最推し作家さんの新作万歳‥‥‥(阿部暁子:『金環日蝕』)
こんにちは、あみのです(^^)
今回の本は、阿部暁子さんの『金環日蝕』という作品です。私が1番推している作家さんの最新作です!初めての単行本!!
感想の前に、まず阿部暁子さんへの愛を語らせてください。
私が阿部さんの作品と出会ったのは、高校生の時に読んだ『鎌倉香房メモリーズ』の1巻でした。
謎解きと少女漫画のような恋愛が融合したストーリーに魅了され、更には作品に登場する雪弥さんというキャラが当時好きだった人と似ていて親近感を持ったのもあり、読了して作品の続編を強く願いました。数ヶ月後に2巻が発売された時は飛び上がるほど嬉しかったです。
キャラをより深く知れた2巻、文化祭のエピソードに勇気をもらった3巻、雪弥さんの過去に驚愕した4巻、そして物語の締めくくりとなる最終巻。
『鎌倉香房メモリーズ』はどの巻も数えきれないほど読んだし、それぞれのエピソードにも思い出があります。なのでシリーズが終わった際には、香乃(主人公)や雪弥さんの新たな物語が読めなくなってしまうのがショックでした。
だけどその後に発売された作品たちも傑作ばかりで、新しい作品に出会うたびに阿部さんが書く物語がもっと好きになりました。ユーモラスなキャラクターと読者の想像を超える展開は、阿部さんの作品の大きな特徴だと思います。
さて『金環日蝕』ですが、今作でも魅力的なキャラクターが活躍しますし、後半には意外な展開も待ち受け、最初から最後まで非常に阿部さんらしい内容でした。阿部さんの作品は読んだことないよ!そもそも初めて知った作家さんだよ!という人に強く推せる最強の1冊です。
あらすじ
感想
冒頭で描かれたひったくり事件の真相とは。主人公・春風が事件をきっかけに知り合った錬くんには何が隠されているのか。
描かれる複数の謎と、序盤のユーモラスさ(大学内でひったくり事件の犯人を調査するシーンがツボです)からは想像つきにくい急展開に目が離せないミステリーでした。
今作は、春風と錬くんがひったくり事件の真相に迫るパートと、理緒という少女が謎の男に導かれて不気味な「仕事」に踏み込むパートで描かれていました。春風たちの話と理緒の話は一見つながりがなさそうに見えて、少しずつひとつの物語へとなっていきます。
***
私が今作を読んで強く印象に残ったのが、作中で描かれていた複数の「悪」です。過酷な環境で育ってきた錬くんをはじめ、事件のカギともなっていた詐欺に関わった人々がしたことの中には許しがたい現実も多くありました。
いじめっ子に復讐をしてくれた錬くんに感謝をする陽と翠をはじめ、誰かの「悪」に救われた人たちの姿には複雑な気持ちになるところもありました。だけど錬くんたちが許しがたい行動を選んだ背景には、家族などの守りたい大切なものがあったからなのかなと私は思いました。
今作は壮大なミステリーであり、「弱さ」に悩む人々を救う「ダークヒーロー」たちの物語でもありました。
***
後半は一気に雰囲気が変わるし、人々の心の隙間を狙う詐欺の実態にも戦慄した一方、登場するキャラクターひとりひとりが不思議と「嫌いになれない」作品でもありました。キャラクターに愛着を持ちやすいからこそ、シリアスなシーンがよりエグく感じるのかもしれません。
特に錬くん。『鎌倉香房メモリーズ』の雪弥さんが高校生の頃はこんな子だったんだろうなーと思わせてくれるキャラで、序盤ですぐ好きになりました。理解しがたい考えを持っているところもありましたが、賢くて何よりも家族思いな彼の優しい一面には心を掴まれましたね!
春風や錬くんのお話をこの1冊で終わらせてしまうのは非常にもったいないと思ったので、個人的には彼女たちのその後がいつか読めたら嬉しいな…と期待です。
***
久々の阿部さんの長編作品でしたが、「意外性」と「面白さ」がより磨かれていた期待以上の物語でした。数年待っていた甲斐がありました。作品によって見せる顔がまったく異なる作家さんなので、次はどんな雰囲気の物語を私たちに見せてくれるのか、引き続き作品を追いかけていきたいですね!