読書感想 『黒猫・アッシャー家の崩壊』
こんにちは、天音です。
今回の読書感想はエドガー・アラン・ポー著『黒猫・アッシャー家の崩壊』(新潮文庫)です。
「アッシャー家の崩壊」は講義の関係で読んだことがあったのですが、その他の短編は読んだことがなかったので手に取ってみました。
最近はあまり古典的名作は読んでいませんでした。
ポーは講義で丁寧に扱っていた人物だし、レポートでも書いた気がする。
ガイドが欲しかったので、先日資料を整理していて見つけた大学の講義プリントをこれ幸いと引っ張り出して横に置きつつ読み進めました。
収録されている短編は6篇。
「黒猫」「赤き死の仮面」「ライジーア」「落とし穴と振り子」「ウィリアム・ウィルソン」「アッシャー家の崩壊」です。
ポー自身が小説においては「単一の効果や印象」にこだわりを持って執筆していたらしいので、どの話も鮮烈な印象を残して読み終わりました。
掘り起こしてきた講義のプリントには結構書き込みがあって、なるほどと納得することが多々ありました。昔やったことも侮れないですね。走り書きで「ポー女性だいたい死ぬ」とあるのを見つけたとき、私は貴重な講義で何を得ようとしていたんだと落胆したのですが、概ね間違いではなかったことを読んでみて理解しました。
やはり実際読んでみることは大切です。
読んだ印象は上述したように「鮮烈」でした。
ゴシック・ロマンスであることから人智の及ばない、精神的な部分もあります。読み初めはほとんどどの話をなんだこれと思いながら読みました。もやもやしていて、なんのことかわからない。霧の中に迷い込んだまま進むような感覚。
しかしラストで読み手の疑問はさっと晴れるのです。
各話主人公は揺らぎ続けます。
正気と狂気。善と悪。生と死。
この境界を読者もゆらゆらと曖昧に振れ続ける。周囲の描写がやけに静謐で現実味を帯びているので、人智を超えた出来事が登場人物たちの妄想だと断じてしまうには難しく感じるのです。
ともに揺れながらわけもわからず進んでいくと、唐突に強烈なラストに突き当たる。鮮烈です。
ハッと目が覚めるような感覚はある種クセになります。
疑問や狂気がぱちんとはじけて、読者は本を抱いて現実に戻って来るのです。
どこで読んだか忘れてしまったのですが、「落とし穴と振り子」は狂気に陥らないと権力を告発できないという皮肉も描かれているとあった気がするので、時代背景などと照らし合わせて読んでみるのも面白そうですね。
私はホラー系が苦手なのですが、やはり名作。
最後まで読ませる圧倒的な文でした。
短編集Ⅱのミステリ編の方も読めたらいいなと考えています。