マガジンのカバー画像

幽霊の鉛

194
運営しているクリエイター

2022年8月の記事一覧

映画を見直してみるのもいいかもしれない
自分に自由な時間と場所で死ぬ権利があるならちょっと高いアイスでも食べながらモノクロの映画に浸ってラストシーンに溺れながら首を吊って死にたい

愛とか恋とか好きとか嫌いとかありがとうとか愛してるとか心とか夢とか希望とか将来とか……それは入れちゃあいけないんだ、それは味がこすぎるんだ、ギトギトの味は邪魔でしかない

読めるものを書かないで欲しい
云と馬鹿でめちゃくちゃ言葉があって
それでいて少しわかっちまうような
そんな奴が欲しい
丁寧な共感性なんて捨ててしまえ
脳まで既製品では背も伸びない

堕胎と自分に殺害される!君たちが一等賞!表彰台に上がる世界!!

自分の存在価値はペットショップで買える1000円以下ですら勝てないというサンドバッグの敗れた文句

午前四時
星が降る
人は星なのだと 上っ面の液晶が自慢していた
誰かの言葉を借りた その面を踏んでやりたい

人へ己をいくら使っても還らず
その人の死に間際にも私は回想されず
無常の中の獄
性格で惑わし自ら失う期待
生き下手に死に上手

週末

週末

もう全部やめようか
甘ったるい苺の瓶詰めも
傷の舐め愛いの慰めも
生温さに使って萎れてしまうよ

もう全部やめようか
二人で選んだカーテンも
似せたばっかの鏡越しも
消費期限が目に見えてるだろ

もう全部やめようか
焦がしたフライパンも
褪せて見えない顔色も
拭い取れない染みばっかり

もう全部やめようか
疲れたんだ
疲れたんだ……

憶

死を身近に感じないから勝手なことが言えるのだと思う
幼少に小さなたまっころ一つの毛むくじゃらを亡くしたことがある
前夜までくるくると踊っていたのをよく覚えている
翌朝回し車のゴムを呑んで死んでいたのをよく覚えている
1000円の命が幸せそうに上擦って死んでいたのをよく覚えている

2匹目はよく生きた、3年生きて、安らかに逝った
気の張った白い毛並みが綺麗な女だった

人の死は拡大か偉いのか平等と吠

もっとみる
不妄

不妄

妄想じゃあないか
妄想じゃあないか
骨がギシギシと
お前がノロノロと
罵ってくるのも

妄想じゃあないか
妄想じゃあないか
君と死にたいのだって
まだ生きていたいことだって
殺してくれないのも

妄想じゃあないか
妄想じゃあないか
胃がグルグルと
階段がぼたぼたと
睨みつけるのも

妄想じゃあないか
妄想じゃあないか
ただ生きるのに疲れたことも
誰かがずっと見ていることも
生きていないことも

もっとみる
悲々

悲々

かなかなかなかなかな
僕の命をあの子が見ている
かなかなかなかなかな
背に這う羽織が僕の言う事なしに鳴る
かなかなかなかなかな
あの子は僕を軽蔑してる
かなかなかなかなかな
今晩だけだね
かなかなかなかなかな
寂しいのはあの子の云と昔の人が詠嘆したんだよ

かなかなかなかなかな
あの子は僕を無視してる
かなかなかなかなかな
不気味な僕は怖くないよ
かなかなかなかなかな
梅雨から寒さに運ばれるんだ

もっとみる
不良品

不良品

気取った壁紙にうっかりペンチングナイフで削ぎ落としてしまった
あ゛あ、あ?
私の喉仏には黒い蛹が暴れようとしている

可愛げのある鍵盤を塩酸で水浸しにしてしまった
め゛め、め?
私のモノクロの上で弾む指がぬるりと滑っていく

物応じない鏡に使い古した紙やすりを擦り付けた
ね゛ね、ね?
私の鬱憤じゃあちっとも満足できないらしい

金切り声にハンカチーフを被せてやった
ゑ゛ゑ、ゑ?
私の裾から逃げない

もっとみる
停止装置

停止装置

慎ましやかなシーツが機械に濾過された世界と一緒に待っている
手に鑢と金槌を持って

大きな掌が私を浸す
皺が私の重みに沿って沈む

泥濘から抜け出すのは不可能だ
溢れる思考にのたうち回って
草臥れ…………

鉛の雨

鉛の雨

微睡んで 午後八時
怠げに転がった灰色の空を窓越しに
脚のちぎれた私の背を晒して
秋の瀬に騙された気分で眠ってみる