【彼と彼女のものがたり】sideD
「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり
現実の光と闇を行き来しながらも
お互いの存在を意識しながら
共に生きていく。
《吾輩は犬である》〜side G〜
相方のぐらは、いつもボクを下にみてる。
オンナはいちいち細かくて
面倒くさい生き物だと思う。
(こんなこと、ぐらには言えないけど!)
おんなじパパとママから生まれたけど、
カラダのサイズも色も違うから
兄妹には見えないらしい。
ボクらは長野から薫と一緒に東京に来た。
何にも知らないボクらに、
薫は沢山の事を教えてくれた。
美容室にお客さんが来たら、吠えないこと
リードを引いたら、ストップすること
ごはんの前はお座りすること、、、
《ニンゲン》と一緒に生活する為のルールを丁寧にひとつずつ教わった。
たまに、お外に飛び出すと薫はすごく恐いけどね。
それ意外はママみたいに優しいんだよ。
★
今日は薫はご機嫌だった。
(多分、あのヒトが来るからだろうな、、)
あのヒトは薫と同じ匂いがする。
《そうたさん》って薫は言うけど、
ボクからすれば
同じ種類のニンゲンだと思っていた。
「、、お疲れさまです〜」
「ごめん、ちょっと遅れた!
駐車場空いてなくて、、」
そうたさんは、いつもボクのお腹を撫でてくれるからスキだ。
ボクが気持ちいい場所を触ってくれるニンゲンって実は少ない。
頭を触ってくるニンゲンが多いけど、
あれはキライなヒトにはされたくないんだよね。。。
(薫と仲良さそうなニンゲンには、一応愛想よく尻尾は振るけどさ。
匂いが好みじゃないニンゲンはスキじゃない。)
そうたさんは、ぐら曰く《ジェントルマン》らしい。
たしかに、ボクらの領域にズカズカ入ってこないヒトだと思う。薫と話した後、必ずボクらにも無言で挨拶してくれる。
「お邪魔します〜元気だったか??」
撫でながらそうたさんがそう言ってるのは、ボクでも伝わってきていた。
「オンナにモテるタイプってああいうニンゲンなのよー!」
ぐらはそう言ってたけど、ボクにはそういうのわかんないし、別に知らなくていいや。
★
薫は気づいてないかもしれないけど。。
そうたさんは、ずっと薫ばかり目で追ってるのをボクは知ってるんだ。
薫が他のニンゲンと話していたり、お掃除してるのを鏡越しに見てるから、きっとスキなんだろうなぁと思っていた。
「ニンゲンはもっとフクザツなんだって。
アタシ達とは別なのよ。」
ぐらはそんなことを言っていた。
《フクザツ》って何なのかな、、??
スキなら、
尻尾たくさん振ったり、
お顔舐めたりしたくならないのかな、、??
ニンゲンはボクらより
頭がいいのかもしれないけど、
スキやキライを出さないから
ボクにはよくわからない時があるし、
不思議で仕方ない。
ニンゲンみたいに
スキを隠さなきゃいけないなら、
ボクは犬のまんまでいいかなぁと思う。
一度だけそうたさんに聞いたことがある。
「触って?」って言いながら
近づいた時、聞いたんだ。
「、、、薫のこと
スキでしょう??」
「、、うん、大好きだよ。
お前にバレてた??」
「わかるよー
一緒の匂いだもん!」
「そっかぁ。。
でも、まだ薫には秘密だぞ?
オトコ同士の約束だからな。」
そうたさんはボクの背中を触りながら
秘密を話してくれた。
ボクもオトコだから、約束は守るんだ。
きっと、いつか
そうたさんは薫に話すんだと思ってるし、
二人がもっと仲良しになったら
ボクもぐらも嬉しいのにな。。