「食」から生まれる印象的な時間と出会えるアンソロジー(『あなたとなら食べてもいい』*アンソロジー)
こんにちは、あみのです(^^)
今回の本は、新潮文庫nexのアンソロジー『あなたとなら食べてもいい』です。
このつぶやきで触れてた本が実はこれです。
私としては初めて読む作家さんの作品も多かったので、ひとつひとつの物語がより新鮮に感じられました。
「食」をテーマに様々な人間関係が描かれるアンソロジー。一見何気ない食事の風景でも、実は日常を変えるようなヒントが隠れていたり…?気になる料理と共に、登場人物たちの日常に触れてみませんか?
作品概要
感想
まず「食」がテーマの作品となると、作品に出てくる料理がメインになるイメージがありますが、今作は「食」を軸としたやりとりを描いた物語が多く、ただ単に「おいしい」物語ではなかったところが印象的でした。
恋愛色が強い内容、ミステリーっぽい話など収録作のジャンルも幅広く、読んでいて飽きにくかったです。
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私は収録作の中でも神田茜さんの『サクラ』が1番好きでした。
仕事のためにダイエットに励んでいるものの、イズミにとって今の仕事は本当に自分に向いているのか不安に感じていたところもありました。だけど整体師の藤木先生に愚痴などを話したことによって、イズミは自分らしさを取り戻していきました。
我慢することも必要だとは思うけど、我慢をし過ぎてしまうと逆にストレスになってしまうこともある。私もそのような経験があるので、イズミの悩みには非常に共感しました。先生が言っていたように、食べたい時は食べる、食べない時は食べないのが日々の食事において1番大切なことなのかもしれませんね。
深沢潮さんの作品(『アドバンテージ フォー』)も現実だったら嫌だけど、物語として読み応えのある作品でした。女子会での会話を描いた作品で、美味しそうな料理を囲みながら自慢をあれこれする様子に、私ならこの場にいたくないなーと思ってしまいました笑。
一見楽しそうに見える女性同士の会話も、中をのぞいてみると我が子の自慢だったり、日々の溜まった愚痴だったりと話している人しか得しない内容の方が多かったりして?女性ならではの人付き合いの難しさを感じた作品でした。
また町田そのこさんの作品(『フレッシュガム』)では、小さい頃によく食べていたガムの味についての思い出が描かれていました。
大人になって食べるとそんなに美味しくない…なのに、昔好きで食べていたものはどんなにチープなものだとしても美味しく感じるって感覚、凄くよくわかりました。短めの作品かつ、既刊のスピンオフでありながらも一気に心をつかまれた作品でした。
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特定の料理や過去に行ったお店を見るだけで蘇る思い出が私にはあります。例えばオムライスを見ると、気になっていた人と初めて話した時のことを思い出します。
他にも前に友達や家族と行ったお店の前を通れば、「ここで前こんなものを食べたな」「友達とこんな話で盛り上がったな」と思い出すこともよくあります。今作には食にまつわる「そんな瞬間」を切り取ったような物語が多かった印象を受けました。
人それぞれに「印象的な味」があることを感じられる興味深いテーマのアンソロジーでした!