草むらをかき分けてカエルたちと見る、瑞々しい世界。
こんにちは天音です。
今日の読書感想文は世界文化社の絵本、『あまがえるのかくれんぼ』(作・たてのひろし 絵・かわしまはるこ)です。
ラッタ、チモ、アルノーの三匹の小さなアマガエルたちが隠れんぼをして遊んでいると、突然ラッタの体の色が変化してしまいます。
ラッタの変化に戸惑っていると、チモとアルノーの体も変化して……。
という、カエルの「保護色」をテーマにした絵本。
カエルは大きくなるにつれて、体の色を変えられるようになるらしいです。
手足が生えたらすぐに変えられるようになるんじゃないんですね。
初めて知りました。
絵本の三匹はもうカエルの姿ですが、まだまだチビガエル。
ようやく体の色を変えられるようになり、自身の突然の成長と変化に戸惑ってしまうのです。
彼らの成長の喜びに、読んでいると一緒に微笑ましくなります。
三匹は今後、この保護色を最大限活用して生き延びていくのでしょう。
この絵本の最大の特徴は「リアルな絵」です。
初めて見たときちょっとびっくりしました。
しかし、ただ単にリアルにカエルや原っぱが描かれているんではありませんよ。
この絵本には、三匹の小さなカエルたちの戸惑いや悲しみ、恐怖、喜びなどの“感情”がめいっぱい生き生きと描かれているんです。
友達がかくれるのを待っているときのわくわく感。
怖いおじさん(カマキリ)に見つかったときの身の竦む思い。
自分がどうなってしまうのかわからない恐怖。
解決したあとの安心感と、成長への喜び。
リアルなカエルのちょっと人間みたいな、いややっぱりカエルらしい愛らしさがつまった作品でした。
背景の草むらもとてもリアルです。
もしかしたら、この辺は少し苦手な人がいるかもしれませんね。
それも考慮して見出し画像はカエルの写真ではなく、カエルのイラストを使わせてもらいました。
わたしも苦手な虫がいるので、ちょっとビクビクしながら読んだのは事実です。青虫が出てこなくてよかったです。
クモやバッタが苦手な人は難しいかもしれません。
しかし、そのリアルなタッチの草むらを小さなカエルたちの目線で冒険していくうちに、わたしは「ああ。昔は公園で虫取りしたな」と、幼少期のエピソードを思い出しました。
子供の頃。
虫取り網を構えつつ、虫かごを首から下げて空き地に遊びに行ったあの時代。活発な子だったんですよ。
あの時はまだわたしの大嫌いな虫も平気で鷲掴んでいたらしいのです。
今考えたら気絶ものですが……。
そんな、今よりもっと地面に近かった頃を思い出しました。
バッタやトンボを捕まえてたな。
花を摘んで、実をむしり取ってた。
水たまりを飛び越えて喜んでいた昔の話。
子供やチビカエルと一緒に「低い目線」で物語を読んでいたのですが、ふともう草むらでバッタは掴めないなと大人としての自分を強く実感したような気がしました。
最後には、完璧に保護色を使いこなした三匹が登場します。
流石の擬態で見つけにくかったです。感心してしまいました。
三匹は完全に成長の階段を登っていったのです。
生命の成長の階段を実感して喜べて、大人目線からはちょっぴり切なくなる(かもしれない)。
そんな色彩豊かな作品でした。