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【小説】カレイドスコープ

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ツグミは知らない男から殺されかけた事件をきっかけに、失踪して死んだはずの兄が、生前様々な事件に関わっていたことを知る。 その過去を辿っていく過程で、兄が或る男に関わった事から全て…
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記事一覧

【小説】カレイドスコープ 第15話 泰人

 前回  最初に目に入ったパンチングが施された正方形の板の集合体が、天井の細工だと分かる…

安蘭純史
2年前

【小説】カレイドスコープ 第14話 恭平

 前回    監禁された最初の3日間は生きた心地はしなかったが、神崎とその部下の行動パタ…

安蘭純史
2年前
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【小説】カレイドスコープ 第13話 泰人

 前回  早朝の波止場の風は思ったよりも寒かったので、早起きしてまだ働いていない脳を刺激…

安蘭純史
2年前
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【小説】カレイドスコープ 第12話 恭平

 前回  ずっと好転する気配が無かった自分を取り巻く環境が、少しずつ上向きになっているの…

安蘭純史
2年前
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【小説】カレイドスコープ 第11話 泰人

 前回   「まぁ今となったらどうでもいい事だけど、どうやって俺の居場所が分かったんだ?…

安蘭純史
2年前
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【小説】カレイドスコープ 第10話 恭平

 前回    銀行のATMに並ぶと、恭平の直前に並んでいる50代前半位の夫人が左手に大き目…

安蘭純史
2年前
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【小説】カレイドスコープ 第9話 泰人

 前回    動物園の猿山の付近に設置されている椅子に泰人は腰かけ、何も考えずに猿山にいる猿達を眺めていた。  自分の子供を愛情たっぷりに毛繕いしている母猿の横では、二匹のオス猿が一匹のメス猿を巡って威嚇し合っており、少し離れたところでは誰にも相手にされていない毛の抜け落ちた老猿が、何かに怯えながら身を縮こまらせている様子は、泰人が普段目にしている光景とは対して変わらず、なんだか自分の生きている世界を俯瞰で見ている気持になってきた。  泰人の右斜め前方向から、動物園には

【小説】カレイドスコープ 第8話 恭平

 前回    ドナー登録をした病院からメールが届いたのは、乗船準備の為に研修として派遣さ…

安蘭純史
2年前
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【小説】カレイドスコープ 第7話 泰人

 前回    神崎から呼び出された時に泰人は少し嫌な予感はしていたが、案の定その予感は見…

安蘭純史
2年前
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【小説】カレイドスコープ 第6話 恭平

 前回    検査台の上でうつ伏せになり、全身麻酔を掛けられる準備をされた瞬間、恭平は急…

安蘭純史
2年前
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【小説】カレイドスコープ 第5話 泰人

 前回     仕事中に知らない電話番号からの着信が2件ほど入っており、いつもであれば気…

安蘭純史
2年前
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【小説】カレイドスコープ 第4話 恭平

 前回    年季の入ったワゴン車に乗せられて着いた場所は、恭平にとって今まで無縁で足を…

安蘭純史
2年前
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【小説】カレイドスコープ 第3話 泰人

 前回    泰人が悪夢から覚めて飛び起きた時、一瞬現実と夢が混在している曖昧な意識に思…

安蘭純史
2年前
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【小説】カレイドスコープ 第2話 恭平

 前回    看板が無ければ廃屋と見間違えられる事が間違いないビルの3階に入居している事務所を出ながら恭平は、先ほど貰ったばかりの使い回されてくたびれた封筒を無造作に破って開けると、中には封筒に見合ったくらいに皺くちゃの一万円札が3枚ほど入っており、予想外の報酬額に気付いて一瞬足を止めた後、足取り軽く口笛を吹いてビルを後にした。  二日間拘束の仕事ではあったが、実働時間はそれぞれ3時間程度であったので、時給に換算すると五千円と割がよく、夜勤の仕事の合間に出来たのも恭平にと