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心が求める音楽とArlo Parks


ファッションにも音楽にもトレンドがある

そのトレンドは世の中の流れと深く結びつき、時代で求められるものが変わる


早すぎても遅すぎてもダメ

今欲しいものが売れる



この“今欲しい”より一歩先ゆく人々がいわゆるアーティストやクリエイターと呼ばれる感覚の優れた人達

特にファッション界でハイブランドのデザイナーを務めるような人々は半分未来を生きてる

我々一般人からしたらなかなか理解し難いこともあるが、それは数年後に理解出来たり、今後新しい常識になっていたりするので、やはり時代を読むことに長けている人々なのだろう


しかし、時代のながれを読むことや今売れる物を感覚的につかむ人だけがアーティストかというと、そうではないと思う

モノづくりのソースになるものが日々の生活であったり、現代社会から感じとるものなので、自然と出来上がるモノが時代と結びついていく


狙ってるわけではないけど必要とされる

それは時に狙って作るモノよりも人の心を掴む


たとえば、今までだったらサブカルと呼ばれ、一部の音楽ファンが聴いていたような音楽がここ数年トレンドになっている


ビリーアイリッシュがグラミーを取ったり

米津くんが紅白に出演したり

これは物珍しくて売れているだけではなく

音楽ビジネスを読み解いた結果、戦略的に産み出されたわけでもない

意味を持って時代が産み落としたアーティストあり、だからこそ人々に必要とされてるのだ


※本題から脱線してしまいました、、



では今必要とされる音楽とは?


昨今、音楽に癒しを求める流れがあるとよく聞く

これは現代社会において誰しも心にストレスを抱える時代であるということ

それに加え、コロナウイルスによる目に見えないストレスから精神的な痛みを受けやすい状態にあるということ

なんとも分かりやすいほど現代の世相をうつしたムーブメントだ



よく言われることとして、ファッションは世の中に暗い出来事が多いと明るい色の服が流行り、世の中が好景気だと落ち着いた色の服が流行る

つまり、常に時代を補完する役割を担っている

現世に足りない物をファッションで満たしているのだ




では音楽はどうだろう

足りない物を満たすこともあれば

今起きてる現象に対して更に追い風のような役割をす果たすこともある


戦争が起きた時、反戦歌や平和を願う音楽を聴くことが補完的であれば

好景気な時代にキラキラのダンスミュージックが流行るのは追い風現象

つまり、何がどう人の心を掴むか、様々な可能性があり得る

なかには商業的に仕組まれた流行の音楽もあるだろうが、純粋に時代を感じとったアーティストは様々な表現方法で支持される可能性を持つ

暗い時代でも明るい音楽が流行ることもあれば

暗い時代に暗い音楽でも人の心を掴む要素があればそれは必要とされる



今、人々が音楽に求める癒しとは、要素としてメンタルクリニックのような役割に近い


風邪を引いたから医者にいく

そんな感じ


それくらい今世の中は心を患っている

これは平和ボケした多くの日本人にとってはまるで映画の話のようだが、ヨーロッパが行っているようなロックダウンは多くの人心に病をもたらしている

実際にここ日本でも失業や学級閉鎖を原因と精神疾患が報告され、メンタルクリニックの利用人数、DVの相談件数が増加傾向にあるとひろく報道されている


ロンドンではそのロックダウン期間中に聴かれることが急増したアーティストがいる


Arlo Parks

ロンドン出身のシンガーソングライター

ナイジェリア、カナダ、フランスをルーツに持つ多国籍なバックグラウンドがなんともロンドンらしく

BBC SOUND OF 2020にも選出された2000年生まれの20歳、まさに新世代を担うアーティストだ

ジャンルでいうとネオソウル

曲の特徴としても儚い印象であり、その奥に優しさを感じさせるようなArloの歌声はたしかに疲れた心に響く

今求められる癒しを与える音楽と言える


しかし、Arloが癒しである理由は表面的な音の作り方だけではない

彼女の最大の特徴は歌詞

『hope』というシンプルなタイトル、そして歌詞のなかで繰り返される『You're not alone like you think you are』という言葉

『ひとりじゃないよ』と語りかけるような彼女の歌声は、応援という押し付けとは違う、もっとありのままを肯定してくれるような言葉に感じられる


無理しなくていいんだよ

ひとりじゃないから

誰だって傷を持って生きてるもんだよ


『black dog』とは鬱病のスラング

Let's go to the corner store and buy some fruit
I would do anything to get you out your room
Just take your medicine and eat some food


『街角で果物でも買おうよ』

『君が部屋から出てくるのを待ってるから』

『君はクスリをのんで食べてるだけだから』


サビの歌詞から、この曲もまた鬱からの回復を願いつつ、押し付けるようなことはせず見守るような優しさが感じられる


心の病を否定せず寄り添う

そして押し付けるようなことはせず

見守るような距離から幸せを祈る


人が心に病を抱いたとき、放っておいてほしいような、心配してほしいような、そんな矛盾した気持ちを肯定してくれる

彼女の歌詞こそがまさにメンタルクリニックなのだ

だから時代に求められる


彼女自身バイセクシャルであることを公言し、ルーツもセクシャリティーも少なからずマイノリティと呼ばれるサイドにおかれていると思う

Arloがそういったことを悩み、人生に苦しんだ経験があったかは不明だが、やはりどん底を経験した人間は強い

そして強い人間の言葉はあたたかい

きっと彼女の歌を他の誰かが歌っても同じようにはならない

Arloが経験した人生、その厚みがあるからこそ歌えるものがあり、言葉のひとつひとつが説得力を持つ

今はとても生きづらい世の中かもしれない

それでも苦しんでいいんだ

落ちるときは落ちていいんだ

その代わりどん底までいったらちゃんと帰ってこなきゃ

その時はArloの歌声が何かしら手を差しのべてくれるかもしれない


さぁ、街角に果物でも買いに行こう

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