【彼と彼女のものがたり】Side O
「魂」で繋がる彼と彼女のものがたり
現実の光と闇を行き来しながらも
お互いの存在を意識しながら
共に生きていく。
《不調和の調和》〜side O〜
(人ってほんと自由な生き物だわ、、、)
混雑するサロンで
ノンストップで動き回りながら
マスクの中で薫は呟いていた。
こんな時に限って
必ず、イレギュラーが多発するものだ。
一人の30分遅れがあると、
すべて雪崩れのようにおしていく。
そういう仕事だ、と言われればそれまでだが。。。
(一人の事情は
他のお客様には何の関係もないのだ。)
だからこそ、
どこかで微調整をしていくスキを狙いながら運営するのが
サロンワークの面白さでもある、と薫は思っていた。
交通渋滞が、
ある時、
スムーズに流れ出すのに似ていると
思っていた。
動いているようでどこかに滞りがあると、
全体が停滞する。
もう無理かも〜!!と感じるギリギリまで
頑張ると、
一気に流れ出す瞬間が
必ず訪れる。
(自分のことはコントロール出来るけれど、
他者はコントロールできないのだ、、、)
そういう経験は
薫を強くしなやかに
してくれていたのかもしれない。
(人は不協和音を煙たがるけれど。
自分の音を出さない限り、
ハーモニーは成り立たない。
それで和音を望むのは、
後出しジャンケンしてるようなものだ、、、)
目の前の施術をする自分と
俯瞰で天井からサロンを見下ろす自分
二人の薫がいた。
★
「折衷案って妥協してるような
ニュアンス帯びる気がするんだよなぁ。。」
「受け取り方にもよるのかな。いいとこどりしてまとめる、みたいな意味じゃなかった?」
「ん。。
本来はそうなんだけどね。
なんか仕事してると、
最近、ニュアンスが変わってきてるような
気がしたんだよ」
「私もある意味
折衷案がないとできないなー
たしかに。
初めっから諦めてる感
感じると辛い時はあるかも。。」
「色出した方が
いいもの出ると思うんだよなぁ」
「、、、折衷案より
統合案みたいな感じ?」
「あー
そうかぁ、、そっちかも!」
颯太の言う事象と自分が言う事象は
一見すると、何の関連もない。
けれど、
お互いに
それぞれ別の世界から
互いの共通項を見つけ出すのは
二人の得意な部分だと、
薫は感じていた。
(どこかに不調和を感じていても。
広げてみたら
調和する為の一個のパーツに過ぎないのかな、、)
颯太との対話は
いつしか、
自分をフラットに戻す作用をもたらすようになっていた。