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「正しい努力」で、働く発達障害の方が頑張りを認めてもらうために

【この記事は、約6分で読めます】

これで3回目だ。

部署の目標で、担当している仕事のマニュアルを更新している。
しかし、何度も何度も実際の手順通りに確認しても、いざ他の人が代わりにやってみたら「分かりにくい」だの「みんなのためになってない」だのダメ出しされる。
誰が初めて見ても分かりやすいように努力して更新してるのに、何が間違っているんだろう?

周りのために役立てようと、努力しているあなたの姿勢は素晴らしいです。
ところが、もし人から何かを指摘されるのであれば、それはあなたが努力する方向性を間違っているかもしれません。
もっと言えば、「自分本位」のマニュアルに進んでいる可能性もあります。

この記事では、障害者雇用でありながら正社員として働き4年以上になる僕が、あなたが働く上で周りから認められるために「正しい努力」の考え方を解説します。
また、具体的な方法を実践して成果を得られるプロセスもお伝えします。

どうぞ最後までお読みいただければ、幸いです。


1.「正しい努力」を達成するために必要な考え方

①周りの求める「目標」を理解する

まず何かを達成する上で、周りが求める「目標」を理解するのが重要です。
なぜなら、会社や組織には事業を達成するために明確なビジョンを掲げ、それにより経営が左右されるからです。

売上の良し悪しによってはあなたの給料にも響き、最悪雇用の継続にも関わりあなたの生活にも影響を及ぼします。
言いかえれば、あなたは経営レベルまでの権限はなくても、事業を達成するための一部を担っているのです。

大抵の会社では毎年事業方針を決め、それを達成するための目標を掲げているはずです。
僕の会社でも、毎年全体会議という形で各部署前年度の結果と今年の目標を発表し、社員はそれに沿って働いています。

ところが発達障害の方は、暗黙の了解や不文律を理解するのが苦手な傾向にあります。
時には、この特性が周りの求める「目標」である場合にも起こります。
結果、知らず知らずのうちに自分が正と判断したものが周囲には見当違いと評価されてしまう。

これほど、もったいないものはないですよね。
「自分、こんなに頑張ってるのに」と思って働いているのに、認められないなんて悲しいに他なりません。

そのため、周りがあなたに期待するものとズレが起きないよう意識合わせが必要になるのです。

あなたの頑張りは、周りにとってはあなたに求めたいものなのか?

そうした相手の気持ちの汲み取り方が、「正しい努力」へと導くのです。


②「この人は自分に何を伝えたいんだろう?」


相手に何か頼まれごとをされたとします。
その際、ただ聞いた内容のみを受け取るのではなく「この人は一体自分に何を言いたいのか?」と疑問を持って聞く態度が肝要になります。

なぜなら、その場で聞くことだけに終わると、後々になって相手と自分との間で誤解や齟齬を来たし相手に手間をかけてしまうからです。

定型発達は、「自分が100あるうち50の程度で話すれば、相手も同じように50理解できるだろう」という前提で話を展開します。
そのために重要なのは「価値観の共有」や「心の理論」であります。

※ 価値観の共有や心の理論については、過去記事もご参照ください。

【価値観の共有について】

【心の理論について】

同じ場で、同じ感情を分かち合う。
そうした「相互快感」を、定型はお互い欲している。
そういう欲している内容に応えたければ、次の2つの質問で相手が伝えたい内容を正しく理解すると良いでしょう(表現は都度入れ替えてください)。


質問A:「今のは○○ということですか?」
質問B:「△△とは□□と理解して問題ないですか?」


具体的に、先日実際僕の職場で起こった事例を紹介します。


Aさん(定型)「坂巻さん、ここにいらない紙をまとめた箱(以下「①」)を置いてるんだけど、この溜まったヤツをがさばらないようにある程度新しい箱(以下「②」)に移しといて。①は廃棄して、②はその①が空いた場所へ」

僕(当事者)「すみません、確認ですが①のたまった紙を②に移すんですよね?」 ← 質問A

Aさん「そうそう。で、①が空いたところに、②を移すと」

僕「(その場に行って実演しながら)①のがさばった紙を②に移す。そして①を避けて、空いたスペースに②を置く。①は廃棄する…」 ← 質問B

Aさん「正解!」


これは以前の記事「「傾聴」ベースで発達障害のあなたも相手に共感を得る方法」でも紹介しましたが、チャンキングをベースにしています。
こういう会話をして、相手への誤解や齟齬をなくしていくのです。

※ チャンキングについては、コチラもご覧ください。

相手が自分にどうして欲しいのか?
どうしたら嬉しいと思うのか?

こういった疑問の持ち方が、「正しい努力」へと近づいていくのです。


2.正しい努力を続けるために

①十分な睡眠時間を確保する

まず、正しい努力を達成するには十分な睡眠時間を確保するのが重要になります。
なぜなら、十分な睡眠時間によって快適な朝を迎えられ、昼間のパフォーマンス発揮に貢献できるからです。

※睡眠の大切さについては、過去記事「適切な睡眠が、安定就労を可能にする理由」もご覧ください

仕事のパフォーマンスと睡眠の関係性については、J-Net21という中小企業の成長をサポートする組織の記事からも明らかです。

(1)業務判断と正確性
睡眠と仕事のパフォーマンスは業務判断と正確性の面で深い関連性を持ちます。
十分な睡眠を取ることで脳は適切に機能し、判断力が向上します。
睡眠不足は判断力の鈍化や集中力の低下をもたらし、重要な意思決定に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、良質な睡眠を通じてクリアな思考が促進され、情報を適切に処理して正確な判断を行うことができるようになります。
適切な睡眠を確保することで業務における判断力と正確性が向上し、効果的な業務遂行が実現します。

