【DX#33】ID-POSデータ活用を知らない小売業
日本の小売業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を成功させる上で直面している大きな問題の一つに、ID-POSデータの誤った使い方があります。多くの企業がこのデータを活用しているにもかかわらず、その活用方法が誤っているために、重要な顧客インサイトが欠落してしまうケースが多々見受けられます。
ID-POSデータは、顧客の購買履歴や売上動向を詳細に把握するのに有用です。しかし、このデータだけに依存することは、顧客の本当のニーズや行動パターンを見誤るリスクを伴います。結果として、誤った顧客ニーズを前提にしたマーケティング戦略を立ててしまい、効果的な施策が打てない状況が生じてしまうのです。筆者の経験上、POSと同等の扱いをしている日本小売業が多いのが事実です。
真の顧客インサイトを得るためには、ID-POSデータに加えて、さまざまなデータを統合して分析することが不可欠です。具体的には、顧客の行動データ、ソーシャルメディアデータ、プロモーションデータなどが挙げられます。顧客が店舗内でどのように動き、どの商品に関心を示しているのか、SNS上での評価やコメント、さらにはどのプロモーションが効果を上げているのかを総合的に分析することが求められます。
例えば、アメリカのWalmartでは、ID-POSデータ以外に、棚割りデータ、キャンペーンやプロモーションデータ、顧客行動データ、在庫データ、ロイヤルティデータ、ソーシャルメディアデータ、気象データを統合し、正しい顧客インサイトを得るための分析基盤を持っています。
これらのデータを組み合わせて分析することで、より包括的で正確な顧客インサイトが得られます。顧客の購買行動だけでなく、その背後にある心理や嗜好を理解することで、より効果的なマーケティング施策やプロモーションの展開が可能になります。日本の小売業がDXを成功させ、競争力を高めるためには、ID-POSデータの活用方法を見直し、他のデータと統合した包括的な顧客分析を行うことが重要です。
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