平林周

暇があれば渡米し、アメリカ小売業を研究&グローバル・デジタル・ビジョナリーとして活動中…

平林周

暇があれば渡米し、アメリカ小売業を研究&グローバル・デジタル・ビジョナリーとして活動中。 デジタルマーケティングの分野で幅広い経験を持つ。ストアDXコンサルとして、小売業の変革を推進することに情熱を注いでいる。Segment of One & Only株式会社(SOO)所属。

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【DX#3】日本企業のDXを阻害する、年功序列という呪いの話

日本企業の現状とDXの必要性  日本の企業文化は、長きにわたり上下関係や年功序列を重視する「タテ型社会」の影響を色濃く受けてきました。この垂直的な構造は、意思決定の遅れや新しい取り組みへの抵抗など、企業活動における種々の非効率を生み出す一因ともなってきました。一方で、ビジネス環境をとりまくグローバル化の波は、日本企業に対しても大きな影響を及ぼしています。  また、デジタル化の進展に伴い、ビジネスモデルの変革やイノベーションの加速が求められる時代を迎えています。こうした状況下

    • 【DX#42】DXに固執する愚かな日本小売業 顧客志向の進化を見据えるべき理由

       DXは、今や日本の小売業界で重要な課題として掲げられています。しかし、アメリカの小売業に目を向けてみると、DXという言葉自体を意識している企業は少なく、「DXを推進する」というよりも、自然な進化としてテクノロジーを取り入れているのが現状です。アメリカの小売業における「DX」とは、顧客中心のイノベーションの一環として行われており、顧客体験の向上や業務効率の改善を第一に考え、デジタル技術の導入が進んでいます。  例えば、WalmartのBOPISや、Amazonのレジレスシス

      • 【DX#41】アメリカ小売業におけるリテールテック視察はマインドを重視せよ

         筆者は長年アメリカ現地視察のツアーを行っておりますが、アメリカの小売業におけるDXやリテールテックの進化は、私たち日本小売業にとっても学ぶべき多くの示唆を含んでいます。しかし、こうした観察や視察をする際に「成功しているかどうか?」という視点だけにとらわれてしまうのは、往々にしてもったいないことです。むしろ、その過程や企業がリテールテックをどのように捉え、取り組んでいるのか、そこに宿る「マインド」に注目することこそが、現地視察から最大限の学びを得るための鍵となります。 ①な

        • 【DX#40】「DXとは木を育てるようなもの」組織変革を成功に導くための視点

           筆者は、DXとは木を育てるようなものであると考えています。この比喩は、デジタル変革の本質をよく表していると感じるからです。DXは単に新しい技術を導入するだけではなく、企業文化や業務の仕組みを根本から見直し、長期的な視点で成長させる取り組みです。この視点をもとに、DXのプロセスを木の成長に例えながら、どのように組織に変革を浸透させ、持続可能な成果を得るかについて考えていきます。 ①土壌を整える:ビジョンと文化の構築  木が健やかに育つためには、栄養豊かな土壌が必要です。同

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          【DX#39】デジタル変革の象徴 自律型ロボット「Tally」

           2024年10月に渡米した際、ロサンゼルスのBristol Farmsで、同社が採用しているSimbe Robotics社の自律型ロボット「Tally」を目にしました。店内で静かに巡回するTallyは、まさにデジタル変革(DX)の象徴とも言える存在です。Bristol FarmsがTallyを導入した背景には、店舗内の在庫管理を効率化し、顧客満足度を向上させる狙いがあります。    このTallyは、店内を自動で巡回し、棚の在庫状況や商品の陳列状態をリアルタイムで監視す

          【DX#39】デジタル変革の象徴 自律型ロボット「Tally」

          【DX#38】データドリブンが創る未来「自動運転サービスWaymo One体験」

           10月頭に仕事でロサンゼルスに行きました。今回もアメリカ小売業の定点観測を行うためでもあるのですが、サンタモニカにいたこともあり、自動運転サービスの「Waymo One」を初めて体験しました。 Waymo Oneとは? Waymo Oneは、Waymo社が提供する自動運転タクシーサービスです。WaymoはGoogleの親会社であるAlphabetの子会社で、自動運転技術の開発をリードしています。Waymo Oneでは、専用の自動運転車が乗客を目的地まで安全に運ぶことができ

          【DX#38】データドリブンが創る未来「自動運転サービスWaymo One体験」

          【DX#37】データドリブン時代における「白いカラス」問題

          ある日、社長がこんなことを言いました。 「カラスは白いよね?」 普通に考えれば、何を言っているんだろうと驚くところですが、これが企業内での会話だと事情は少し違ってきます。さて、ここであなたならどう返答するでしょうか? まず、従来型の企業、いわゆる後進企業ではこう返すかもしれません。 「はい、白でございます」 なぜか? 社長が言ったことだからです。 リーダーの発言は絶対だという価値観に基づいているため、たとえ間違っていようとも、それを正そうとはせず、受け入れるのです。

          【DX#37】データドリブン時代における「白いカラス」問題

          【DX#36】ID-POSデータ分析の限界:データ分析とは言えない理由とは?

