【DX#37】データドリブン時代における「白いカラス」問題
ある日、社長がこんなことを言いました。
「カラスは白いよね?」
普通に考えれば、何を言っているんだろうと驚くところですが、これが企業内での会話だと事情は少し違ってきます。さて、ここであなたならどう返答するでしょうか?
まず、従来型の企業、いわゆる後進企業ではこう返すかもしれません。
「はい、白でございます」
なぜか? 社長が言ったことだからです。
リーダーの発言は絶対だという価値観に基づいているため、たとえ間違っていようとも、それを正そうとはせず、受け入れるのです。
指示に従うことが「忠誠心」の証とされる環境では、異論を唱えることは許されません。結果として、組織全体が変化や成長に鈍感になり、イノベーションが生まれにくい体質に陥ります。
一方、データドリブン文化が醸成している企業では、同じ質問に対してまったく異なるアプローチをとります。
例えば、「社長、アルビノのカラスの確率は0.1%ですが、基本的にカラスは黒です。視覚的な問題があるかもしれませんので、眼科か脳外科の診断をお勧めします」といった具合に、データを基に論理的に返答します。このタイプの企業では、たとえリーダーの意見であっても、データや事実に反している場合、正面から異論を唱えることが奨励されます。社員は単に従うのではなく、状況を深く理解し、合理的に判断する力を持っています。
「データドリブン」の本質
データドリブンの企業文化では、リーダーの発言を盲信するのではなく、データに基づいた意思決定が重視されます。ここで重要なのは、ただの反論ではなく、データやファクトをもとにした冷静な指摘です。社長に対して「それは違います」と伝える際も、根拠を示し、より正確な情報を提供することが求められます。
つまり、「カラスは白い」と言われたときに、それが事実と異なるならば、どのような方法で異論を提示するかが、その企業の成長を左右するのです。正確なデータをもとに、恐れることなく発言できる環境が整っている企業こそ、真の意味でデータドリブンな企業といえるでしょう。
進化する企業文化
従来の「はい、白でございます」と従う文化は、短期的にはリーダーの機嫌を損ねずに済むかもしれませんが、長期的には企業の競争力を低下させます。一方で、データドリブンな企業では、データを尊重し、事実に基づくディスカッションを奨励することで、より正確な判断と持続的な成長が期待できます。
カラスが白か黒かの話は、表面的には単純に見えるかもしれませんが、企業文化の深層を浮き彫りにする象徴的な一例なのです。
果たして、あなたの会社はどちらの文化を選びますか?