【DX#31】日本小売業の誤解が続く無人店舗技術
デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展が遅れている日本の小売業界には、多くの課題があります。特に、Amazon Goのような無人店舗技術を未だに誤解している点も問題の一因になっているといえるでしょう。
誤解される無人店舗技術
日本の小売業者は、Amazon Goの無人店舗技術を単なる省人化の手段と捉えがちです。しかし、これは大きな誤解です。Amazon Goの技術は、レジに並ぶことなくスムーズに買い物ができるキャッシュレスなショッピング体験を提供するものであり、顧客満足度を高めることを目的としています。省人化は結果の一部に過ぎず、本質は顧客体験の向上にあります。毎年アメリカ小売業の定点観測を実施しておりますが、省人化の様子はなく、めちゃくちゃスタッフがおります。
Amazonの利益率に関する誤解
また、Amazonが数%の利益率の通常の小売りビジネスモデルで収益を上げることを目指しているという考えも誤解です。Amazonのビジネスモデルは、短期的な利益率よりも長期的な顧客価値の最大化を重視しています。彼らは、データ収集と分析を通じて顧客に最適なサービスを提供し、顧客のライフタイムバリュー(LTV)を高める戦略を取っています。
Amazon Goの本来の目的
①データ収集と分析
無人店舗技術を活用して、顧客の購買行動や店舗内の動線を詳細に把握し、商品配置やマーケティング戦略を最適化します。
②顧客体験の向上とクロスチャネルのシナジー
キャッシュレスでスムーズな購買体験を提供し、オンラインとオフラインのデータを統合することで、一貫した顧客体験を実現します。
③新たな収入源としてのRaaSモデル
無人店舗技術を他の小売業者に提供するRetail as a Service(RaaS)モデルを通じて、新たな収益源を確保します。
Amazon Goの展開と現状
Amazon Goは、2018年に一般向けにオープンしてから6年が経過しました。この間、無人店舗技術の普及と顧客体験の向上を進めてきました。筆者が毎年実施しているアメリカ小売業の定点観測から、2024年7月時点でロサンゼルスにはAmazon Goが3店舗存在しています。
JWOのショールームとしての認識
筆者は、Amazon Goを単なる無人店舗としてではなく、Just Walk Out(JWO)技術のショールームと認識しています。これは、Amazonが自社の先進技術を実証し、他の小売業者やその他事業者に対してその有効性を示す場であるという考えに基づいています。
結論
日本の小売業がDXを成功させるためには、Amazon Goの本質を理解し、単なる省人化ではなく、顧客体験の向上とデータ活用に焦点を当てることが必要です。この理解が進むことで、日本の小売業界は真のDXを実現し、競争力を高めることができるでしょう。