出典 :J-Net21 「仕事のパフォーマンスと睡眠の関係性について教えてください。」


実際僕は、平日は22時まで就寝し翌朝は6:15に起きる習慣を心掛けています。
さらに、最近は大好きな酒すらも控えています。
その理由は、不十分な睡眠によって昼間の仕事で誤った判断やミスを起こさないためです。

こうした心がけは、社会人として基本的なわきまえと考えているかもしれません。
しかし、その基本を忠実に守ることで、僕は一週間定型と同じ勤務時間・同じ勤務体制で6年間働き続けられているのです。

発達障害の方は、定型なら無意識にできるものを敢えて意識しないといけない分、想像以上に精神的・身体的な労力を使っています。
事実、僕自身相手に失礼のないよう何かを伝える際は慎重になっています。
その慎重さが仇(あだ)とならないよう、睡眠時間の充実が大切になるのです。

早寝早起き病知らず。

こうした格言は、子供のみならず大人にも当てはまるのです。


②声に出して音読を繰り返す


物事を正しく理解するためには、教わったものや学んだものを声に出して復唱し、音読を繰り返します。
これは勉強や仕事を問わず、あなたが生涯学び続ける姿勢を確立するために大切な視点です。

なぜなら、音読によって読む・聞くというインプットだけでなく「話す」というアウトプットも達成できるからです。

結果、理解を早めるのに役立ちます。

僕は現在の会社で、初め契約社員として採用されました。
採用当初、会社はゆくゆくは正社員登用と約束していましたが、契約社員である限り任期満了で退職される可能性もあります。

ある意味、ピンチな状況です。
そこで、僕は確実に仕事をこなして悪い印象を与えないよう次の取り組みを行いました。

  1.  業務マニュアルを、実際の業務でつぶやきながら指差し確認しながら手順に沿って業務を行う。

  2.  毎年開催される全体会議で発表された資料を人のいない場所で音読し、理解できるまで繰り返す。

  3.  属人化防止を目指し、自分の業務について過去他の社員が作成したものを参考にマニュアルを作成する。


当時、部の目標は「従業員への安定サービス提供」でした。
従業員への安定サービス提供とは、メンバーのスキル習得促進による業務の効率化。
僕はこの「スキル習得促進」を軸に、音読とマニュアル作成を進めました。

また、マニュアルも自分本位で終わるのではなく他の方が作成したマニュアルの文体や画像を真似しながら、誰が見ても理解できるものを作成しました。
もちろん、作成した後も音読を行い、文章表現に抜け漏れがないかのチェックも怠りません。
その結果、ある日僕が休暇で他の方が代わりに自分の業務を対応した後で、担当者から次のように感謝されました。

「坂巻さんの作成したマニュアルのおかげで、自分にも対応できた。助かったよ」

この他にもTOEICのスコアで社内1位を目指し、障害者でもやればできるんだと周りを盛り上げるよう奮闘しました。
結果は735点と社内1位には及びませんでしたが、当時の部長からは「自己研鑽は大事だ、これからも頑張れ」と激励されました(翌年、830点で社内1位を達成)。

そして、僕は入社から1年半経って正社員への登用を実現したのです。


(プライバシー観点から、画像は若干加工しています)


これは会社創立以来、初めての出来事でした。
後になぜ正社員に登用できたかを会社に聞いたところ、次のような答えが返ってきました。

「契約社員時代からよく働いてたし、とりわけ〇〇の仕事で向上心を持って知識やスキル向上を目指していったからな」

手前味噌ながら、向上心を持った取り組みとは日々の音読とTOEICの効果だと振り返っています。
また知識・スキル向上は自分の業務に固執するのではなく、他の人のマニュアルを真似て取り入れた証しだと考えています。
それにより、誤った方向に進まず会社が自分に求める「スキル習得促進」を実現できたのです。

音読を、侮ることなかれ。


効果が出るまでは時間はかかるし、効率という意味では遠回りな方法かもしれません。
しかし、効果が出始めてからは急激に伸び始めます。
常日頃アウトプットを繰り返し、正しい努力に向かって進みましょう。

※参考)「成長曲線」
 結果が出るまで継続する大切さが、お分かりいただけるかと思います。

 


まとめ

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

過去僕は、努力がトイレに行くのと同じだと紹介しましたが、今回はその延長で「正しい」方向で結果にコミットする方法を僕の実体験を交えてお伝えしました。

参照)「努力は用を足すのと同じ ~野原ひろしから学ぶ、目標達成のメソッド」

冒頭でも取り上げましたが、あなたが「頑張る」そのものについては、素晴らしい取り組みと思います。

ただし、その方向性が周囲にとって正しいものでなければ、骨折り損のくたびれ儲けになってしまいます。

そうならないため、周囲の求める目標に沿って行動するのが大切になるのです。
せっかく努力して何かを得たいのなら、無駄な遠回りはしたくないですよね?
けれども、地道に毎日コツコツ続ける姿勢は忘れないでください。

この記事を参考に、あなたが結果に即した「正しい努力」へ進むきっかけとなりますように。

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坂巻菱生 | 発達障害(ASD)正社員当事者
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