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【要約】『本を読む本』|本の読み方について考えてみよう!

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『本を読む本』/M.J. アドラー,C.V.ドーレン/1997年,講談社学術文庫
 外山滋比古,槇未知子訳
(原題:『How to Read a Book』)

 今回は、上記の本を紹介します。兎にも角にもコンパクトにまとめることを意識しました。

以下では、4つの章の構造で説明します。
Chapter 1: Entrance
 ⇨”入口”、ちょっとさわりだけ、本の帯を読むイメージです。
Chapter 2: Essence
 ⇨本の全体構造と”エッセンス”を、鳥の目で俯瞰します。
Chapter 3: Enlightenment
 ⇨俯瞰して全体像を掴んだ後は、虫の目で細部の”悟り”を深めます。
Chapter 4: Ending
 ⇨最後に”まとめ”や関連情報などを記載します。

1. Entrance

 本って、そもそもどうやって読むの?、何を読むか決められない…、本に振り回されないための、本に対する主導権を握るための、学校では誰も教えてくれなかったリテラシーの詰まった1冊。
 つまり、「読む力」を高めるための本なのですが、読む力を高めていくと、連動して「書く力」が上がることも掴めるはずです。

2. Essence

 この本は、本の読み方を下記の4つのステージに分けて、Ⅰ~Ⅳまで順番にレベルアップできることをターゲットとしています。
 -Structure-
➢Ⅰ:初級読書 (Elementary Reading)
 ⇨特に文意を意識せず、文字を追いかけているだけの読み。
➢Ⅱ:点検読書 (Inspectional Reading)
 ⇨「はじめに」や「目次」等を利用した、短時間のざっくり読み。
➢Ⅲ:分析読書 (Analytical Reading)
 ⇨じっくり読み、いわゆる精読。
➢Ⅳ:シントピカル読書 (Syntopical Reading)
 ⇨共通するテーマについて、自由に複数の本をセレクトして読める状態。
 (学生が自分の興味あるテーマについて、卒業論文のための様々な
  文献を「主体的に」読み漁れている状態のようなイメージです。)


3. Enlightenment

 この本のメインコンテンツはレベルⅢの「分析読書」で、1冊を徹底的に読む方法について書かれています。この分析読書をしっかりと理解すれば、後は好奇心さえあれば、レベルⅣの「シントピカル読書」は自然と実現できる内容です。
(※これらは、小説等の文学ではなく、教養書に適用する方法です。)

➢レベルⅢ「分析読書」の Max 15 Steps
 15個もありますが、意味のかたまりで見ていくと、理解しやすく、記憶に残りやすいはず。分析を行うには、大別して"3つ"のステージがあります。

Outline ⇨ Contents ⇨ Judgement


◈1~4: 全体像(アウトライン)を掴むための4ステップ
1. Categorize:何について書かれたものかざっくり分類する(#タグ付け)
2. Outline:「はじめ」にや「目次」を見て、本の大筋を掴む(鳥の目)
3. Structure:大筋の幹に、枝葉がどのようにリンクするか本の構造を掴む
4. Main Agenda / Problem:本の主題(メインとなる課題/問題)を掴む
(1~4が、レベルⅡの「点検読書」を指し、レベルⅢの中に内包されます)

◈5~8: 中身(コンテンツ)を掴むための4ステップ
5. Key Word:本のキーワードを探す(鍵括弧がついていたりします)
6. Key Sentence:キーワードから広がり、鍵となる文章を探す
7. Key Logic:キーセンテンスから広がり、鍵となる論理構造を掴む
8. Main Solution:上記から導かれる、主題に対する解決/提案は何か

◈9+10~15: 本に対する判断(ジャッジ)/必要な場合は反論
9. Judgement:上記で掴んだ内容について、賛成/反対/保留を判断する
⇨内容について十分に納得できれば、9ステップ目で終わりです!

 ここからは、内容について反論する場合や、さらにメッシュを細かくして抜けや誤りがないか内省するためのステップとして使います。

10. Logical Objection:反対の立場をとるなら論理的に
11. Evidence:反対の立場をとる証拠は何か
12. Critical Thinking - 知識不足:本に知識不足の点はないか
13. Critical Thinking - 知識誤認:本に認識が間違っている点はないか
14. Critical Thinking - 非論理的:論理が成立していない点はないか
15. Critical Thinking - 分析不足:分析が十分納得できるほど行われているか


➢レベルⅣ「シントピカル読書」の 4 steps
 レベルⅢ「分析読書」で1冊の読み方を掴めたら、次は、似たテーマを複数冊読むためのレベルⅣ「シントピカル読書」です。
 
 シントピカルという単語が聞き慣れないと思いますが、これは著者の造語なので由来等は省きます。分かりやすく今風に変えてしまうと、「ネットワーキング読書」とか「*シナプシカル読書」と呼ぶのがいい気がします。
(*脳のネットワークを広げる、神経間のつなぎシナプス由来の私の造語)
 
 つまり、1つのテーマに対して、どんどん世界(ネットワーク)を広げていくイメージです。余談ですが、この時、実際にシナプスは増殖しているのではないかと想像しています。
 さて、シントピカル読書は以下の4ステップになります。


Collect ⇨ Select ⇨ Cross-Link ⇨ Thesis


1. Collect
 ⇨自分のぼんやりと興味あるテーマについて自由に”複数冊集める”
2. Select
 ⇨集めた文献を1冊ずつ「分析読書」をするのではなく、まずリストにして、1冊ずつ「点検読書」のみを実施して、読む価値があるかジャッジして「分析読書」するに値する本を”ふるい”にかける。厳選です。
3. Cross-Link
 ⇨ふるいにかけた後は、複数冊を読み進めていくことになりますが、共通するテーマで文献を集めても、著者間では同じ内容を違う言葉で表現していることがよくあります。これらの言葉や文意を翻訳するように”橋渡し”しながら読み進めます。
4. Thesis
 ⇨共通するテーマから、”命題”を自分で設定していく。ここで、1のぼんやりとしたテーマがくっきりとしてきたり、違う方向に進むことになるかもしれません。


4. Ending

 かなり圧縮したつもりですが、それでも相当長くなってしまいました。ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。

 今一度要約すると、自分の中に何らかの知りたいテーマがあるとした時、本をサッと見て(点検読書)読むか読まないかを決めて、読んだ場合は本を構造的に理解して(分析読書)、どんどんそのネットワークを広げていく(シントピカル読書)ためのヒントが書かれた本と言えます。

 この本を読むと、間違いなく、本というか、文章に対する目利きが鋭くなります。良い本がわかるようになれば、良い論理構造がわかるようにもなります。私はこれを数学の因数分解から転用して、「国語的因数分解」と名付けています。国語的因数分解ができるようになれば、良い文章が書けるようになる効果が生まれると信じています。

 私自身、大好きな本の1つで何度も読み返しています。今回は触れませんでしたが、教養書だけでなく、小説の読み方も記載されています。この記事が本書を手に取るきっかけになれば幸いです。ではまた。

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