           今回のタイトルにある「ID-POS分析はデータ分析とは言えない」というテーマは一見すると驚くかもしれませんが、実際には深く考えると妥当な議論です。ID-POSデータは、販売情報や顧客の購買履歴を分析するために利用されるデータの一種で、特に小売業界ではマーケティングや在庫管理の最適化に役立っています。しかし、ID-POSデータの分析が「データ分析」そのものとは言い切れない理由は、データの収集、加工、分析の段階での深度や広がりにあります。  まず、ID-POSデータは非常に限

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          【DX#35】単一データ分析の日本小売業 vs 複合データ活用のアメリカ小売業

           現代のビジネスにおいて、データ分析は意思決定の中核を担う要素となっています。しかし、そのアプローチには国や企業文化によって大きな違いが見られます。特に、日本小売業とアメリカ小売業の間では、データ分析の手法に顕著な対照が存在します。日本小売業が1つのデータソースに依存する傾向がある一方で、アメリカ小売業は複合したデータソースを活用することで、より包括的な分析を行っています。これが、両国の企業の競争力や市場適応能力にどのような影響を与えているのかを考察します。 日本小売業の「

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          【DX#34】今こそ、日本のドラッグストア業界はデジタルの力を最大限に活用する時

           日本のドラッグストア業界が直面している大きな問題の一つは、Amazonファーマシーの日本展開に対する反発です。多くのドラッグストアがこの新たな競争相手に対してやっかむ姿勢を見せていますが、その根本的な原因は業界自身のデジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れにあります。  そもそもAmazonファーマシーが日本市場に進出した背景には、日本のドラッグストア業界がDXを効果的に進められなかったことが大きく影響しています。多くの店舗が伝統的な業務手法に固執し、デジタル技術を

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          【DX#33】ID-POSデータ活用を知らない小売業

           日本の小売業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を成功させる上で直面している大きな問題の一つに、ID-POSデータの誤った使い方があります。多くの企業がこのデータを活用しているにもかかわらず、その活用方法が誤っているために、重要な顧客インサイトが欠落してしまうケースが多々見受けられます。  ID-POSデータは、顧客の購買履歴や売上動向を詳細に把握するのに有用です。しかし、このデータだけに依存することは、顧客の本当のニーズや行動パターンを見誤るリスクを伴います。結果

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          【DX#32】コマースメディアを知らない企業にリテールメディアの成功はあり得ない

           リテール業界における広告活動が進化する中で、リテールメディアとコマースメディアの違いはますます重要となっています。リテールメディアは小売業者が自社のプラットフォームを利用して広告収益を上げる手段として注目されていますが、この考え方だけでは成功は限られたものとなります。本当に成功を収めるためには、リテールメディアの枠を超えたコマースメディアの視点が不可欠です。 リテールメディアの限界  リテールメディアは、小売業者の持つ顧客データを活用して、店内やオンラインストア内で広告

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          【DX#31】日本小売業の誤解が続く無人店舗技術

           デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展が遅れている日本の小売業界には、多くの課題があります。特に、Amazon Goのような無人店舗技術を未だに誤解している点も問題の一因になっているといえるでしょう。 誤解される無人店舗技術  日本の小売業者は、Amazon Goの無人店舗技術を単なる省人化の手段と捉えがちです。しかし、これは大きな誤解です。Amazon Goの技術は、レジに並ぶことなくスムーズに買い物ができるキャッシュレスなショッピング体験を提供するものであり

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          【DX#30】NRF APAC 2024「小売業のDX最前線を体感して」

           先日、シンガポールで開催されたNRF(全米小売業協会)のイベント、NRF APAC 2024に参加する機会を得ました。このイベントは、小売業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する最新のトレンドや技術を紹介する場として知られています。参加して特に印象的だったのは、来場者の熱意と情熱でした。 日本のサラリーマンとは一線を画す熱量  会場内を歩き回ると、参加者たちの目の輝きと積極的な姿勢に圧倒されました。質問や議論が飛び交い、新しいアイデアや技術に対する好奇心に

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          【DX#29】データ活用の壁「日米小売業の明暗を分ける決定的要因」

           近年、小売業界においてデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が叫ばれていますが、日本の小売業界ではその実現に苦戦している現状があります。一方で、アメリカの小売業界ではデータ活用が進み、大きな成果を上げています。この差はどこから生まれているのでしょうか。私の経験上、日本の小売業界におけるデータ活用の遅れには、以下のような要因があります。 データ活用における日米の決定的な違い ①文化的背景  アメリカでは「データは資産」という考え方が浸透しています。一方、日本では

          【DX#29】データ活用の壁「日米小売業の明暗を分ける決定的要因」

          【DX#28】AIを活用する人類とAIを活用しない人類の情報格差

           近年、日本の小売業界においてAIに対する否定的な視点が散見されます。これは、AIと人間を対立する存在として捉える誤った認識からくるものです。しかし、実際には「AI vs 人間」という構図は大きな間違いであり、真の競争は「AIを使わない人間 vs AIを使う人間」の間にあります。  過去を振り返ってみると、1990年代にも「人 vs インターネット」という議論が盛んに行われていました。さらに、「人 vs 検索エンジン」という構図も存在しましたが、結局のところインターネットや

          【DX#28】AIを活用する人類とAIを活用しない人類の情報格差