらに、 薫は沢山
「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり 現実の光と闇を行き来しながらも お互いの存在を意識しながら 共に生きていく。 《吾輩は犬である》〜side G 〜 アタシ達と薫は、どうやら別の生き物らしい。。 わかったのはつい最近のこと 確かに、 食べる物も違うし、 鳴き方も妙に長ったらしい。 そして、 薫たちはいつも変な布でカラダを覆ってるのがずっと不思議だった。 「ぐら、知ってる? 薫達ってさ、《ニンゲン》って言うらしいよ?」 相方のぐりにそう聞いてから、 今まで
「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり 現実の光と闇を行き来しながらも お互いの存在を意識しながら 共に生きていく。 《希望の温度》〜side Y〜 年末年始のこの仕事は 独特の空気感が漂う。 今となっては慣れっこだが、 華やかさとは裏腹に バックステージは地味過ぎるほど地味に、 分刻みで動いていく。 おまけに、 拘束時間も長いから、 自分なりの息抜きも 自然とスキルが上がっていく。 自分が「ポーカーフェイス」と言われるのは 当然と言えば、 当然なの
「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり 現実の光と闇を行き来しながらも お互いの存在を意識しながら 共に生きていく。 《希望の温度》〜side O〜 「今年はどんな一年になるかなぁ……」 「ん〜〜 ………とりあえず。 …………健やかでいたい、かな 笑」 「、、そうだねぇ。 本年もよろしくお願いします。。。」 「、、、こちらこそ」 ボソッと 真意をつくことを言うのは 颯太のパターンだ。 とっくに年は明けていた。 一般的なお正月休みが終わり、 新年が動き
「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり 現実の光と闇を行き来しながらも お互いの存在を意識しながら 共に生きていく。 《転居》〜side Y〜 「引っ越したよ」 何の前触れもなく薫から連絡があった。 仕事は相変わらずのようだし、 近場だろうと勝手に思い込んでいた。 「前に話したことあった場所の近くだよ」 「海まで歩いて行けるの!」 「は???」 「海も山も近くにある所に暮らしたい、、、」 颯太は 以前、薫とそんな話題で 話し込んだことを思い出した。 (たら
「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり 現実の光と闇を行き来しながらも お互いの存在を意識しながら 共に生きていく。 《転居》〜side O〜 薫は生まれてはじめて、 海の香りがする街にいた。 東北の地方都市で生まれ育った薫には まったく縁もゆかりもない土地だ。 会社所有のマンションがあり、 誰も住んでいない為 移らないか?という話があったのだ。 どちらかと言えば、海よりも山派だった。 学生時代、山岳部だった薫は 海は何となく苦手意識があった。 颯太と
「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり 現実の光と闇を行き来しながらも お互いの存在を意識しながら 共に生きていく。 《信頼》〜side Y〜 「離婚したんだ、、、」 薫にそう言った時、 どう反応するのか、、、、正直恐かった。 どうして?とか、 相手がどんな人だったのか?とか 細かく詮索されるのは好みではなかった。 「そっか。 次のステージなんだね。」 否定も肯定もなく、 「そのまま」を受け入れてくれる薫には、 一番最初に話したかった。 話したからといっ
「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり 現実の光と闇を行き来しながらも お互いの存在を意識しながら 共に生きていく。 《信頼》〜side O〜 「なんかさぁ〜もう別れようかと思ってね、、、」 「何かあったの?」 「うんん。 何もないから、別れようかなと。」 「何それ〜」 一年振りに会った優子は浮かない顔をしていた。 「あれ、、一緒住んで何年になった??」 「2015からだから、、かれこれ6年だもん」 (、、、颯太を意識し始めたのとおんなじ位かぁ、、、)
「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり 現実の光と闇を行き来しながらも お互いの存在を意識しながら 共に生きていく。 《境界線》〜side Y〜 これだ!と信じてきたものが (なんか、変わった!?、、、)と感じる瞬間がある。 これまでも、そんな「瞬間」は幾度となくあったと思う。 それはゴルフのスコアがのびるのと似ているな、 と颯太は思っていた。 そこに行くまで、必要な努力は前提だが。 無理に頑張るのをやめた時、 気づいたら 自分が設定していた「境界線」を超
「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり 現実の光と闇を行き来しながらも お互いの存在を意識しながら 共に生きていく。 《境界線》〜side O〜 「お誕生日おめでとうございます!」 颯太だった。 確かにそうだ。。。。 薫は自分の誕生日をすっかり忘れていた。 ★ 宣言が繰り返され、 美容室運営は困難を極めていた。 サロンワーク以外は 会社の資金繰りやその他助成金申請等の資料作成に費やしていた薫は 時間感覚がなくなっていた。 (二重人格みたいだなぁ、、、)